有害大気汚染物質の暴露は人体に深刻な健康リスクをもたらし、肺疾患、出生異常、がんの発症などを引き起こします。有害大気汚染物質の主な発生源は、化学工場、石油精製工場、石油化学工場、発電所などからの排出です。また、これらの化合物は半導体や医薬品製造施設周辺の大気中にも存在します。
ここでは当社のThermo Scientific™ MAX-iAQ™連続ガスモニタリングシステムを用いた有害大気汚染物質のリアルタイムモニタリング測定について紹介します。MAX-iAQ™連続ガスモニタリングシステムは、環境大気中の数百成分の有害大気汚染物質を同時にリアルタイムでモニタリングできるため、濃縮や前処理の操作なく、ホットスポットを発見するのに役立ちます。また、最大150 m離れた場所からでもサンプリングが可能な装置です。
有害大気汚染物質のリアルタイムモニタリングにおける課題
大気中の有害物質のモニタリングにはいくつかの課題があります。まず、分析製品は多くの異なる濃度レンジの化学物質が満足に測定できるものでなければなりません。つぎに化合物によってはppmvからpptvの濃度である許容暴露限界以下のレベルで測定できる感度が必要です。さらに、測定結果は大気中のガス(CO2、H2O、CH4)による相互干渉の影響を受けないことも重要です。Thermo Scientific™ MAX-iR™ FTIRガスアナライザーが搭載されたMAX-iAQ連続ガスモニタリングシステムはそれらの課題を解決したシステムです。

図1. Thermo Scientific™ MAX-iAQ™連続ガスモニタリングシステム
実験
ここでは、MAX-iAQシステムが多数の大気汚染物質を適切なレベルでモニタリングできる能力を評価するために、実験室の周囲の空気を15秒間隔で1時間連続測定しました。特定の分析条件によりモニターされた化合物の結果を表1に示します。各化合物の最小検出限界(MDL)は、1時間のデータの標準偏差の3倍と定義しました。これらのMDLはNational Institute for Occupational Safety & Health(NIOSH)が公表する許容暴露限界値(PEL)と比較し、PELを大きく下回っており、MAX-iR FTIRガスアナライザーが実用限界付近で要求される精度を満たしているか、或いは上回っていることを意味しています。
まとめ
MAX-iAQシステムは、大気中の多くの大気有害物質を同時に測定できる高速・高感度な分析システムです。ほとんどの有害化合物のMDLは0.1 ppm以下です。50 ppbという低い指針値を持つアルシンについても、MAX-iAQシステムの場合3 ppbまで検出できます。マルチプレクサーを利用したチャンネルあたりの標準的な測定時間は15~30秒で、MAX-iAQシステムは10分以内に全20サンプル地点の結果を得られます。そのスピードにより、工場や化学工場の従業員へ、作業環境におけるHAPs濃度の上昇をリアルタイムで即座に警告でき、詳細な履歴データは、これらの施設がHAPsへの暴露を最小限に抑えるために環境制御を行うのに使用されます。
なお、有害大気汚染物質の成分の測定方法については環境省ホームページで詳細が説明されていますのでこちらもご参照ください。
有害大気汚染物質測定方法マニュアル | 大気環境・自動車対策 | 環境省 (env.go.jp)
関連情報
製品情報 MAX-iR FTIRガスアナライザー
アプリケーションノート
有害大気汚染物質のモニタリング
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。