日々増え続けるサンプルで、気が付けばフリーザーがいっぱいに!どこに何のサンプルを入れたかわからない、見つからない・・・なんてことはありませんか?
凍結保存サンプルの管理では、手書きラベルの読みづらさや消えてしまった文字、剥がれたラベルなど、さまざまな悩みが生じることがあります。バーコード管理を導入することで、これらの悩みごとを解決できるかもしれません!そこで今回は、バーコードを使用したサンプル管理のアイデアとツールについて、ご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
凍結保存サンプルの管理に悩んでいる方
▼もくじ
凍結保存サンプルの困りごと あるある6選
日頃から、貴重なサンプルをクライオチューブで凍結保存する際に、こんな困った経験はありませんか?
- ラベルやマーカーの手書き文字が読めない
- チューブにマーカーで書き込んだ文字が消えてしまった
- チューブに貼ったラベルが剥がれてしまった
- チューブの容量や形状がバラバラで、庫内にデッドスペースがたくさんできてしまった
- 目的のチューブを探すのに時間がかり、フリーザーの開閉頻度が増えた、開閉時間が長くなった
- 担当者がいないと、どこにサンプルがあるのかわからない
このような経験をしたことがある方は、多いのではないでしょうか。
筆者がラボに勤務していたときのことですが、私はあまりに達筆すぎる諸先輩方々の文字は読めませんでした。フリーザーの底から脱落したラベルを拾ったこともあります。フリーズボックス(81本用)を開けたらチューブが3本しか入っていなかった、サンプルを探すのに夢中でフリーザーのドアを開けっ放しにしてアラートを鳴らしてしまうこともありました(これは本当にダメです)。
このブログでは、これらの悩みを解決するアイデアとツールをご紹介します!
【サンプル管理のアイデア】バーコード管理のご提案
サンプルの管理に、「バーコード」を使ってみてはいかがでしょうか?
バーコード管理とは、バーコードを使用してモノや情報を紐付けし、効率的に管理する手法です。これにより、正確な情報の入力や追跡、在庫管理が実現できます。
一次元コード(以下、バーコード)は、横方向に並んだ線とスペースで構成されています。スキャンが速く、手軽に印刷できる特長があります。
一方、二次元コードは、縦横に並んだ四角形のパターンで、より多くの情報を表せます。バーコードと比べて、情報容量やスキャン精度が高く、同じ情報量であればより小さな面積に印刷できます。また、360度どの方向からでも読み取りができる特長もあります。
バーコードにサンプル情報を紐づけることで、手書きなどのマニュアル運用から脱却し、より正確なサンプル管理を実現できます。バーコードで運用することで、サンプル管理をDX化(デジタル化)し、情報の正確性を向上できます。
【こんなことができる!】バーコード管理のメリット
サンプルをバーコード管理することで以下のようなメリットが得られます。
- 迅速なデータ入力:バーコードを読み取ることで、情報を瞬時にデータベースに入力できます。これにより、入力ミスのリスクが減ります。さらに、バーコードシートを使用することで、定型情報の入力も迅速化できます。
- サンプルと情報の一元管理:データベース上で、バーコードの情報と関連する情報(サンプルの種類、保管場所、入庫日など)を紐づけて一元管理できます。この一元管理は、ISOの要求事項やトレーサビリティの構築にも役立ちます。また、廃棄ルールなどを定めておけば、庫内の整理にも役立ちます。
- サンプル追跡の正確性:バーコードを読み取ってデータベースに記録することで、サンプルの入出庫や保管状況を正確に追跡できます。サンプル保管場所の特定が容易で、探す手間が省けます。これにより、フリーザーの開放時間も低減できます。
- 庫内スペースの効率化:データベース上で空いている保管場所を特定することで、効率的にサンプルを収納できます。ボックスの空白位置をどんどん埋めていくことで、デッドスペースを最小化、庫内保管スペースを最大限活用することができます。
サンプルのバーコード管理によって、こんなことができるのか!といった気づきがあったのではないでしょうか。バーコード管理は、サンプルの正確かつ効率的な管理に役立ちます。
バーコードと情報の紐づけとは?
「バーコードに情報を紐づけし、ソフトウエア上で一元管理できます!」という言葉はよく耳にすると思いますが、具体的なイメージが難しくないでしょうか?ここでは、コードと情報の紐づけについて説明します。
まずは、スーパーやコンビニで買い物をする際、レジで商品のバーコードを読み取ることをイメージしてください。商品のバーコードには、商品名や価格などの情報が事前に紐づけされています。このため、バーコードを読み取るだけで情報が表示され、会計処理が簡単に行えるのです。サンプル管理でも同様に、チューブのバーコードにサンプルに関するいろいろな情報を紐づけておくことで、簡便な管理が行えるようになります。
では、どのような情報を紐づけるのでしょうか?
ヒト生体試料を例にとると、サンプル情報は主に以下の4つに大別できます。
A) サンプルそのものの情報(臨床情報、疾患・投薬歴など)
B) 保管場所に関する情報(部屋、保管庫、棚、ラック、番地など)
C) プロセスに関する情報(受け入れ、分注、入出庫処理履歴など)
D) 検査や分析・解析などのサンプルから得られた情報(各測定値、検査結果、ゲノム情報など)
Aの「サンプル情報」は基本的に変わらない情報であり、既に何らかの方法で管理されているでしょう。
一方、サンプルのバーコード管理をする上で一番重要な情報が、Bの「保管場所に関する情報」です。保管場所を確実にサンプルに紐づけることで、正確かつ効率的なサンプルの検索や入出庫が可能となります。保管場所を決めるときのコツとして、場所は固定せず、必要に応じて変更できるようにしておきます。これにより、保管場所の融通性が向上し、保管庫内を有効活用できます。Cのプロセスに関する情報は、サンプルの入出庫や処理の履歴(例、「いつ、誰が、サンプルを受け入れた(入庫した)」、「いつ、誰が、取り出した(出庫した)」、「いつ、誰が、どういう処理をした」)を記録することです。これにより、品質管理の強化やサンプル利用者が安心して使えるというメリットが得られます。また、Dのような分析データ(Rawデータや画像など)をバーコードに紐づけることもできます。
CとDはオプション的な情報ですが、AとBは重要な情報です。
バーコード管理を導入することで、これらの情報を一元管理し、スムーズなサンプル管理を実現できます。
【サンプル管理のためのラボ内の準備】
サンプルのバーコード管理を始める際には、ラボ内での準備が欠かせません。サンプルの保管場所を「一意に特定できる」ように準備します。
このために、ラボの保管設備や場所に一意な識別子(ID)を割り当てます。具体的には、フリーザーや液体窒素保管容器などの保管設備、フリーザーの棚やラック、チューブ収納ボックスなどの場所の全てに番号や記号を付けます。これにより、ラボのメンバーは付番された識別子を参照することで、特定の保管設備や場所を正確に特定できるようになります。また、サンプルの追跡や管理が容易になります。
ラボのサンプル保管設備・場所全てに付番しましょう!
【バーコード管理に役立つ消耗品】
サンプルのバーコード管理をするときに役立つ消耗品を紹介します。
・バーコードラベル
多くのサンプル管理現場で使われています。特殊なラベルを使用すれば凍結状態のチューブにも貼付できます。既存チューブや収納アイテムを流用できるため、手軽に導入できます。ただしバーコードラベラーやラベルのコストやラベルの貼付作業が発生し、またコード管理には注意を要します。
・バーコード付きクライオチューブ
チューブ側面にバーコードが印字されたクライオチューブです。バーコードラベラーやラベルの導入、ラベル貼付作業、コード管理が不要になります。また、既存の収納アイテムも流用でき、比較的手軽に導入できます。オートメーションには親和性が低く、チューブの種類も限定的です。
当社でもバーコード付きクライオチューブをご用意しています。クライオチューブとしての機能や品質は通常製品と同じです。
<お問い合わせ・資料請求・サンプル依頼はこちら>
・二次元コード付きチューブ
二次元コード付きクライオチューブ(以下、2Dチューブ)は、チューブ底面に二次元コードがついたサンプル保存用チューブです。一部のチューブでは、側面にバーコードと目視可能文字が印字されています。コード管理はサプライヤーで行われます。二次元コードはレーザー加工されており脱落リスクは少なく、誤り訂正機能があり、霜などでコードが欠損してもデータを復元して読み取ることができます。
2Dチューブの収納には専用のラックが必要になります。この多くはANSI/SBS規格ラックでフットプリントやチューブの配置が統一されており、保管場所の収納効率や操作性の向上が期待できます。また、ラック自体には国際的に決まった番地が刻印されており、チューブ位置の特定が容易です。さらに、一部のラックにはバーコードが印字されており付番不要、そしてオートメーションへの互換性にも優れます。
当社では、幅広いラインアップで2Dチューブを提供しています。チューブやラックの耐久性はもちろん、超低温や液体窒素環境下で長期間にわたってサンプルを保存できるように考慮して設計されたチューブです。
<お問い合わせ・資料請求・サンプル依頼はこちら>
【バーコードリーダー選定のポイント】
ラボでのサンプル管理用にバーコードリーダーを選ぶ際のポイントをいくつかご紹介します。既設のリーダーが利用できるかどうかも確認する必要があります。
- 対応する規格と形式:バーコードリーダーがサポートするバーコード/二次元コードの規格や形式を確認しましょう。使用するバーコードに対応しているかを確認します。
- 読み取り速度:高速かつ正確に読み取れることが理想です。大量のコード処理時は、高速読み取りが求められます。
- 接続方法と互換性:インターフェース(USB、Bluetooth™、ワイヤレスなど)が、利用するシステムやデバイスと互換性があるか確認しましょう。
- 盤面の曇り:凍結したチューブのコードを読み取ることが多くなるため、盤面に霜付きや曇り、結露が生じる可能性も考慮します。盤面の性能を確認しましょう。
バーコードリーダーは主にハンディタイプと卓上タイプに大別されます。ハンディタイプはポータブルで軽量な機種が多く、比較的手頃な価格帯です。一方、卓上タイプは高性能で高価な機種が多く、チューブ1本だけでなくラック一括で情報を読み取ることができます。
当社では、複数の卓上バーコードリーダーを取り扱っており、手頃な価格の機種から高性能な機種まで幅広くご提供しています。ご要望に合わせて適した機種のご紹介や、デモンストレーションも行っております。
<お問い合わせ・資料請求・サンプル依頼はこちら>
【Excelを使用したバーコード管理】まずはExcelでやってみよう!
バーコード管理には、サンプルと情報を管理するためのソフトウエアが必要です。そのソフトウエアを購入すると、ある程度の費用がかかります。そこで、まずはExcel™を使用して始めてみることをおすすめします!
Excelは費用をかけずに手軽に利用することができますが、注意点もあります。例えば、上書き保存が簡単に行われてしまうため、ファイルの管理には慎重さが必要です。また、Excelでは大量のデータを処理すると処理速度が遅くなるというデメリットもあります。
ただし、多くのラボではそこまで大量のサンプルを扱う必要がないため、Excelでの管理は十分に可能です!また、将来的に他のシステムに移行する可能性がある場合でも、Excelでデータを整理しておけば移行作業がスムーズに進むでしょう。
(Tips.1)Excelサンプル管理ソフト
当社では、はじめてサンプル管理をはじめる方にExcelサンプル管理ソフトをお配りしています。このソフトは、Excelのマクロ機能を活用した簡単な整理ソフトになります。無償でご使用いただけますので、特別なコストは不要です。
(Tips.2)バーコードシートの活用
Excelサンプル管理ソフトを使用する際に、多くのセル(メニュー)で定型文の入力が必要になることがあります。手動でこれらのテキストを入力すると、作業が煩雑になり属人化の問題が生じる可能性があります。そこで、バーコードシートが役立ちます。コンビニでおでんを購入する先にレジでみかけるバーコードシートを応用します。あらかじめバーコードシートを準備しておくことで、迅速な入力、誤入力の防止、そして入力方法の統一が図れます。
まとめ
「バーコードでのサンプル管理」と聞くと、何だか一大プロジェクトのような印象を受けませんか?いえいえ、全くそんなことはありません。サンプル数の多寡を問わず、どのようなラボでも実践いただけます。むしろ、サンプル数が少ないうちからコツコツ始める方が簡単だったりします。
凍結保存サンプルの管理において、バーコード管理は便利で効果的な手法です。手書きラベルの読みづらさや脱落、情報の入力ミスなどの問題を解決し、迅速なデータ入力やサンプルと情報の一元管理、正確なサンプル追跡などのメリットをもたらします。
百聞は一見に如かず。実際に二次元コード付きチューブとエクセルを使ったデモンストレーションを行っております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
<お問い合わせ・資料請求・サンプル依頼はこちら>
【無料ダウンロード】チューブ&プレート/凍結保存用製品カタログ
【セミナー案内】サンプル管理に関するセミナーを実施しています。詳細は、こちらをご覧ください。
▼こちらの記事もおすすめです。
・持続可能で安全なサンプルの凍結保存-ラボの省エネ対策への取り組み
・【凍結保存の基礎1】クライオチューブ選びで大切な5つのこと
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。
Blurtooth is a trademark of Bluetooth Sig, Inc.
Excel is a trademark of Microsoft Corporation.