はじめに
ラパス大学病院(HULP)はスペインにある公立病院で、コロナウイルスの影響を最も強く受けた地域の1つである首都マドリッドの北部でSARS-CoV-2の疫学研究を実施しています。
SARS-CoV-2の危機の初期に影響を大きく受けたスペインは、2020年6月に7週間の封鎖がようやく解除されました。HULPは、国内でウイルス感染の最初の症例が確認されてから4カ月後の4月末までに、2,500を超えるSARS-CoV-2陽性症例を確認した後、ヨーロッパで最大級の単一コホートとなっています。
HULPのSARS-CoV-2研究
HULPのSARS-CoV-2研究グループは、人口統計、交絡因子の存在、症状、感染の重症度および転帰などの情報を含む、コホートの検体に関する調査結果を発表しています[1]。 この研究は、SARS-CoV-2の影響を受ける大規模コホートの最初の報告の1つであり、ウイルスが一般集団内のさまざまなグループにどのようにインパクトを与えるかをよりよく理解し、各グループにおいて効果的な治療法の開発を推進するために貴重なステップとなっています。
SARS-CoV-2のゲノムシーケンス決定と進化パターンの理解
この危機で理解すべきもう1つの重要な側面は、ウイルスの蔓延に影響を与える可能性のある進化のパターンです。国内で最初にSARS-CoV-2のゲノムシーケンスを決定した機関の1つであるHULPの研究者は、このデータを使用して、伝染のダイナミクスをよりよく理解し、ワクチン開発研究に役立つ可能性のあるウイルスの遺伝的な変異を同定するための、感染症の疫学の理解に不可欠な貴重な知見を生み出しています。
HULPの生物学者で研究者でもあるJesús Mingorance博士は、サーモフィッシャーサイエンティフィックの最新のIon AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Research Panelを使用して、SARS-CoV-2のゲノムのシーケンスを行いました。主に鼻咽頭スワブから得られた70サンプルについて、この新しいSARS-CoV-2パネルにより完全なゲノム配列が決定されました。Mingorance博士はこの情報を使用してサンプル間の多様性を調査するための系統解析を行う計画です。この解析により、この地域におけるSARS-CoV-2の起源とともに、危機の発生以降の異なる系統の進化に関する情報を提供することができます。
SARS-CoV-2データの共有
また、Mingorance博士のグループは、SARS-CoV-2とすべてのインフルエンザウイルス由来のデータの迅速な共有を促進および支援するイニシアチブであるGISAIDとデータを共有しています。情報を共有することで、まだ不足している危機初期段階の重要な情報を提供することができます。
まとめ
Ion AmpliSeq SARS-CoV-2 Research PanelはAmpliseq Designerサイトからご確認いただけます。
次世代シーケンス(NGS)を使用したコロナウイルスの解析方法、Ion AmpliSeq SARS-CoV-2パネル、実際の臨床サンプルから得られたデータなどを動画でご紹介しています。
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Reference:
[1] Borobia AM, Carcas AJ, Arnalich F, Álvarez-Sala R, Monserrat-Villatoro J, Quintana M, et al. A Cohort of Patients with COVID-19 in a Major Teaching Hospital in Europe. J Clin Med. 2020;9(6), 1733.
https://doi.org/10.3390/jcm9061733
研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。