ペプトンは増殖能の向上および目的物質の生産性の改善のため、細胞や微生物培養の基礎培地やサプリメントとして使用されています。しかしながら、当社の製品カタログ上には50種以上のペプトン製品が存在するため、どのようなペプトンを選べば良いか迷われるお客さまも多いのではないでしょうか。そこで今回は、Webサイトの画面上での、簡単な入力操作でお客さまの培養条件に適合するペプトン製品を検索することができる「Peptone Selection Tool」をご紹介します。
▼このような方におすすめ
・細胞および微生物培養においてどのようなペプトンを選択すべきか分からない
・血清のロット差に左右されず安定した培養をしたい
・バイオ医薬品やワクチン製造における有用なサプリメントを探している
▼もくじ
「ペプトン」とは?
ペプトンとは、植物、酵母または動物由来のタンパク質の部分加水分解から得られる水溶性の生成物を指します。この生成物にはペプチド、アミノ酸、炭水化物、塩類といった多様な栄養成分が含まれており、さまざまな微生物培養の基礎培地やサプリメントとして使用することで、細胞増殖能の向上および目的物質の生産性の改善が期待されます(図1)。また、ペプトンは栄養緩衝を含む保護作用を細胞に提供するだけでなく、培地または工程由来の毒性成分からの保護も提供するため、高濃度の主要成分添加が可能となり、細胞のアポトーシスを遅延させます。
多くのペプトンは類似した構成成分を有しますが、加水分解工程および出発原料のタンパク質の違いにより異なる栄養素プロファイルが得られます。加水分解工程には、酸および塩基による加水分解とタンパク質分解酵素による加水分解があります。前者は、一般的に高温で行われるため、全てのペプチド結合が切断され一部のアミノ酸が分解されたり、酸性型に変化したりする可能性があります。後者は低温での緩やかな工程でタンパク質を加水分解し、特異的なペプチド結合を標的とすることができます。また、出発原料のタンパク質の違いとしては、動物組織由来(AO)あるいは動物由来成分不含(AOF)があります。過去のブログ記事では、動物由来成分不含(AOF)ペプトンについても紹介しています。
ペプトンは汎用性が高く、幅広い種類の動物細胞および微生物に使用でき、高度の増殖およびタンパク質生産をサポートします。当社の最高レベル品質のペプトンはさまざまなアプリケーションに使用されており、現在ヒトおよびアニマルヘルスケア市場において150を超えるバイオ医薬品の製造に使用されています。
ペプトン選びに迷ったときにはコレ!「Peptone Selection Tool」
以上のとおり細胞および微生物培養にきわめて有用なペプトンですが、ペプトン選択のためには適切な培養条件を満たすようさまざまな製品を包括的にスクリーニングすることが重要です。本ブログでは、当社のWebサイト上の「Peptone Selection Tool」で、お客さまの培養条件に推奨されるペプトン製品を検索する方法をご紹介します。このツールは登録不要で無料で使用していただくことができ、入力操作も非常に簡単です。検索方法は2種類あります。
検索方法その1:フィルタリング検索
画面中央の選択欄にて、Cell Type、Organism、Application、Source、Peptone Typeの順に表示項目の中から選択していくことで、お客さまの培養条件に対して当社が推奨するペプトン製品を絞り込むことができます。複数のペプトン製品が該当する場合は、推奨度の高いものから順に表示されます。

図2. フィルタリングを使用した例:Cell type、Organismのみを選択した条件では60製品までしか絞り込めませんが、
全ての項目を選択すると3製品まで絞りこむことができました
※画像をクリックすると拡大表示できます
検索方法その2:キーワード検索
Keyword Search欄に情報を入力することでも、ペプトン製品を絞り込むことができます。この機能は、先述のフィルタリング機能との併用も可能です。

図3. キーワード検索とフィルタリングを併用した例:キーワードは”Bovine”、Cell Typeは” Microbial (Yeast)”に設定
入力したキーワードはPeptone Typeとして反映されました
※画像をクリックすると拡大表示できます
ペプトンは極めて栄養価が高く、最小限のリソースで培地およびフィードを迅速に最適化して、高い細胞増殖と力価を達成することが可能です。単独での使用でもパフォーマンスを強化させますが、複数のペプトンを混合することで相乗効果が生み出され、単独で使用する場合よりも高いパフォーマンスが得られる可能性もあります。「Peptone Selection Tool」での検索で複数のペプトンが推奨された場合には、それらを混合して評価することもご検討ください。
これらの検索方法でお客さまのアプリケーションに適した製品をお選びいただき、迅速で効果的なパフォーマンス強化剤として、ぜひペプトンをお試しください。
その他の参考資料:[無料公開中]ペプトンテクニカルガイド
このテクニカルガイドでは弊社が取り扱うペプトン製品の特長やアプリケーション、さらには製品選択ガイダンスなど、実用性の高いさまざまな情報が掲載されています。細胞培養および微生物発酵を用いる研究開発からGMPレベルの医薬品製造におけるリファレンスツールとしてお手元で是非ご活用ください。
<目次ご紹介:全94ページ>
- イントロダクション(ペプトンの歴史)
- タンパク質からペプトンまで
ペプトンとその製造方法/ペプトン使用の利点/適切なペプトン選択方法/合成(CD)ペプトン - 細胞培養アプリケーション
基礎培地の選択/サプリメントおよびフィードの選択/工程の最適化/培地デザインサービス - 微生物発酵アプリケーション
微生物発酵用培地デザイン/ペプトンの選択/動物由来物質を含まない培地成分への移行 - 動物由来成分不含(AOF: animal origin free)ペプトンの紹介
- 動物由来ペプトンの紹介
- Starter Paks(スターターパック:用途に合わせた3種のトライアルキット)
- 化学合成(CD: chemically defined)サプリメントおよびフィード
- 微生物培養およびワクチン産生用培地
- プロトコルおよび試験方法の定義
- 規制文書(試験成績書/適合証明書)
- オーダーインフォメーション(全製品一覧表)
まとめ
今回は、数ある当社のペプトン製品の中から、お客さまの培養条件に合ったペプトンをWeb上で簡単に検索できる「Peptone Selection Tool」をご紹介させていただきました。
このほかにも製品の詳細については上記でご紹介した「ペプトンテクニカルガイド」
動物由来成分不含(AOF)に特化したペプトンについては、過去ブログ記事
安定した培養を可能に!バイオ医薬品製造における動物由来原料不含(AOF)ペプトンの活用方法
も併せてご活用ください。
ペプトン、その他当社製品に関するお問い合わせはこちらから
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。