今回は機器が性能内で十分に機能しているかを確認する性能評価の正しい測定方法についてご案内します。Thermo Scientific™ NanoDrop™ One / OneC微量分光光度計を対象として性能評価検証試薬であるPV-1検証試薬を用いて実施します。PV-1検証試薬は吸光度既知の化学物質からなる標準試薬であり、10回の連続測定による基準吸光度の測定正確性および再現性を評価する試薬です。ただ、正しく利用できていない場合、正確な性能評価ができないこともあります。
今回は正しい性能評価方法の実施と注意点についてご案内します。
▼こんな方におすすめです!
・吸光度測定を実施されている方
・超微量分光光度計をご利用・ご検討の方
Webサイト(thermofisher.com/jp-nanodrop-setup)にある動画資料も併せてご参照ください。
PV-1検証試薬の取り扱い方法
吸光度既知の化学物質からなる標準試薬であるPV-1検証試薬は試薬が入ったアンプル瓶とCertificateが付属する製品となります。
本製品に付属するアンプル瓶に含まれるPV-1検証試薬は、使用後の保管や1.5 mL tubeなどに分注して使用することを推奨しておりません。このような操作は製品Lotごとに規定された吸光度に影響する可能性があり、正確な性能評価ができないためご注意ください。
本製品は正確な性能評価のため、開封後1時間以内に使用いただくことを推奨しております。
またPV-1検証試薬による性能評価については実施前に必ず台座をクリーニングしてからご使用ください。台座に汚れがある状態では正確な性能評価ができません。
台座のクリーニング法に関しましては以下のブログ情報をご参考ください。
連載NanoDrop道場 第5回・第6回・第7回
性能評価検証の実施について
PV-1検証試薬による性能評価検証は以下の手順で実施します(図1参照)。
① NanoDrop One / OneC微量分光光度計本体のHome画面下部の「診断」機能をクリック
② 「Performance Verification」を選択
③ Target#1 AbsおよびTarget#2 Absに使用するPV-1検証試薬のLotごとに指定された吸光度情報を入力
④ 吸光度情報は付属するCertificateまたはアンプル瓶 側面に記載があるLot指定の吸光度情報を確認
⑤ 吸光度情報を入力して「完了」をクリック
⑥ 下部台座に1 µLのPV-1検証試薬を乗せる
⑦ アームを下ろして測定
⑧ 下部上部の台座をふき取る
⑥~⑧を9回繰り返し10回連続で測定を実施
10回の連続測定が終了すると以下の表示が画面上に表示されます。
左側の画面表示はNanoDrop One / OneC微量分光光度計が性能内で機能していることを示します。
右側の表示は装置に何らかの問題が生じている可能性を示します。または台座状態が良好ではなく、正確に測定ができていなかった可能性を示唆します。右側の表示が出た場合、PV-1検証試薬を2 µL使用して再度検証を実施します。
再度、2 µLを使用して左側の画面が表示された場合、台座状態が不良であることが示唆されますので、台座の清掃を実施してください。
2 µL使用でも右側の画面表示が再度表示された場合、装置に何らかの問題が生じている可能性が高いと示唆されますので弊社までお問い合わせください。
検証結果の見方
測定結果は以下の通り表示されます(図2参照)。
使用したPV-1検証試薬のLot規定の吸光度情報(Target Absorbance)、10回の測定吸光度の平均情報(Average Absorbance)、正確性情報(%Error)、再現性情報(Standard Deviation)などを確認できます。
これらの情報はNanoDrop One / OneC微量分光光度計での測定で調整される各光路長(1 mm/0.2 mm/0.1 mm/0.05 mm/0.03 mm)の情報として表示されます。各光路長で正確性・再現性情報の基準値を設けており、これらの基準値を満たすことで機器が性能内で機能していることを保証します。
図2の上のデータは基準値を満たした検証例になります。各光路長で測定した吸光度は規定された吸光度と比較し正確性が高く、連続測定での再現性も高いことが確認できます。
一方図2の下のデータは基準を満たせなかった検証例となります。再現性はある程度担保されているものの、各光路長で規定された吸光度と測定した吸光度が乖離していることから正確性情報が基準を満たしていないことが確認できます。
まとめ
今回はNanoDrop One / OneC微量分光光度計が性能内で十分に機能しているかどうかを確認する方法としてPV-1検証試薬を用いたメンテナンスについてご案内しました。定期的な性能評価を実施いただくことでNanoDrop One / OneC微量分光光度計が性能内で機能しているかどうかを確認でき、得られる吸光度データの信頼性向上が期待できます。
性能評価において、推奨は6カ月ごとの実施を推奨としています。もしくはこの期間内であっても 台座の洗浄を実施しているにも関わらず測定結果が安定しない場合、実施いただくことで機器の状態を把握できます。
このシリーズではThermo Scientific™ NanoDrop™微量分光光度計による吸光度測定に関わる情報やTipsをご案内していく予定です。以下リンクより「NanoDrop」に関連するブログ記事をご覧いただけます。
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/tag/nanodrop/
NanoDrop One / OneC微量分光光度計について新しく動画マニュアルをご用意しています。Webサイト(thermofisher.com/jp-nanodrop-setup)にある動画資料も併せてご参照ください。
またNanoDrop微量分光光度計シリーズにご興味のユーザーさまは以下リンクよりデモのご依頼も可能ですのでご活用いただければと思います。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。