コピー数解析を行う際に、「コピー数既知のサンプルが無い」とお困りのことありますよね。
コピー数が多岐にわたる場合、見当をつけるのも困難です。
そこで今回は、デジタルPCR(dPCR)を用いたコピー数検出ついて、ご紹介いたします。
▼こんな方におすすめです!
・デジタルPCRでコピー数測定を行いたい方
・リアルタイムPCR(qPCR)とデジタルPCRのコピー数検出の違いを知りたい方
アミラーゼ遺伝子とは
アミラーゼは、消化酵素の一つであり、デンプン(糖質)を分解して糖にする酵素です。
唾液中にも存在し、お米のデンプンを唾液中のアミラーゼが分解し、糖化することにより、甘味を感じます。
アミラーゼのコピー数には、高デンプン食と低デンプン食のグループで差があることが分かっています1)。
デンプン摂取の多い国のコピー数が多く、日本人は多いグループに含まれます。
個人差もあることから、今回の検証に使用しました。
1) Perry GH, Dominy NJ, Claw KG, Lee AS, Fiegler H, Redon R, Werner J, Villanea FA, Mountain JL, Misra R, et al.2007. Diet and the evolution of human amylase gene copy number variation. Nat. Genet. 39:1256–1260.
デジタルPCRによるコピー数測定
Applied Biosystems™ QuantStudio™ Absolute Q™ デジタルPCRシステムを使用して、HaeIIIにて制限酵素処理済み注の、コピー数不明の14検体にて、アミラーゼ遺伝子のコピー数を測定しました。
注:デジタルPCRでのCNVアッセイご使用時の注意点
・ターゲット配列が別の染色体上に存在する場合はそのまま定量が可能。
ただし、同一染色体上に複数存在する場合には、制限酵素処理が必要となる。
使用アッセイ
●Applied Biosystems™ TaqMan® Copy Number Assay
・Assay ID:Hs07226362_cn AMY1A (FAM™ dye)
●Applied Biosystems™ TaqMan® Copy Number Reference Assay, human,TERT(VIC™ dye)
使用マスターミックス
●Applied Biosystems™ QuantStudio™ Absolute Q™ DNA Digital PCR Master Mix (5X)
反応条件は、Absolute QデジタルPCRシステム標準Protocolにて実施しました。
以下に結果を示します。
リアルタイムPCRによるコピー数測定
コピー数が判明したため、同実験をApplied Biosystems™ QuantStudio™ 7 ProリアルタイムPCRシステムにて実施しました。
使用マスターミックス
●Applied Biosystems™ TaqPath™ ProAmp™ Master Mix
反応条件は、CNV標準Protocolにて実施しました
デジタルPCRと異なりリアルタイムPCRでは、キャリブレーターサンプルを使用しての補正が必要となるため、コピー数が既知の検体が必要となります。
増幅曲線および、デジタルPCRで中央値となったサンプル27 (7コピー)をキャリブレータ―として、Applied Biosystems™ CopyCaller™ Softwareにて解析した結果は、以下の通りでした。
まとめ
デジタルPCRとリアルタイムPCRの結果比較を以下に示します。
いくつかの検体で異なる数値を示しました。
これは、デジタルPCRが直接算出、リアルタイムPCRが相対値からの算出であること、および、リアルタイムPCRとデジタルPCRの分解能の差が影響したと考えられます。
デジタルPCRでは、絶対値での測定ができるため、基準となるサンプルのコピー数が不明であっても、全てのサンプルのコピー数を直接得ることが可能です。
対して、リアルタイムPCRでは、コピー数既知の検体をキャリブレーターサンプルとして使用し、相対値でのコピー数検出となっています。
また、コピー数が多くなるほど、1コピー間の差が小さくなるため※、分解能の点からも、コピー数測定はデジタルPCRでの検出が推奨されます。
※例として2コピーと3コピーでは1.5倍差・4コピーと5コピーでは1.25倍差
今回使用したAbsolute Q デジタルPCRシステムの詳細はこちらをご覧ください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。