品質試験に関する専門用語は難しくて、いまさら聞けないと困ったことはありませんか?このブログでは、基礎用語を学ぶとともに、知っておくと便利な情報をお届けしています。
さて、細胞を用いたバイオ医薬品や再生医療等医薬品の製造では、品質管理の観点からマイコプラズマ否定試験の実施が求められます。リアルタイムPCRを用いた核酸増幅法を用いることで、マイコプラズマ汚染の有無を迅速で高感度に検出できます。また、Applied Biosystems™ MycoSEQ™マイコプラズマ検出システムでは、ポジティブコントロールと内在性コントロールの働きにより、抽出阻害やPCR阻害の有無を確認することができ、偽陰性や偽陽性のリスクを排除できます。
今回は、Applied Biosystems™ MycoSEQ™ Plus Kit付属のコントロールを例にして、これらが試験結果の正確性において、いかに重要な役割を果たすのか解りやすく紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・医薬品の品質試験でマイコプラズマ否定試験を実施している方
・マイコプラズマ否定試験のトラブルシュートに興味をお持ちの方
▼もくじ
ポジティブコントロール:Discriminatory Positive Control(DPC)
ポジティブコントロールはその名の通り、必ずポジティブとなる(シグナルが得られる)サンプルで、サンプルでの測定結果が陰性であっても、ポジティブコントロールが陽性であれば、そのアッセイ自体は問題なくワークしていたということを示し、陰性結果の正当性を実証するものです。
一般的にマイコプラズマ否定試験では、マイコプラズマゲノムDNAをポジティブコントロールとしてリアルタイムPCR試験を行います。しかし、このマイコプラズマゲノムDNAが意図せずサンプル溶液に混入した場合、偽陽性結果になる可能性があります。そのためMycoSEQ Plus Kitにはマイコプラズマと識別可能なポジティブコントロールが付属しています。
キット付属のポジティブコントロール(DPC)の特徴
- マイコプラズマアンプリコンから作成されたポジティブコントロール
- FAM™とVIC™プローブのターゲット配列を持つ
- VICプローブの検出により、偶発的なポジティブコントロールの混入とマイコプラズマ汚染を識別可能
内在性ポジティブコントロール:Internal Positive Control(IPC)
内在性ポジティブコントロール(IPC)は、PCR試薬中に含まれる人工配列でPCRが問題なくかかっているか確認するために用いられます。
試験に使用されるサンプル溶液にPCR阻害物質が多く含まれていた場合、PCR阻害が生じることがあります。そこで、MycoSEQ Plus Kitには、PCR阻害の有無を確認するために、PCR試薬中にIPCを含みます。IPCはすべてのPCR反応ウェルで同量添加され検出されるため、IPCの結果を確認することでPCR阻害による偽陰性の可能性を排除できます。
内在性ポジティブコントロール(IPC)の特徴
- PCRアッセイミックスに含まれる人工配列
- NEDプローブのターゲット配列を持つ
- サンプル溶液とPCRポジティブコントロールのIPCを比較することでPCR阻害の有無を確認可能
結果の例
キット付属のDPCが添加されたサンプルでは、Mycoplasma(FAM)とDPC(VIC)とIPC(NED)の増幅曲線が立ち上がります。
マイコプラズマが混入したサンプルでは、Mycoplasma(FAM)とIPC(NED)の増幅曲線が立ち上がります。DPC(VIC)の増幅曲線がないことから、ポジティブコントロールの混入はないことが確認できます。
まとめ
いかがでしたか?
当社のMycoSEQマイコプラズマ検出システムが、信頼性の高い結果を提供できるのも、マイコプラズマと識別可能な独自のポジティブコントロールや内在性ポジティブコントロールの活躍によるものであり、以下のような効果が得られることが解りました。
- MycoSEQ Plus Kit付属のポジティブコントロール(DPC)を使用することで、ポジティブコントロールの偶発的な混入による偽陽性結果のリスクを排除できる
- 内在性ポジティブコントロール(IPC)を確認することで、PCR阻害による偽陰性結果のリスクを排除できる
- 今回ご紹介したコントロールにより、マイコプラズマ否定試験において正確性の高い試験結果を得られる
今回ご紹介しましたMycoSEQ Plus Kitのアプリケーションノート(英語)では、より詳しいデータをご確認いただけます。ぜひダウンロードしてご覧ください。
MycoSEQ Plus Kitのアプリケーションノート
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。