SARS-CoV-2の新規変異株B.1.1.7(英国)およびB.1.351(南アフリカ)の出現と再感染報告の増加に伴い、より多くの新型コロナウイルスサンプルのゲノム配列の分析が急務とされています。公衆衛生機関はシーケンス技術を活用し、SARS-CoV-2変異株のウイルス監視に重要なデータを提供しています[1]。変異株がもたらすさらなる影響を見通し、そして減少させるため、科学者は早急にSARS-CoV-2の突然変異率、宿主感染リスクについて注意深く観察しなければなりません。 B.1.1.7(英国)株は2020年9月に最初に検出され、そのゲノム中に極めて多くの変異があることが報告されています。特に、17の突然変異のうち8つ[2]は、SARS-CoV-2ウイルスが細胞に侵入するために使用する重要な高分子であるスパイクタンパク質をコードする領域にあります。このウイルス株は他の株と比較して最大71%感染性が高いことが示唆されており[3]、現在、米国とカナダを含む世界35カ国以上で検出されています[4]。
その後すぐ、2020年10月初旬に南アフリカでB.1.351(南アフリカ)株が確認され、現在13カ国以上で検出されています[5]。この株は英国株と複数の変異を共有していますが、系統発生分析の結果、B.1.1.7(英国)とは系統として進化的関連は認められていません。
これら2つの株は他の株と比較してより簡単でかつ急速に広がるように見えますが、具体的に、現時点でこの新しい変異株のいずれかがより重篤な症状や死亡リスクの増加を引き起こすという証拠はありません。これらの突然変異がどのように発生し、感染率に影響を与えるかについてはまだはっきりと分かっていませんが、現在利用可能なワクチンの有効性に対して影響を与える可能性があるため、B.1.351(南アフリカ)株内の特定の変異に関する懸念が高まっています[6]。
これらの新しいSARS-CoV-2株が世界中で急速に蔓延しているため、複数の亜種からの再感染および同時感染の事例も増加しています。現在までに、香港、ネバダ(米国)、サンパウロ(ブラジル)などで再感染が報告されており[7]、ポルトガルでは少なくとも1つの報告例で、2種のSARS-CoV-2株の同時感染が報告されています [8]。
科学者たちは、これらの新しい株が広がっている範囲、株のゲノム配列の違い、感染の重症度とワクチンの有効性への影響についての洞察を得るために競争を続けています。以下の重要な質問に回答するためには、これらの新しい株の病原性、疫学的および臨床的影響に関する新しい情報が必要であり、影響を遅らせるためには、質問に対する回答を明らかにする必要があります。なぜ新たに出現した変異株は人から人へとより簡単に広がるのか?これらの変異株は現在利用可能な検査で検出できるのか?変異株の出現は、現在認可されているワクチンと治療法の安全性と有効性に影響を及ぼすか?ウイルスの進化を説明できる特定の触媒はあったのか?
次世代シーケンシング(NGS)の革新により、コロナウイルスなどの感染性病原体のシーケンシングに新たに取り組むラボにおいてもテクノロジーにアクセスしやすくなりました。科学者は、Ion AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Research Panel とIon Torrent™ ターゲットNGSテクノロジーを用いることで、B.1.1.7(英国)およびB.1.351(南アフリカ)のゲノム配列の解析に成功し、その配列はGISAIDのデータベースより利用可能になっています[9]。
イタリアのBari Aldo-Moro大学分子疫学公衆衛生学部の生物医科学人間腫瘍学科の准教授であるMaria Chironna博士は、Ion Torrent™ NGSを使用してSARS-CoV-2株の配列決定を行っています。「Ion AmpliSeq SARS-CoV-2 Research PanelとIon Torrent™ プラットフォームの迅速なターゲットリシーケンスワークフローにより、新たなコロナウイルス株を迅速かつ正確に検出および追跡できるようになりました」とChironna博士は語ります。また、「我々はこれまでに、B.1.1.7(英国)系統に属する2つの株を明らかにしました。」と続けます。Chironna博士は、地域での週ごとの陽性率が高いままであるため、サーベイランス研究のためにSARS-CoV-2のシーケンスを継続する予定です。「パンデミックのこの段階でSARS-CoV-2の配列決定の活動が重要である理由は、わが国で流行している変異株を早期に特定するためです。さらに、我々は再感染の可能性が増加していることに気づいています。これらの特定の症例は、SARS-CoV-2の全ゲノムを配列決定することによって確認できる可能性があります。」
Ion AmpliSeq SARS-CoV-2 Research Panelは、サンプルからバリアント検出までのNGSワークフローの一部であり、ウイルスゲノムの99%以上をカバーし、すべての血清型に対応することが可能です。このターゲットNGSソリューションには、直感的な分析ツールを備えたアッセイとプラグインが含まれているため、NGSやインフォマティクスの専門知識によらず、SARS-CoV-2シーケンスおよび疫学研究へのアクセスに役立ちます。
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参考文献
1: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/more/science-and-research/scientific-brief-emerging-variants.html
2: https://virological.org/t/mutations-arising-in-sars-cov-2-spike-on-sustained-human-to-human-transmission-and-human-to-animal-passage/578
3: BMJ 2020;371:m4944
4: https://cov-lineages.org/global_report_B.1.1.7.html
5: https://cov-lineages.org/global_report_B.1.351.html
6: https://www.telegraph.co.uk/news/2021/01/04/south-african-variant-may-evade-vaccines-testing-warn-scientists/
7: https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3340;
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30764-7/fulltext;
https://g1.globo.com/sp/sao-paulo/noticia/2020/12/16/governo-de-sp-confirma-1o-caso-de-reinfeccao-por-coronavirus-no-estado.ghtml
8: https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.12.22.20248392v1.full.pdf
9: https://www.gisaid.org/
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