ALアミロイドーシス

症状や臨床上の影響、診断における課題、治療について

ALアミロイドーシスは単クローン性免疫グロブリン血症の一種です

ALアミロイドーシスの症状は、組織内にアミロイド線維が沈着することで引き起こされます。これらの線維は、単クローン性のL鎖(軽鎖)から形成されます。世界的な発病率は年間100万人あたり約9人1で、有病率は100万人あたり58人2です。

多発性骨髄腫とは異なり、ALアミロイドーシスの罹患率と死亡率は臓器における遊離L鎖(FLC)由来のアミロイド線維の蓄積が関係しており、単クローン性形質細胞の増殖が直接的に関与するものではありません。このアミロイド線維の沈着は、心臓、腎臓、肝臓、神経系など、さまざまな臓器で起こる可能性があります3


最も頻繁に関与する臓器は腎臓であり、ALアミロイドーシス患者の70-80%で腎臓が病態に関係しています4。その次に多いのは心臓で、50-60%の患者において心エコー検査によって心臓の関与が確認されています4。それに次ぐのは肝臓(25%)、末梢神経系(20%)です4。ALアミロイドーシスにおける死亡の75%がアミロイド線維の沈着によって生じる心不全や不整脈によるものである5ことから、心臓の関与を明らかにすることは特に重要です。そのため、背景にある単クローン性免疫グロブリン血症の治療においては、心機能不全の支持治療が並行して進められることがあります。

ALアミロイドーシスの診断は、以下の2点の要因によって複雑になっています


原因となっている形質細胞クローンが少なく、単クローン性タンパク質をわずかしか産生していない

そのため、血清遊離L鎖アッセイ(FLC)などの方法と、他のさまざまな方法(血清タンパク電気泳動(SPEP)、血清免疫固定法(sIFE)、尿タンパク電気泳動法(UPEP)、尿免疫固定法(uIFE)、血清(FLC)を併用することが重要です。


ALアミロイドーシスの他にもアミロイドーシスの種類がある

L鎖以外のタンパク質もアミロイド線維を形成することがあり、少なくとも30種類以上のタンパク質がアミロイド線維を形成すると考えられているほか、そのうち17種類は病理的な障害と関連付けられています6。そのため、一人一人の患者においてどのタンパク質がアミロイド沈着を形成しているかを知ることが重要です。


こうした理由から、ALアミロイドーシスの有無を診断するためにはさまざまな臨床検査が行われます 7

  • まず、アミロイドに関連する臓器障害の臨床所見を確認することが必要です。 
  • 臓器内の沈着物がアミロイドタンパク質によるものであることの証明が必要です。通常、生検によって得られた沈着物についてコンゴーレッド染色を行い、性状を特定します。もし沈着物がアミロイド線維によるものであれば橙赤色に染まるとともに、偏光顕微鏡下で複屈折性を示す染色反応が観察されます。
  • ALアミロイドーシスであることを絞り込むために、生検により得られた沈着物を免疫組織染色や質量分析によって直接分析し、臓器内で見つかったアミロイドがL鎖(軽鎖)に関連していることを確認します。
  • 加えて、単クローン性形質細胞による疾患であることの確認も必要です。これは、血清や尿中の単クローン性タンパク質の有無、血清FLCにおけるκ/λ比の異常、骨髄中のクローン性形質細胞の同定などによって確かめられます。ただし、2-3%のALアミロイドーシス患者では、よく用いられる5つの手法(血清タンパク電気泳動法(SPEP)、血清免疫固定法(sIFE)、尿タンパク電気泳動法(UPEP)、尿免疫固定法(uIFE)、血清FLC検査)をすべて使用しても単クローン性タンパク質産生の証拠が得られない場合があります8

ALアミロイドーシスであることが特定された後、患者に対してはさまざまな治療方法が考慮されます。これには、アミロイド原性FLCの産生元であるがん細胞を標的とする薬物療法や、幹細胞移植などが含まれることがあります。



ALアミロイドーシスにおける治療の効果は、臓器の反応と血液学的な反応によって評価されます。血液学的な反応は、遊離L鎖の測定などを通じて評価されます。

ALアミロイドーシスでは、治療効果の評価において、腫瘍に関与しているFLCと関与していないFLCの差(dFLC)が使用されます。

血液学的な反応は臓器の反応よりも早期に現れるため、治療が効果的なのか、あるいは変更が必要なのかを臨床医に伝えることができるという点で重要です。

多発性骨髄腫患者の約10-15%は、ALアミロイドーシスを併発する危険性があります。そのため、多発性骨髄腫の患者の治療にあたる際にはこの危険性を認識し、アミロイド沈着に関連する臓器障害の徴候に注意を払い、必要に応じて支持療法を行うことが重要です。

血液学的な治療効果判定基準 9    
完全奏功(CR)                                       FLC比が正常、かつ血清および尿における免疫固定法(IFE)が陰性、かつ骨髄細胞中の形質細胞が5%未満  
最良部分奏功(VGPR) dFLCが40 mg/L未満に減少  
部分奏功(PR) dFLCが50%を超えて減少  
無効 PR基準に満たない場合  
進行 CRから M蛋白が検出可能または血清FLC比の異常(腫瘍に関与するFLCが2倍以上)
PRから 尿中のM蛋白が200 mg/24時間を超えて増加

遊離L鎖(フリーライトチェーン)検出について
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FREELITE製品を用いた単クローン性免疫グロブリン血症の診断補助
略語表
 
FLC

遊離L鎖(free light chain)

IFE

免疫固定法(immunofixation electrophoresis)

SPEP

血清タンパク電気泳動法(serum protein electrophoresis)

UPEP

尿タンパク電気泳動法(urine protein electrophoresis)

References
1. Desport, E., et al., AL Amyloidosis. Orphanet. J Rare. Dis, 2012. 7(1): p. 54
2. Duhamel, S., et al., Incidence and Prevalence of Light Chain Amyloidosis: A Population-Based Study. Blood, 2017. 130: p. 5577a
3. Merlini, G. and M.J. Stone, Dangerous small B-cell clones. Blood, 2006. 108(8): p. 2520-2530.
4. Cibeira, M.T., et al., Supportive Care in AL Amyloidosis. Acta Haematol, 2020. 143(4): p. 335-342.
5. Czyżewska, E. and O. Ciepiela, The Influence of Deterioration of Kidney Function on the Diagnostic Power of Laboratory Parameters Used in the Prognostic Classification of AL Amyloidosis. J Clin Med, 2021. 10(21).
6. Muchtar, E., et al., Systemic amyloidosis from A (AA) to T (ATTR): a review. J Intern Med, 2021. 289(3): p. 268-292.
7. Rajkumar, S.V., et al., International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma. Lancet Oncol., 2014. 15: p. e538-e548.
8. Katzmann, J.A., et al., Screening panels for detection of monoclonal gammopathies. Clin Chem, 2009. 55(8): p. 1517-1522.
9. Comenzo, R.L., et al., Consensus guidelines for the conduct and reporting of clinical trials in systemic light-chain amyloidosis. Leukemia, 2012. 26(11): p. 2317-25.
10. Bird, J.M., et al., Guidelines on the diagnosis and management of AL amyloidosis. Br J Haematol, 2004. 125(6): p. 681-700.
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