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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 研究者インタビュー / がん研究の最前線:デジタルPCRによるバイオマーカーの検出

がん研究の最前線:デジタルPCRによるバイオマーカーの検出

Written by LatB Staff | Published: 06.17.2025

がん研究は技術の進化とともに新たなステージに突入しています。特に定量リアルタイムPCR(qPCR)やデジタルPCR(dPCR)といった技術は、がんの診断と治療において非常に重要な役割を果たしています。今回は、スペインのマドリードにあるHospital La Paz Institute for Health Research(IdiPAZ)でがん研究を行うOlga Vera Puente博士にインタビューし、彼女の研究者への道のり、モチベーション、そして未来へのビジョンについてお話を伺いました。Olga博士は、がん研究において新しい技術をどのように活用しているのか、また彼女が直面する課題とその解決策について詳しく語ってくれました。

▼こんな方におすすめです!

  • がん研究をされている方、がん研究に興味がある方
  • デジタルPCRの活用法を知りたい方
  • 研究者を志している方、若手研究者

インタビュー動画はこちらからご覧いただけます。

インタビュー内容

Q:がん研究者への道のりについて教えてください。

A:がん研究者への道のりはちょっとした幸運による偶然の産物でした。私は女優になりたかったのですが、父がもっと実用的なことを勉強するように勧めてくれました。生物学を選び、教師になるつもりでした。しかし、初めて研究室に足を踏み入れたとき、これが自分の一生を捧げる仕事なのだと感じました。

学士研究のためにInmaculada Ibáñez de Cáceres博士に連絡を取り、彼女ががん研究を始める機会を与えてくれました。私の研究者人生は、彼女が最初のチャンスをくれたおかげだと思います。彼女の研究室で肺がんと卵巣がんのバイオマーカーの探索ついての研究をし、修士論文と博士論文を執筆しました。彼女はその後、海外でポスドクをするように私に勧めてくれました。彼女の助言に従い、フロリダのMoffitt Cancer Centerに行き、研究テーマを変更しました。マウスを用いて新しいバイオマーカーと治療ターゲットを特定する研究を行いました。5年間アメリカで過ごした後、Ibáñez博士の説得で帰国し、彼女と一緒に2回目のポスドクの助成金を取得しました。今年の初めに、彼女は一時的に研究を離れ、Experimental Therapies and Biomarkers in Cancer Research Groupの責任者に私を任命しました。

Q:研究で解決しようとしていることは何ですか?

A:現在、メラノーマの研究に焦点を当てています。メラノーマにおける非遺伝的変化の役割を調べ、バイオマーカーの候補と治療ターゲットを見つけることに興味があります。また、他のタイプのがんにも取り組んでいます。肺がん、膠芽腫、卵巣がんに焦点を当てた研究があります。これらのがん全てにおいて、病状の予測や治療を助けるバイオマーカーを特定したいと考えています。

Q:Applied Biosystems™技術はどのように研究に役立っていますか?

A:研究を始めた当初からApplied Biosystems技術を活用しています。リキッドバイオプシーおよび組織生検からバイオマーカーを特定または検証するための最高のシステムが提供されています。2012年に研究を始めて以来、microRNAの発現を研究してきましたが、技術が私たちのニーズに応じて発展してきたのを見てきました。例えば、リキッドバイオプシーでバイオマーカーを特定しようとしたとき、一部のマーカーの発現レベルが非常に低かったですが、低頻度マーカーを検出するための感度向上にApplied Biosystems™ Absolute Q™ デジタルPCRシステム※1が役立ちました。

Q:がん研究において、次世代シーケンサに加えてリアルタイムPCRとデジタルPCRを使用する利点は何ですか?

A:リアルタイムPCRとデジタルPCRは非常に感度の高い技術です。当初はApplied Biosystems™ TaqMan™ Arraysを使用していました。これらの技術の進歩は、私たちが直面するいくつかの課題に対処するのに役立ちました。例えば、リキッドバイオプシーには安定したmicroRNAがありますが、検出が難しい場合があります。Absolute Q デジタルPCR機器のおかげで、これらの低レベルmicroRNAを検出できるようになりました※2。これにより、患者の病気を正確かつ詳細にモニタリングするためのバイオマーカーを得られます。

Q:リアルタイムPCR技術についてのお考えはありますか?リアルタイムPCRを使用する利点を教えてください。

A:リアルタイムPCRはデジタルPCRと比較していくつかの利点があります。例えば、高発現のバイオマーカーを確認またはテストしたい場合、少なくとも現時点ではデジタルPCRよりもリアルタイムPCRの方が臨床での使用が容易です。高発現のバイオマーカーはリアルPCR技術でも簡単に検出できます。しかし、バイオマーカーの頻度が非常に低い場合はデジタルPCRが非常に有用です。

Q:がんのリキッドバイオプシーがcell-free DNA(cfDNA)からRNA、メチル化DNA、タンパク質バイオマーカーに発展する可能性をどう見ていますか?

A:リキッドバイオプシーがcell-free DNAからRNA、メチル化DNA、さらにはタンパク質バイオマーカーに発展することは非常にエキサイティングです。私たちの研究室では、microRNAやメチル化DNA、いくつかのタンパク質バイオマーカーから腫瘍特異的なバイオマーカーを見出し、さまざまな結果を予測することを目指しています。

Q:個別化医療におけるゲノミクスの役割が大きくなっていることについてコメントいただけますか?

A:個別化医療は15〜20年前から存在しており、毎年コミュニティとして進歩しています。ゲノミクスは、がん患者の治療効果を測定し、予測するのに役立ち、個別化医療においてますます重要な役割を果たしています。しかし、ゲノミクスがこのように役立っている一方で、特定のバイオマーカーを検出する手法は臨床の現場での使用が容易であり、技術者、看護師、または医師が結果を解釈して分析するのがより簡単で安価である可能性があります。

Q:ゲノミクスをプロテオミクスと組み合わせて、個別化医療の大きな課題に取り組むオミックスアプローチについてどう考えていますか?

A:世界中の多くの研究室が、ゲノミクス、プロテオミクス、およびその他のオミックスデータを個別化医療に統合しようとしています。私たちの研究では、ゲノムおよびエピジェネティックマーカーのパネルを使用して、膠芽腫および他の脳腫瘍の診断方法を改善しています。ゲノミクスを通じた個別化医療は、コスト、技術、および必要な人的資源を考えると、臨床で適用されるにはまだ遠いかもしれません。しかし将来的には、さまざまな病気の診断に非常に役立つ可能性があります。ただし、特にヨーロッパではプライバシーへの懸念があります。

Q:トランスレーショナルがん研究で直面する課題と、それらの課題に対処するためにApplied Biosystems技術がどのように役立っているかについて教えてください。

A:資金調達は大きな課題です。私たちの研究室には診断セクションがありますが、研究がメインです。研究は公的助成金によって支援されており、診断は病院によって部分的に資金提供されています。

現在行っている診断は膠芽腫のものです。MGMTという遺伝子のメチル化を検出するのですが、これはFDAやその他の規制機関から診断と治療効果の測定に唯一承認されているものです。これらの患者を診断するためにリアルタイムPCR技術を使用していますが、直面する困難は主にサンプルが原因です。腫瘍サンプルを取り、そこからDNAを抽出し、MGMTのメチル化を分析するための処理をします。しかし、患者をよりよくモニタリングして治療反応や再発を予測するために、血液中からバイオマーカーを検出しようとしています。まだ研究段階ですが、リアルタイムPCRとAbsolute Q デジタルPCRの両方を使用して血液中のMGMTメチル化を検出する研究を行っています。これまでのところ、結果は有望であり、リアルタイムPCRとデジタルPCRの結果は一致しています。この技術は将来、臨床に応用できると考えています。まだやるべきことはたくさんありますが、Applied Biosystems技術は、私たちがテストしているバイオマーカーに対して非常に堅牢で、特異的かつ高感度であることが示されています。これまでの結果に非常に満足していますし、興奮しています。

Q:Olga博士の研究分野およびバイオメディカル研究全般の未来に対するビジョンを教えてください?

A:30歳までに自分のDNAをシーケンスしバイオマーカーを知ることで、将来発症する可能性のある病気が特定できるようになるかもしれません。しかし、そのようなことを達成するためには、研究や技術の開発、既存の方法の改善が必要です。Applied Biosystems技術はそのような未来に向けた研究をサポートする素晴らしい仕事をしていると思います。

技術の進歩が非常に速く進んでいると感じていて、特にAIのような新しい技術にとても興奮しています。また、一部の国では、がんを早期に検出したり、治療反応を予測したりするためのリキッドバイオプシーバイオマーカーの改善に取り組んでいます。がんや他の病気を持つ患者をより良くモニタリングできるようになり、全ての人に利益をもたらすでしょう。

Q:次のバイオマーカー探索を計画したり、資金調達について考えたりしていないときは、どのように余暇を過ごしていますか?

A:余暇には山に行くことが好きです。私は両親が所有する山の家で育ちました。そこに行って自然を楽しむのが好きです。以前はギターを弾いていましたが、今はもう弾いていません。また、書くことも楽しんでいます。

Q:研究を始めたばかりの若い科学者へのメッセージをお願いします。

A:好奇心を持ち、いろいろ試してみてください。私たちの仕事には大変な時もあります。諦めたくなることや、圧倒されることもあります。しかし、自分の仕事が実際に他の人々を助け、患者に利益をもたらすものだと感じると非常に報われます。

まとめ

リキッドバイオプシーサンプルのバイオマーカー探索など、デジタルPCRのアプリケーションをまとめた資料を無償で配布しています。デジタルPCRの活用事例をぜひご覧ください。

【無料ダウンロード】デジタルPCRアプリケーションガイド

ダウンロードはこちら

※1 Applied Biosystems™ QuantStudio™ Absolute Q™ デジタルPCRシステム
※2 RT-PCR(qPCR)と比較した場合

本ブログは、英語版のインタビュー記事を日本語訳したものになります(一部変更・追記)。

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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