SARS-CoV-2ウイルスは、2020年3月のパンデミックが発生して以来、3年目に差し掛かる今も進化を続けています。他のRNAウイルスと同様に、SARS-CoV-2ウイルスは、RNA依存性RNAポリメラーゼのエラーが生じやすいことから、変異率が高いことが知られています1, 2。さらに、免疫の一部に選択的な進化圧力が加わることがあり、新しく、より感染性の高い変異体または病原性の変異体の出現につながります3。ウイルス感染性、伝達性、および抗ウイルスやワクチンへの感受性に影響を与える可能性のある変異は大きな懸念事項であるため、それらの拡散を抑制するために継続的にモニタリングする必要があります。
図 1 : SARS-CoV-2ウイルススパイク遺伝子ドメインの構成
出典:The Spike of Concern—The Novel Variants of SARS-CoV-2 (https://www.mdpi.com/1999-4915/13/6/1002/htm#)
新しい系統である B.1.1. 529は、 オミクロン株としても知られており、2021年11月後半に南アフリカのGauteng州で初めて検出されました。その後、11月26日にWHOによって「懸念される変異」として宣言されました4。この変異は、主にウイルスゲノムのORF1abおよびスパイク領域にある30を超える非同義変異を特徴としています5。特に懸念されるのは、受容体結合ドメインおよびスパイク遺伝子のN末端ドメインの変異で、これらは直接的または間接的に、ACE2相互作用および細胞へのウイルス侵入に関与します(スパイク 遺伝子ドメインの構成ついては図1を参照)。オミクロン株の感染は発見されて以来、南アフリカでは12月1日時点で8,561 件報告されており、11月26日に報告された3,402件から大きく増加しました6。同時に24を超える国々がこの変異を報告しています。
サーモフィッシャーサイエンティフィックは、迅速にSARS-CoV-2ウイルスを検出するためのアッセイを提供することで、パンデミックとの戦いの最前線に立ってきました。 当社の最新リアルタイムPCR 検出テクノロジーでは、SARS-CoV-2ウイルスゲノムの3つの異なる領域(N、S、ORF1ab)を解析することが可能で、変異の冗長性が組み込まれています。プローブの1つが機能しなくても、他の2つのプローブがウイルスの存在を示します。興味深いことに、以前はB.1.1.7株で見られていたスパイク 領域のアミノ酸位置69/70における欠失は、当社のリアルタイムPCRアッセイによるS遺伝子検出のドロップアウトにつながりました。堅牢なNおよびORF1aシグナルと組み合わされたこのスパイク遺伝子のドロップアウトは、B.1.1.7株の初期の指標として使用されていました7。同じ現象がオミクロン株でも観察されており、S遺伝子の検出が失敗した場合に、その変異をシーケンスベースで確認するための予備試験として現在使用されています8。サンガー法および次世代シーケンシング(NGS)による疫学的サーベイランスは、それぞれターゲットシーケンシングと包括的シーケンシングに最適な技術です。
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サンガーシーケンス
全ゲノムのサンガーシーケンシングにはいくつかのアプローチが開発されています。これらをウイルスの単一サンプルシーケンシングに用いることで、変異を特定し、NGSシーケンシングからのデータを確認することができます2,3。
オミクロン株のS遺伝子のドロップアウトおよびその他の特徴的な変異の確認
ターゲットをより絞り込んだサンガーシーケンシングアプローチを使用し、欠失領域のS遺伝子の短いストレッチを増幅することにより、当社のリアルタイムPCRアッセイによるS遺伝子ドロップアウトを検証することができます。また、オミクロン株に特徴的な214番目のアミノ酸の位置にある3つのアミノ酸(EPE)挿入に対してもこのアプローチを使用して検証できます。このような感染性の高い可能性のある系統の特徴的な変異を検出することは、サンプルに特定の系統が含まれていることを確認するためだけでなく、経時的に系統がどのように変化するかを疫学的に追跡するためにも重要です。特徴的な変異のあるゲノム領域に対するサンガーシーケンシングは、これらの両方の目的に役立つ可能性があります。そのため当社は、B.1.1.7およびB.1.351系列に加えて、B.1.1.529に特徴的な変異を検出するために使用できるプライマー†およびサンガーシーケンスプロトコル‡のセットを設計しました。
関連する記事:Solutions for surveillance of the S gene mutation in the B.1.1.7 (501Y.V1) SARS-CoV-2 strain lineage
Applied Biosystems™ BigDye™ Direct Cycle Sequencing KitおよびApplied Biosystems™ BigDye XTerminator™ Purification Kitを使用すれば、プロセスを合理化し、シーケンシングデータを約4時間で取得できます。この製品は柔軟性をもたせて設計されているため、研究者は研究ニーズに最適なプライマーペアを選択できます。さらに、各アンプリコンの長さは数百塩基に及びます。参照株と異なる新規変異はサンガーシーケンシングによって同定され、ウイルスの経時的な進化の手がかりとなります。
SARS-CoV-2ウイルス ゲノムのあらゆる領域におけるサンガーシーケンシングのプロトコルにアクセスするには、こちらをご覧ください。
ビジュアルブラウザおよび検索テーブルには、オミクロン バリアント用のプライマーが含まれています。
S 遺伝子のdel69/16 70 領域のシーケンシングプロトコルにアクセスできます。
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次世代シーケンシング
次世代シーケンシング(NGS)は、完全なSARS-CoV-2ウイルスゲノムの解析とモニタリングに使用できます。Ion Torrent™ Ion AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Insight Research Panelは、ターゲット型NGSソリューションであり、SARS-CoV-2ウイルスの完全なウイルスゲノム配列決定および変異株検出を支援します。ウイルスゲノムの大部分を2種類のアンプリコンプールでカバーしたデザインにより、自然発生する変異に対して極めて高度な対応が可能であり、急速に変異するウイルスにも確実なパフォーマンスが検証されているため、SARS-CoV-2ウイルス研究におけるさまざまな疫学用途に使用できます。このアッセイは、自動化された高速かつ正確なターゲット型NGSワークフローの一部であり、これにより、コロナウイルスを1日以内に分類することが可能になります。このエンドツーエンドのリサーチソリューションには、SARS-CoV-2ウイルスによる危機の最前線で活動する研究者と共同で開発されたアッセイおよびプラグインが含まれています。当社の相補的ターゲット型NGSシステムは、研究者の現状のNGS経験レベルを問わず、あらゆるラボでSARS-CoV-2ウイルスの疫学研究を可能にします。
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Genexusシステムを用いたSARS-CoV-2ゲノム解析」をテーマにSARS-CoV-2研究の最前線をリードする先生をお招きし、現在の状況や検出される変異の変遷、感染症の今後についてご紹介いただきます。
ご不明な点に関する質問や、個別的な状況についてご相談がある場合は、テクニカルサポートチームまでお問い合わせください。
Reference
1.Banerjee, A., K. Mossman, and N. Grandvaux, Molecular Determinants of SARS-CoV-2 Variants. Trends Microbiol, 2021. 29(10): p. 871-873.
2.Chrisman, B.S., et al., Indels in SARS-CoV-2 occur at template-switching hotspots. BioData Min, 2021. 14(1): p. 20.
3.Saad-Roy, C.M., et al., Epidemiological and evolutionary considerations of SARS-CoV-2 vaccine dosing regimes. Science, 2021. 372(6540): p. 363-370.
4.Callaway, E., Heavily mutated Omicron variant puts scientists on alert. Nature, 2021. 600(7887): p. 21.
5.https://outbreak.info/situation-reports/omicron
6.https://doi.org/10.1038/d41586-021-03614-z
7.Kidd, M., et al., S-Variant SARS-CoV-2 Lineage B1.1.7 Is Associated With Significantly Higher Viral Load in Samples Tested by TaqPath Polymerase Chain Reaction. J Infect Dis, 2021. 223(10): p. 1666-1670.
8.https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/science/science-briefs/scientific-brief-omicron-variant.html



