バイオ医薬品の製造現場では、効率的かつ高品質な精製プロセスが求められます。特に、遺伝子治療に使用されるアデノ随伴ウイルス(AAV)の製造においては、多くの試験条件を迅速に評価し、最適なプロセスを確立することが重要です。本記事では、ハイスループットスクリーニング(HTS)を活用したレジン評価の効率化について、わかりやすく解説します。
▼こんな方におすすめです!
- アフィニティクロマトグラフィー、AAVを含むウイルスベクターの精製に関心がある方
- 精製プロセスの効率化に取り組んでいる方
- AAVを使用した遺伝子治療の開発に携わっている方
ハイスループットスクリーニング(HTS)の重要性
従来のカラムを用いた複数の試験条件の検討は、実験時間とサンプル消費の観点から制約が多く、効率的なプロセス開発の妨げとなっていました。HTSコンセプトを導入することで、複数の実験条件を並行して実施できるため、時間を短縮し、クロマトグラフィー樹脂の使用量を減らすことが可能です。これにより、貴重なサンプルの消費を抑えながら、迅速なプロセス開発が実現します。
当社のThermo Scientific™ GoPure™ 96ウェルスクリーニングプレートを使用するとバッチ法で複数条件での同時評価が可能です。

バッチ法によるHTS試験の成功要因
バッチ法によるHTS試験を成功させるためには、以下のポイントが重要です。
- 液体ハンドリングの精度:正確な液体ハンドリングは結果に大きな影響を与えます。適切な機器と手法を用いて正確なピペッティングを行うことが重要です。
- 樹脂分布の精度:セルフディスペンスバッチプレートでは、ウェルに分注されている量が一貫していることを確認する必要があります。事前に必要量が分注されているGoPure 96ウェルスクリーニングプレートを使用すれば、精度の高い試験が可能です。
- 混合強度:オービタルプレートシェーカーを使用し、各ウェルの内容物が他のウェルに移らないように攪拌を制御する必要があります。
- 液体の排出方法:ウェルから液体を排出する最良の方法をケースバイケースで特定する必要があります。例えば、真空ろ過で発泡が発生する場合は、レジンとバッファーの分離に遠心を検討する方が適切です。
HTS試験の評価パラメーター
バッチ法によるHTS試験では、以下のパラメーターを評価します。
- 静的結合容量の決定:サンプル濃度、バッファー組成(導電率、pH、添加物など)、インキュベーション時間
- 中間洗浄ステップのスクリーニング:バッファー組成(導電率、pH、添加物など)
- 溶出条件のスクリーニング:バッファー組成(導電率、pH、添加物など)
- クリーニング条件のスクリーニング:バッファー組成(アルカリ/酸溶液、カオトロープなど)
HTSによる実際のケーススタディ
HTSは、Thermo Scientific™ POROS™ CaptureSelect™ AAVX 樹脂を使用したAAVの溶出条件の検討や、Thermo Scientific™ POROS™ Oligo (dT)25樹脂を使用したmRNAの結合条件の検討など、さまざまな実験に応用されています。
pHとNaCl濃度の複数条件を組み合わせて同時評価したケースでは125~250 mM NaClを含むグリシンバッファーpH 2.0で回収率の改善が示唆されました(図2)。
NaCl濃度、mRNA負荷量、結合時間の各条件の組み合わせを評価したケースでは、0.5 M NaClより高い負荷量にすることでmRNAの回収率が改善されることが示唆されました(図3)。

まとめ
いかがでしたか?
バッチ法によるHTSは、初心者にもアプローチしやすいプレートベースの樹脂スクリーニング手法です。HTSの導入により、実験時間の短縮とサンプル消費の削減が可能となり、効率的なプロセス開発が実現します。今後のAAV精製技術の進展により、さらに効率的で高品質な遺伝子治療が実現されることが期待されます。
当社では、高度なロボットプラットフォームで使用できるミニチュアカラムなどの選択肢も提供しております。リクエストフォームより、精製に関する資料請求や、お客さまの課題に対するご相談などを承っております。ぜひ、下記フォームより、お気軽にお問合せください。
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