世界の多くの地域において新型コロナウイルスの伝播が持続しており、重大なウイルスの変異が発生する状況が生み出されています。感染力やワクチンによる免疫回避にかかわるとされている変異も議論されており、陽性検体において特定の変異を持つかどうかの確認の重要性が増しています。
そこで今回はリアルタイムPCRで目的の変異を検出することができるApplied Biosystems™ TaqMan™ SARS-CoV-2 Mutation Panel Assayを紹介します。本製品はE484K、L452R、L452Qなどの新型コロナウイルスの変異をリアルタイムPCRで検出するためのデザイン済みのプライマーとプローブの混合液が含まれます。1つの検出対象の変異に対して1種類のアッセイを選択します。96ウェルと384ウェル対応のリアルタイムPCR機器に対応しています。また、すべてのアッセイのPCR条件は同じですので、同一プレート上に異なる変異を検出するアッセイを同居させることも可能です。
ワークフローについて
検体から精製したRNA(Ct値が30以下のSARS-CoV-2サンプルから抽出されたRNAサンプルを推奨)を用意します。本アッセイと指定の1ステップの試薬Applied Biosystems™ TaqPath™ 1-Step RT-qPCR Master Mix, CG(製品番号A15299)による反応液を調製し、約70分のランで結果が確認できます(図1)。

図1 ワークフロー
TaqMan SARS-CoV-2 Mutation Panel Assayについて
ターゲット配列領域を増幅するための特異的なフォワードおよびリバースプライマー(リバースプライマーは1ステップ法によるSARS-CoV-2ゲノムRNA配列の逆転写反応用のプライマーを兼ねる)と参照配列と変異株を検出するための2つのTaqMan MGBプローブが40倍濃縮で混合された状態でお届けします。
VICラベルのついたプローブで参照配列、FAMラベルのついたプローブで変異株の配列を検出します(図2)。

図2 検出のしくみの模式図(検出対象の塩基は例)
解析について
リアルタイムPCRのランはジェノタイピングのモードで実施します。Applied Biosystems™ QuantStudio™シリーズなどApplied BiosystemsブランドのリアルタイムPCR装置で実施した場合、結果の解析はQuantStudio Design and Analysis Software v2.5以降のソフトウエアで実施いただけます。本ソフトウエアはフリーのソフトウエアでWindows 10とMacの両方に対応しています。ダウンロードサイトはこちらです。本ソフトウエアでは図3のようにGenotypingを使用したクラスタープロットの解析を実施することが可能です。クラスタープロットは検出対象の変異を持つサンプルはy軸に沿った青い点、対象変異を持たないサンプルはx軸に沿った赤い点を示します。

図3 L452R変異検出のTaqMan SARS-CoV-2 Mutation Panel Assayの結果
まとめ
弊社TaqManプローブはクエンチャーにMinor Groove Binder(MGB)が付加されています。MGBはTm値のエンハンサーとなるため、プローブの長さを短くできますので、特異性向上が期待できます。
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