はじめに
アガロースゲル電気泳動の始めから終わりまで、じーっとゲルを見続けたことがある方はほとんどいないのではないでしょうか?もし見続けたとしても、ローディングバッファー中に含まれる青や黄色の色素が移動するだけなので、DNA断片のバンドが分離する様子が見られたらいいなと思い、動画の撮影に挑戦してみました!アガロースゲル電気泳動でDNAが分離する原理について、再確認するきっかけになれば幸いです。
結果と考察
まずは動画をご覧ください。
DNA Ladder が分離していく様子がよく分かるかと思います。私はDNA断片が分離していく様子を初めて見ましたが、それぞれのDNA断片が段々と識別できるようになり、こうやってサイズごとに分離されるのだなぁと、何度も繰り返して動画を再生してしまいました。
今回使用したInvitrogen™ E-Gel™ プレキャストアガロース電気泳動システムの利点としては、下記が挙げられます。
・電気泳動している最中でも、バックライトを点灯することでバンドを確認できます。
・カートリッジ式のプレキャストゲルを使用するので、毎回ゲルを作る手間がかかりません。
・泳動バッファーを使用しないので、染色試薬などが含まれる廃液処理が不要です。
・E-Gel EX Agarose Gels, 1%の場合は、デフォルトの泳動時間が10分と短いです。
次に、今回の実験方法と、使用した弊社製品をご紹介します。
材料と方法
材料:
Invitrogen™ E-Gel™ Power Snap Electrophoresis Device(製品番号:G8100)
Invitrogen™ E-Gel™ EX Agarose Gels, 1%(製品番号:G401001)
Invitrogen™ E-Gel™ 1 Kb Plus DNA Ladder(製品番号:10488090)
Invitrogen™ E-Gel™ 50 bp DNA Ladder(製品番号:10488099)
Invitrogen™ Nuclease-Free Water(製品番号:AM9930)
方法:
E-Gel EX Agarose Gels, 1% を使用し、E-Gel Power Snap Electrophoresis Deviceで10分間電気泳動しました。レーン1・2・6・8にはE-Gel 50 bp DNA Ladderを、レーン3・4・7・9にはE-Gel 1 Kb Plus DNA Ladderを、それぞれ125 ng/20 µL/ウェルで使用しました。上記以外のレーンにはNuclease-Free Waterを20 µL/ウェルで使用しました。
動画の撮影にはスマートフォンのタイムラプス機能を使用しました。約1秒間隔で11分間ほど撮影し、22秒の動画に仕立てました。つまり、アガロースゲル電気泳動でバンドが分離する様子をおよそ30倍速で再生できる動画となりました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
DNA断片が分離していく様子、お楽しみいただけたでしょうか。
今回は、泳動しながらDNAを可視化できる機能があるE-Gel Power Snap Electrophoresis Deviceを使用したので、このような動画を撮影することができました。一般的な実験室では泳動槽とDNA可視化装置が別々の場合が多いので、このような動画を撮影することはできないかと思われます。しかし、アガロースゲル電気泳動中にDNA断片がサイズごとに分離していくことにかわりはありません。ご自身で実験される際に、この動画のDNA断片分離を想像しながらアガロースゲル電気泳動していただくと、待ち時間が少し楽しくなるかもしれません。
当社ではRNA抽出やリアルタイムPCR、他にも細胞培養、ウェスタンブロッティングなど、実際に実験(実習)を行いつつ学べる各種ハンズオントレーニングを開催しています。その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!
今回の記事に関連する、過去のBlog:
アガロースゲル電気泳動を成功させるための鉄則5箇条
DNAサンプルさようなら!アガロースゲル電気泳動に必ず失敗する3つの方法
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。