世界中に広く拡散したSARS-CoV-2ウイルスをマッピングして、新しい株がある集団または地理的な地域で出現しているかどうかを判断するためには、迅速なバリアントレベルの検出と解析が必要です。SARS-CoV-2抗体の検出に使用される血清検査の結果は前述の内容を目的とした研究には充分とは言えません。私たちの体の防御機構を担う免疫系は、B細胞とT細胞の部隊で構成されています。B細胞が抗原特異的なマーカーを有した抗体を産生し、SARS-CoV-2ウイルスなどの外来からの異物の侵入を防ぐ役割を果たすということはわかっていますが、SARS-CoV-2に対する免疫において、T細胞がどのような役割を果たすのかについては、まだ学ぶべきことが多くあります[1]。血清検査は血中に存在する抗体を検出するために使用されますが、免疫系がまだ応答段階にある感染初期には、抗体が常に検出できるとは限りません。SARS-CoV-2ウイルスでは、無症候性保因者が存在するため、SARS-CoV-2感染の重症度に関係する要因の解明が更なる課題として挙げられます。
SARS-CoV-2抗体に対する血清疫学調査
SARS-CoV-2による深刻な影響を受けた国の1つであるスペインで実施された血清疫学調査の結果[2]によると、感染蔓延(ホットスポット)地域でさえも、スペインの人口の大部分の人がSARS-CoV-2の抗体に対して血清反応陰性であることが示唆されています。この結果は、これまで考えられていたように、SARS-CoV-2に対する免疫が容易に獲得できない可能性があることを意味しています。ワクチン開発にかかる時間がはっきりしない状態では、集団中におけるSARS-CoV-2罹患率を追跡するための代替法が必要になります。なぜなら、ウイルスに対する免疫をどの程度維持できるのか、また、再感染がどのくらいの期間で生じる可能性があるのかについては今もって明らかになっていないためです。
血清検査に代わるSARS-CoV-2の疫学調査
血清疫学調査の代案として、環境モニタリングは、特定の地域でのSARS-CoV-2の流行を追跡するためのより迅速な方法となるかもしれません。下水由来サンプルからウイルスを検出することができるため、下水疫学調査(WBE)はイタリア、スペイン、イギリス、アメリカなどで実施されています。ウイルスをバリアントレベルで迅速に検出することは、潜在的なホットスポット地域を予測し、新たに発生する株をリアルタイムで追跡するために非常に重要です。
バリアントレベルでの解析に対応したターゲットNGS
この危機が始まって以来、34カ国以上の研究者が、SARS-CoV-2の研究と疫学調査にIon Torrent™ ターゲット次世代シーケンス(NGS)ソリューションを使用しています。Ion AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Research パネルは、迅速で自動化された優れたターゲットNGSソリューションで、バリアントレベルでの正確な解析が可能です。SARS-CoV-2ゲノムの99%以上をカバーし、全ての血清型に対応しています。このアッセイは、核酸から解析までの一連のワークフローの一部で、強力でありながら直感的な解析ツールを備えているため、インフォマティクスの経験によらず、あらゆるユーザーがNGSにアクセスすることを可能としています。
まとめ
SARS-CoV-2疫学研究のためのシンプルで実用的なNGSの詳細をご覧ください»
SARS-CoV-2ウイルス研究、ワクチン開発研究、宿主遺伝学および免疫反応を研究するためのターゲットNGSソリューションの包括的なポートフォリオをご覧ください»
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。