メタゲノミクスと骨董品の大理石像がどのように関連するのか?と疑問に思われるかもしれません。この二つの単語を同じ文章の中で見つけることはほとんどありません。しかし、Annals of Microbiologyに最近発表された論文では、メタゲノミクスアプローチを使用して、密輸された骨董品の微生物コミュニティ(細菌叢)を検査する方法が強調されています。
メタゲノミクスとは:培養を介さず、環境サンプルから直接分離されたゲノムDNA(メタゲノム)を扱う研究分野で、さまざまな微生物由来のDNAが混在した状態で塩基配列の解析を行います。
密輸された可能性のある大理石像の起源は?
Annals of Microbiologyに発表された論文のタイトルは「A time travel story: metagenomic analyses decipher the unknown geographical shift and the storage history of possibly smuggled antique
marble statues (タイムトラベルストーリー:メタゲノム解析により、密輸の可能性があるアンティークの大理石像の未知の地理的変化と保管履歴を明らかにした)」です。この研究の目的は、各像の保管履歴を再構築し、それらの間に考えられる関係を推測し、地理的変化を解明することでした。
この研究では、起源が不明な3つの密輸された大理石像(男性および女性の胴体部分と小さな頭部)のメタゲノム解析が行われています。
大理石像の地理的起源の推定
研究チームは、各大理石像のマイクロバイオーム(微生物叢)は非常に特徴的で、それらの保管とさまざまな地域の移動の履歴を反映していると結論付けました。
・1つの男性の大理石像は、アジアにのみ生息するタイワンスギと呼ばれる木のDNAの存在により、その地理的起源を特定できました。
・他の2つの像は、好塩性細菌と耐塩性細菌の混合物が含まれており、乾燥、半乾燥、および海洋環境での存在を示しています。
Ion Torrent次世代シーケンサによるメタゲノム解析
この研究では、微生物種を特定するために、Ion Torrent次世代シーケンサをプラットフォームとして使用し、Ion 16S™ Metagenomics Solutionを用いて原核生物の16SリボソームDNA(rDNA)を解析し、真核生物の18S rDNA、および真菌のInternal Transcribed Spacer regions(内部転写領域)を解析しています。
詳細はAnnals of Microbiologyの論文をご覧ください。
Reference: Piñar G, Poyntner C, Tafer H et al. (2019) Ann Microbiol. https://doi.org/10.1007/s13213-019-1446-3
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