今回は精度よく吸光度を測定するための測定環境についてご案内します。NanoDrop分光光度計は数µLのサンプルでも吸光度が測定できますが、試料をのせる「台座」の状態が重要になります。日々のメンテナンスやサンプル特性に合わせたクリーニングを実施することで安定した吸光度測定が可能になります。
▼こんな方におすすめです!
・吸光度測定を実施されている方
・微量分光光度計をご利用・ご検討の方
Webサイト(thermofisher.com/jp-nanodrop-setup)にある動画資料も併せてご参照ください。
基本的な台座のクリーニング操作
Thermo Scientific™ NanoDrop™ One / OneCなどに代表されるNanoDrop分光光度計ですが、アームを上げると上下2カ所に台座があり、下部の台座に試料を乗せ、アームを下ろして測定を実施します(図1参照)。

図1. NanoDrop One / OneCの台座
上下の台座部分の定期的なクリーニングの実施は安定した吸光度測定を行うために有効な手段の1つです。
まずは測定開始前と測定中のサンプル間で実施できる簡易的なクリーニング操作についてご案内します(図2参照)。
① : アームを上げます
② : 下部台座をきれいなラボペーパーで拭きます
③ : 上部台座もきれいなラボペーパーで拭きます
この操作のみで台座を正常に保つことが可能です。台座部分の材質はステンレススチールからなり、薬剤耐性も高く、ラボペーパーで強く清拭しても問題ございません。ただし、注意点としまして上部台座の清掃時には必ずアーム部分を押さえて清拭をお願いしています。これはアーム部分を後ろから押さえることで清拭によるアーム部分への過度な負担を軽減することが可能だからです。

図2. 台座部分のラボペーパーによる清拭操作
次は測定終了後に推奨する台座クリーニング方法です。
サンプル測定後は図2でご紹介したラボペーパーによる清拭(①~③)の操作後、蒸留水を用いてクリーニングします(図3参照)。
④ : 下部台座に蒸留水を2-3 µL乗せます
⑤ : アームを下ろして2~3分静置します
⑥ : 下部台座をきれいなラボペーパーで拭きます
⑦ : 上部台座をきれいなラボペーパーで拭きます

図3. 測定終了後の簡易的な台座クリーニング
測定終了後にこの操作を実施することで台座の状態を常に正常に保つことができ、安定した吸光度測定を実現します。主に核酸サンプルなど水、TEなどの溶媒で希釈されたサンプルを測定した後は、上記の簡易的なクリーニングを実施いただければと思います。
測定開始時にも図3に示す蒸留水を用いた台座クリーニングを実施いただくことも推奨しています。前回の測定後にクリーニングを実施していなかったとしても、これにより台座環境の整備を整えられますので、より安定した測定を実現します。
まとめ
今回は安定した吸光度測定のための簡易的な台座クリーニング法を紹介しました。日々の測定において台座のクリーニングを実施いただくことで、常に台座の状態を良好に保て、安定した吸光度測定を可能にします。
なお、今回ご案内した台座メンテナンスはNanoDropシリーズ共通で実施いただけます。次回はより高度な台座クリーニング方法についてご紹介いたします。
このシリーズではNanoDrop微量分光光度計による吸光度測定に関わる情報やTipsをご案内していく予定です。以下リンクより「NanoDrop」に関連するブログ記事をご覧いただけます。
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/tag/nanodrop/
NanoDrop One / OneC微量分光光度計について新しく動画マニュアルをご用意しています。Webサイト(thermofisher.com/jp-nanodrop-setup)にある動画資料も併せてご参照ください。
またNanoDrop微量分光光度計シリーズにご興味がおありのお客さまは以下リンクよりデモのご依頼も可能ですのでご活用いただければと思います。
連載NanoDrop道場
第1回 吸光度測定による夾雑物の影響を考えよう!
第2回 いろいろな核酸サンプルの吸光度を測定しよう!~PCR産物~
第3回 いろいろな核酸サンプルの吸光度を測定しよう!~cDNA産物~
第4回 いろいろな核酸サンプルの吸光度を測定しよう!~分解産物~
第5回 測定環境を整えよう! ~台座メンテナンス・基礎編~
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。