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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】アガロースゲルを凍結保存してからDNAを電気泳動してみた

【やってみた】アガロースゲルを凍結保存してからDNAを電気泳動してみた

Written by LatB Staff | Published: 04.21.2023

アガロースゲルはDNAをサイズごとに分離する電気泳動の際などに一般的に使用されています。通常は、PCRなどをかけている待ち時間の間にアガロース粉末を溶かし、トレーに流し込んでゲルを作成し、サンプルの準備ができたらすぐに電気泳動に使用します。もしくは、ゲルが余った場合は、ラップに包んだり、プラスチックの食品保存容器中のバッファーに浸したりして冷蔵保存する場合もあるかと思います。

はじめに

今回は、アガロースゲルの保存温度について検討してみました。これまでゲルを冷凍保存したことはなかったのですが、凍らせてしまえば数年に渡って安定的に保存できるかもしれない!と思いついたので、実際に試してみました。

結果

1%アガロースゲルを2つ用意し、乾燥防止のためにラップで包みました。1つは4 ℃で、もう1つはマイナス20 ℃で1晩保存し、翌日にそれぞれ取り出した際の様子がこちらです(図1)。冷蔵した方は大きな見た目の変化はありませんでしたが、冷凍した方は表面にしわが寄っていました(図1上)。また、ゲルの厚さがやや薄くなっていました(図1下)。これは、凍結と解凍の過程でゲル中の水分が脱水されたからだと思われます。

保存後のゲルの様子4℃冷蔵保存(左)と-20℃冷凍保存(右)したアガロースゲル

図1 保存後のゲルの様子
4℃冷蔵保存(左)と-20℃冷凍保存(右)したアガロースゲル

ゲルを室温に戻した後、PCR産物(856 bp)とDNAサイズマーカー(Invitrogen™ 1 Kb Plus DNA Ladder)を泳動してみました。
凍結した方のゲルは多数の気泡が見られました(図2右)。凍結時にゲルの網目構造の中で氷の結晶ができてしまったため、解凍時に脱水されて空洞が残ったのだと考えられました。凍結後に乾燥させてゲルから水分が抜けてスポンジ状になった高野豆腐(凍み豆腐)をイメージすると、上記の現象を理解しやすいかもしれません。高野豆腐は冷凍すると「す」が入ってスカスカになる現象を利用した食材の1つです。

電気泳動後のゲルの様子4℃冷蔵保存(左)、-20℃冷凍保存(右)

図2 電気泳動後のゲルの様子
4℃冷蔵保存(左)、-20℃冷凍保存(右)

泳動結果を見てみると、冷蔵した方の泳動像はサイズマーカーもPCR産物もはっきり検出することができました(図3左)。一方で冷凍保存した方は、なんでしょうかこれは・・・(図3右)。もはやバンドが観察できませんでした。これはゲル中に多数の気泡が発生してしまったため、気泡を避けるようにDNAが泳動されたためだと思われます。そのため結果としてDNAのサイズごとにきちんと分離できず、バンドとして可視化できなかったのだと考えられました。

DNAの泳動像4℃冷蔵保存(左)、-20℃冷凍保存(右)

図3 DNAの泳動像
4℃冷蔵保存(左)、-20℃冷凍保存(右)

まとめ

アガロースゲルを凍結保存すると気泡がたくさん入ってしまい、うまく電気泳動することができないことが分かりました。大量にゲルを作成して凍結保存しておくという効率化ができればと思ったのですが、私の野望はもろくも崩れ去ってしまいました。

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今回の記事に関連する、過去のBlog:
【やってみた】電気泳動のバンドが太くなる原因は「バンドが斜め」
【やってみた】アガロースゲル電気泳動でDNAが分離していく動画を撮影してみた
核酸ゲル電気泳動―概要と歴史
核酸電気泳動ワークフロー―主な 5 つのステップ
核酸電気泳動の7つの注意点
核酸電気泳動のトラブルシューティングガイド

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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