下水疫学調査によるSARS-CoV-2モニタリング
下水中にはどのような情報があるでしょうか?感染者の症状の有無に影響を受けずに、ウイルス感染率に関する情報の提供が可能とされる下水疫学調査(WBE)は、SARS-CoV-2をモニタリングする方法となり得るかもしれません。SARS-CoV-2リボ核酸(RNA)が感染者の糞便中から検出されることが報告されており、未処理の下水サンプルでウイルス遺伝子を検出できる可能性があるのです。そのため、WBEがウイルスのモニタリングに貢献できるかもしれません。ハイスループットと高い感度を誇る次世代シーケンシング(NGS)は、サンプルを直接シーケンスすることによってウイルスの蔓延を迅速に把握できるため、WBEの有用なツールとなります。このような研究におけるNGS特有の利点は、変異解析と株の同定です。この利点によって、研究者はさまざまなSARS-CoV-2株を同定でき、ある特定の集団中におけるそれらの株の出現と消失を検出することができるようになります。
Ion Torrentシーケンス技術を用いたSARS-CoV-2ウイルス感染率と蔓延に関する調査
最近のWBE研究[1]で、ある研究者がIon TorrentTM シーケンス技術を利用してSARS-CoV-2ウイルス感染 率と蔓延について調査しました。研究データによると、イタリア北部のSARS-CoV-2のホットスポット(一大感染地)であるミラノでは2月下旬にヒトの生体サンプルでウイルスの存在が増加し、3月中旬にピークを迎え、その後減少することが示されました。下水サンプルを用いたウイルスの解析でも、同じ期間におけるヒトサンプルデータと相関関係がありました。下水サンプルのシーケンス解析結果は、SARS-CoV-2系統全体の遺伝的変異を評価し、複数のウイルス株を識別し、感染経路と感染率を予測することの重要性を強調しています。この研究は、下水疫学調査が現在の危機と、今後発生するであろう感染の動向を見極めるための実用的な目安になる可能性があることを示唆しています。
まとめ
Ion AmpliSeq™SARS-CoV-2 Researchパネルは、非常に特異的で迅速かつ使いやすいターゲットNGSソリューションで、WBEのような疫学調査で用いられるチャレンジングなサンプルでも使用できます。最先端のIon TorrentTM テクノロジーの精度と感度を利用したこのアッセイは、SARS-CoV-2ゲノムとそのバリアントの99%以上をカバーし、検出限界はウイルス20コピーとなっています。このアッセイには、シーケンス結果のさらなる解析のため、危機の最前線にいる科学者と開発した直感的なプラグインパッケージを含む、核酸から解析までのワークフローが含まれます。Ion AmpliSeqSARS-CoV-2 Research パネルは、SARS-CoV-2ウイルス株を区別し、ウイルスの感染傾向をリアルタイムで追跡するのに役立つ貴重な情報を提供できるシンプルで優れた研究ソリューションです。これは、より効果的なワクチンの開発や来るべきウイルスの波と戦うためのツールとなるかもしれません。
関連情報
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参考文献
[1] Rimoldi S, Stefani F, Gigantiello A, Polesello S, Comandatore F, Mileto D, Maresca M, Longobardi C, Mancon A, Romeri F, Pagani C, Moja L, Gismondo MR, Salerno F. “Presence and vitality of SARS-CoV-2 virus in wastewaters and rivers.” medRxiv preprint. 5 May 2020. doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.01.20086009
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