再生可能エネルギーやEVの普及、携帯機器の進化に従い、エネルギー効率の向上と環境保護を両立したバッテリーとその製造方法の開発が進んでいます。この二軸押出機によるバッテリー電極の開発シリーズでは、従来の電極製造手法との比較や二軸押出機を用いることのメリットを紹介します。
▼こんな方におすすめです!
- バッテリー電極製造の効率化、品質安定化を行いたい
- 研究開発を加速、生産性を向上させるツールを探している
- 環境やコストに配慮した、新たな製造手法を開発したい
今回は二軸押出機(二軸スクリューエクストルーダー)を用いたリチウムイオン電池の電極スラリーの配合を紹介します。
電極スラリーの配合
バッテリースラリーは、通常、プラネタリーミキサーなどの撹拌容器内で活物質、カーボンブラック、溶剤、バインダー、添加剤をバッチごとに配合して製造されます。これにはバッチ間での変動のリスクがあり、労力がかかるので、生産にダウンタイムが発生します。また、ラボスケールで開発した新規調合を生産スケールに移行することは簡単ではありません。
二軸スクリューエクストルーダーによる電極スラリーの配合
二軸スクリューエクストルーダーは、電極スラリーのバッチ式混合を置き換える技術です。二軸スクリューで配合することによって、材料せん断の正確な制御、熱伝達、材料スループット、および滞留時間を備えた連続生産プロセスが可能となります。これにより再現性が高まり、洗浄時間を短縮し、材料効率を向上することができます。

写真:Process 11装置構成とスラリー配合
左の写真は装置の構成です。Thermo Scientific™ Process™ 11卓上二軸スクリューエクストルーダーと粉体材料を供給するフィーダー、溶媒を供給するポンプで構成されています。Process 11は小型のエクストルーダーのため、安全キャビネットやグローブボックス内に設置でき、0.1~4.5 kg/hのスループットでサンプルを作製できます。ここから装置をスケールアップすることで、より高いスループットを実現することを可能にします。
二軸スクリューエクストルーダーを用いるメリット
プラネタリーミキサーでのバッチ混合と比較すると、連続式プロセスの二軸スクリューエクストルーダーはさまざまなメリットがあります。
・高い再現性
連続式プロセスにはバッチがないため、バッチ間のバリエーションが発生しません。変動のないスラリーを連続的に生成し続けます。
・高い分散品質
材料に作用するせん断力がプラネタリーミキサーよりも高いため、スラリーの分散品質が向上します。コーティング時のスクリーンフィルターメンテナンスも低減します。

・高い生産性(スペース、材料、労力、時間の節約)
連続式プロセスは材料損失が最小限に抑えられるため、より速く、より材料効率が高くなります。スラリーのバッチはプラネタリーミキサーで混合するのに4時間から8時間かかりますが、二軸スクリューエクストルーダーでは数分以内で製造されます。

これに対して、連続プロセス方式では、スラリー回収のためのダウンタイムがありません。二軸スクリューエクストルーダーによる連続プロセスはパラメーター(材料配合比、材料供給速度、温度、スクリュー回転速度)をプロセス中でも容易に変更できるため、1度のプロセスで複数の特性のサンプルを作製、比較することができます。


上の写真は異なるプロセスパラメーターで作成したスラリーのグラインドメーターによる粒子サイズの比較とレオメーターによるレオロジー特性の比較です。
まとめ
電極スラリーの製造において二軸スクリューエクストルーダーはバッチ式製造に置き換えることのできる手法です。
研究開発において高い品質、再現性のスラリー製造を実現します。生産性の高いプロセスを提供でき、研究開発を加速させるだけでなく、ラボで確立されたプロセスパラメーターを生産規模のエクストルーダーへ容易に移行することも可能です。
関連情報
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二軸押出機の基礎シリーズ/開発シリーズはこちら
- 二軸押出機の基礎➀ 押出機(エクストルーダー)の原理と二軸押出機の特長
- 二軸押出機の基礎② スクリューとバレルの仕組み
- 二軸押出機によるバッテリー電極の開発➀:バッテリー電極製造における二軸押出機の利点
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