細胞の「元気さ」、測定していますか?細胞増殖・毒性アッセイは、多岐にわたる分野の研究で重要なステップです。今回はマイクロプレートリーダーを利用したアッセイのうち、alamarBlueとPrestoBlueを用いた手法をご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・薬剤スクリーニングをしたい
・細胞の増殖アッセイをしたい
・どの試薬を選んでよいか分からない
▼もくじ
細胞増殖・毒性アッセイって?
細胞の「元気さ」を評価することは、毒性学、薬理学、分子生物学などあらゆる分野で必要になります。たとえば、ある薬物が細胞に与える影響を評価する場合、細胞の代謝反応の効率を細胞の元気さと考え、適切な薬剤濃度を検討する指標にすることが有ります。
マイクロプレートリーダーを用いた細胞増殖・毒性アッセイはいくつかの手法がありますが、今回は細胞の還元反応を検出する、Invitrogen™ alamarBlue™とPrestoBlue™試薬を用いた例を紹介します。
細胞増殖・毒性アッセイに最適なInvitrogen™ alamarBlue™とPrestoBlue™試薬って?
Invitrogen™ alamarBlue™およびPrestoBlue™試薬は、レサズリンという青色・非蛍光性の細胞透過性色素をベースとした試薬です。
生細胞内に入ったレサズリンは、赤色で強い蛍光を発するレゾルフィンに還元されます。このレゾルフィンの蛍光強度を蛍光マイクロプレートリーダーで測定し、数値化することで細胞の「元気さ」を測ります。新陳代謝が活発な細胞ではレサズリンはレゾルフィンに変換され続けるため、強いレゾルフィンのシグナルが得られます。一方代謝が落ちている細胞はレゾルフィンへの変換はあまり行われず、弱いシグナルしか得られません。レサズリンベースのアッセイは細胞溶解や洗浄ステップがないため、安定した結果を得やすいです。またシグナル強度が強くアッセイレンジが広いことも特徴の一つです。

図1. alamarBlue™、PrestoBlue™アッセイ (A)細胞内還元によるレサズリンの変化 (B) alamarBlueとPrestoBlueを用いたアッセイの流れ
alamarBlue™は最初に販売されたレザズリンベースの製品です。現在でも細胞増殖・毒性アッセイに広く使用されています。alamarBlueはPrestoBlue試薬と比較して、より長いインキュベーションが必要ですが、細胞密度が高い条件で使用することができます。一方、PrestoBlue試薬は、インキュベーション時間が短いため、迅速な測定が可能です。
まずは細胞数を検討してみよう!
まずはアッセイの直線性を評価するために、異なる濃度の細胞サンプルを黒色マイクロプレートに播種して、alamarBlueまたはPrestoBlue試薬のいずれかで処理してみました。
使用した細胞は以下の3種類です。
Jurkat(浮遊細胞)
A549(接着細胞)
U2OS(接着細胞)
それぞれの細胞を90~95%コンフルエントになるまで培養し(詳細な条件はAPPLICATION NOTEを参照)、Gibco™ TrypLE™ Express enzymeで解離し、Invitrogen™ Countess™ II 自動セルカウンターで細胞数を測定しました。
細胞数を調整してから黒色マイクロプレートに播種し、37℃で一晩インキュベーションを行いました。
・播種した細胞数(それぞれn=4で実施)
A549とU2OS:2 x 104 cells/wellから2倍希釈で7~8段階
Jurkat:4 x 104 cells/wellから2倍希釈で8段階
播種して一晩37℃でインキュベートした細胞に試薬を添加して、3時間(alamarBlue試薬の場合)または1時間(PrestoBlue試薬の場合)インキュベートしました。その後Thermo Scientific™ Varioskan™ LUXマルチモードマイクロプレートリーダーを用いて、励起波長:560 nm、蛍光波長:590 nmで測定しました。

図2. 細胞濃度とレゾルフィン蛍光強度の関係 (A)AlamarBlue、(B)PrestoBlueを用いた。
結果はalamarBlue™もPrestoBlue™も細胞数に応じた綺麗な直線性が確認されました。なお細胞株間の蛍光シグナル強度の違いは、細胞間で代謝効率が異なることに起因すると考えられます。
細胞毒性を測ってみた!
続いて細胞毒性を確認する試験に利用してみました。先の実験と同様に3種類の細胞株の細胞溶液を調製しました。
・播種した細胞数(それぞれn=4で実施)
A549とU2OS:1 x 104 cells/well
Jurkat:4 x 104 cells/well
播種して一晩37℃でインキュベートした細胞を、さまざまな濃度のamsacrine(0~100 μM in DMSO)で18時間処理しました。なお0.14%DMSOで処理したものを100%生存率のコントロールとしました。alamarBlue™もしくはPrestoBlue™を添加し、3時間(alamarBlue試薬の場合)または1時間(PrestoBlue試薬の場合)インキュベートを行った後、Varioskan™ LUXマルチモードマイクロプレートリーダーを用いて、励起波長:560 nm、蛍光波長:590 nmで測定しました。
測定データをSkanItソフトウェアで解析し、下記の様にED50を算出できます。

図3. A549細胞のamsacrine毒性アッセイ、SkanItソフトウェアで用量反応曲線を作成した。(A)AlamarBlue、(B)PrestoBlueを用いた。
また測定データをSkanItソフトウェアと、広く使用されている統計ソフトGraphPad Prismソフトウェアで解析した結果を比較してみました。細胞株ごとのED50の結果は下記の通りです。どちらも近い結果を示しており、SkanItソフトウェアの高い信頼性が確認されました。
Jurkat(白血病T細胞)の高い感受性は、amsacrineが腫瘍細胞のDNAにインターカレートする化学療法剤であり、白血病細胞に対して特に有効であるという事実に関連していると考えられます。
まとめ
・alamarBlueやPrestoBlueを利用すれば、シンプルな操作で細胞毒性・増殖アッセイを行うことが可能
・SkanItソフトウェアはデータの解析に非常に有用
細胞毒性・増殖アッセイ系の選択でお困りの方、是非alamarBlueやPrestoBlueをご検討ください!
本記事で行われた実験の詳細な条件は、APPLICATION NOTEを参照してください。
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