Applied Biosystems™ TaqMan™ Gene Expression Assayには多くの設計済みアッセイが用意されており、32生物種に対して280万種類ものアッセイがあります。1遺伝子に対して複数種類設計されており、どれを選べばよいのか迷ってしまうという方も多いのではないでしょうか。
この記事では複数あるTaqMan Assayを選ぶ際に参考となる情報をQ&A形式でお伝えします。
▼もくじ
Assay IDからわかる情報とは?
TaqMan Assayにはそれぞれ異なるAssay IDがつけられています。このAssay IDには意味があり、Assay IDから動物種やデザイン領域が分かります。
Assay IDの最初の2文字は生物種を表しています。Hsであればヒト(Homo sapiens)、Mmであればマウス(Mus musculus)、Rnであればラット(Rattus norvegicus)というように最初の2文字を見れば対象の動物種が分かります。
続く8桁の数字は任意に割り当てられており、数字が大きいと新しいデザインになります。
末尾の英数字は、デザイン領域を表しています。RNAのみを検出するのか、DNAも検出するのかを知ることができます。
・_m1:プローブがエクソンジャンクション上にデザインされており、ゲノムDNAは検出されません。RNAを測定される場合は、ゲノムDNAが検出されないように_m1のアッセイの使用を推奨します。
・_s1:エクソン上にプライマーおよびプローブがデザインされており、ゲノムDNAを検出します。このアッセイを用いてRNAを測定される場合はDNase処理を推奨します。
・_g1:プローブがエクソンジャンクション上にデザインされている、または1つのエクソン上にプライマーおよびプローブがデザインされています。偽遺伝子(pseudo gene)やイントロンが短い場合に、ゲノムDNAを検出する可能性があるため、_s1と同じく、RNAを測定される場合はDNase処理を推奨します。
・mH,_sH,_gH:相同性の高い遺伝子ファミリーのある特定の転写産物に対してデザインされており、ターゲット遺伝子から10~15Ct値の差(同一コピー数が存在した場合1,000~ 30,000倍の差に相当)で類似の転写産物を検出する可能性があり、特異性が完全には保たれていないことを示します。
Best coverage、Most citationsとは?
「Best coverage」や「Most citations」と表示されているAssayがあります。
Best coverage:Probeの設計位置、製品在庫の有無、増幅産物長、オフターゲットの検出有無、などの条件を踏まえて、もっとも推奨されるAssayに表示されています。
Most citations:論文への引用数から推奨のAssayに表示されています。
Assayの設計位置にこだわりがない場合は、Best coverageもしくはMost citationsがおすすめです。
Best coverageの選定基準は以下の項目が含まれています。
・類似配列を持つ遺伝子産物(相同性遺伝子)を検出しません。
・エクソンジャンクションをはさむように設計しており、ゲノムDNAは検出されません
・Inventoried(在庫あり)のため、早い納期で納品できます。
・短いアンプリコン設計のため、より高いPCR効率となります。
・オフターゲット配列を検出しないため、ターゲット配列の反応特異性が向上します。
・複数の遺伝子配列と一致しないため、特異性が高くなります。
特定のスプライシングバリアントのみを検出したいときは?
特定のスプライシングバリアントだけを検出したい場合に参考となるのがGenomic mapです。検索結果の画面でAssay IDをクリックしますとGenomic Mapが表示されます。
例としてHs01561768_m1について見ていきます。
Genomic Mapの上部にグレーで表示されるAssayにマウスを合わせると、検出されるRefseqが黄色でハイライトされます。下の例からは、矢印で示したAssayが3番目に表示されているNM_007299.3のみを検出することが分かります。
Genomic Mapに続いて表示されるAssay Detailsでも検出するバリアントのRefseqやGenBank mRNAを確認できます。
まとめ
TaqMan Gene expressionは数多くの設計済みアッセイがあり、利用することで設計や条件検討にかかる時間を減らすことができます。ぜひご自身の目的にあったアッセイを探してみてください。
https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/pcr/real-time-pcr/real-time-pcr-assays/taqman-gene-expression.html
ご自身の目的にあったアッセイがない場合は、カスタム品もあります。
ターゲットの配列を入力していただくと、プライマーとプローブが設計されます。
https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/4332079
この記事ではよくある質問をQA形式で紹介しました。
検索方法や詳細情報の確認方法につきましてはオンラインオーダーマニュアルをご覧ください。
https://www.thermofisher.com/content/dam/LifeTech/Documents/PDFs/jp/WebOrderManual/search-guide-taqman-ge.pdf
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