今回も前回に引き続き台座のメンテナンスについてご案内します。前回は台座に軽微な汚れがある際の最適なクリーニング方法についてご案内しました。しかし強固に固着した台座汚れは塩酸を用いたクリーニング法でも十分なクリーニング効果を期待できないこともあります。
そこで今回はより強力なクリーニング方法についてご案内します。
▼こんな方におすすめです!
・吸光度測定を実施されている方
・超微量分光光度計をご利用・ご検討の方
Webサイト(thermofisher.com/jp-nanodrop-setup)にある動画資料も併せてご参照ください。
台座状態の確認方法
塩酸による台座クリーニングでも安定した吸光度測定が困難な場合、強固に固着した台座汚れがある可能性があります。
台座の状態を簡易的に確認する方法として、下部台座に蒸留水を2~3 µL乗せ、台座上に形成される「液滴」から判断できます。台座の状態が良好な場合、下部台座に乗せた蒸留水はきれいな「液滴」を形成しますが、台座上に強固な汚れが存在する場合は「液滴」を形成できず、台座上にブロードに広がる様子が確認できます(図1参照)。
下部台座に乗せた蒸留水が形成する「液滴」の程度を確認し、「液滴」が十分に形成されない場合、より強力なクリーニングを実施します。
強力な台座クリーニング方法 ~バッファリング法~
強力なクリーニング方法として「バッファリング」という方法があります。この方法は特段クリーニング試薬を必要とすることがない方法で比較的簡易に実施可能なクリーニング方法です。
実施方法は前回の簡易的なクリーニング方法でご案内した方法と同じ方法で実施します(図2参照)。
① アームを上げます
② 厚く折りたたんだきれいなラボペーパーで50回以上下部台座を強くこすります
③ 同様に上部台座も同じように50回以上強くこすります
④ 2~3 µLの蒸留水を下部台座に乗せます
⑤ アームを下ろし2~3分静置します
⑥ きれいなラボペーパーで下部台座を拭きます
⑦ きれいなラボペーパーで上部台座を拭きます
簡易的なクリーニングと方法は同じですが、バッファリング法は、上下の台座を50回以上強くこすることで、固着した汚れを物理的に研磨し、再度蒸留水でクリーニングする方法です。複数回にわたり強くこする作業を行うため、下部台座周囲の黒いダイアフラムを誤って擦らないようにすることと、上部台座のクリーニングの際に必ずアームを押さえて実施する必要があります。簡易的な研磨法となりますが、固着した汚れの種類によっては有効な方法となります。バッファリング後に再度図1の方法で台座状態を確認し、台座状態が良好な状態にあるかを確認してください。
強力な台座クリーニング方法 ~PR1研磨剤の使用方法~
バッファリング法でも良好な台座状態を得られない場合、専用の研磨試薬であるPR-1研磨剤を用いて台座のクリーニングを実施します。
本製品は研磨成分を配合した研磨剤とアプリケーターが付属する製品となります。
本製品の使用方法については以下の通り実施いただきます(図3参照)。
① PR-1研磨剤を開封します
② 付属アプリケーターに適量のPR-1研磨剤をとります(用いる研磨剤はごく少量)
③ 下部台座および上部台座にアプリケーターを用いてPR-1研磨剤を薄く塗布します
④ そのままの状態で30秒程度放置しPR-1研磨剤を乾燥させます
⑤ 四角に折ったきれいなラボペーパーを用意します
⑥ 下部台座をラボペーパーでよくこすりPR-1研磨剤をふき取ります
⑦ ラボペーパーに黒い汚れが付着しなくなるまで十分にふき取ります
(通常3回程度ふき取ることで黒い汚れはつかなくなります)
⑧ 同様に四角く折ったきれいなラボペーパーを用意し上部台座をよくこすり、
ラボペーパーに黒い汚れが付着しなくなるまで十分にふき取ります
(上部台座を清掃する場合は必ずアームを押さえて実施ください)
⑨ 2~3 µLの蒸留水を下部台座に乗せます
⑩ アームを下ろして2~3分静置します
⑪ 下部台座および上部台座をふき取ります
この方法は最も強力なクリーニング法となり、強固に固着した汚れについても効果を発揮します。クリーニング後は再度図1の台座状態の確認を実施し、台座状態が良好であるかご確認ください。ただクリーニング後のPR-1研磨剤のふき取りが不十分な場合、台座環境が良好化しないこともあります。PR-1研磨剤については、四角く折ったラボペーパーで黒い汚れが付かなくなるまで十分にふき取りを実施してください。台座の側面にPR-1研磨剤が残ることもありますので注意して実施するようお願いします。
まとめ
今回で台座のメンテナンスについてのご案内は最後になります。日々のメンテナンス以外に、測定に用いるサンプルの特性や、定期的な台座状態の確認や、必要に応じて高度なクリーニングを実施いただき、ご利用いただくことを推奨します。台座の環境が良好であれば、測定誤差を小さくすることができ、精度よく安定した吸光度測定が実現します。
このシリーズではThermo Scientific™ NanoDrop™微量分光光度計による吸光度測定に関わる情報やTipsをご案内していく予定です。以下リンクより「NanoDrop」に関連するブログ記事をご覧いただけます。
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/tag/nanodrop/
NanoDrop One / OneC微量分光光度計について新しく動画マニュアルをご用意しています。Webサイト(thermofisher.com/jp-nanodrop-setup)にある動画資料も併せてご参照ください。
またNanoDrop微量分光光度計シリーズにご興味のユーザーさまは以下リンクよりデモのご依頼も可能ですのでご活用いただければと思います。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。