初心者でも安心!簡単にできる発現ベクターの作り方:人工遺伝子合成サービスの利用法

タンパク質発現実験には発現ベクターが欠かせませんが、一から作るとなると、かなりの手間と経験が必要です(図1)。

図1. 一般的な発現ベクター構築の流れ

研究対象の遺伝子が発現している組織・細胞からRNAを抽出するところから始めて発現ベクターができ上がるまで、エキスパートが時間を気にせず作業を行い、何もトラブルがなくても1週間程度はかかります。もし、複雑な作業工程の中のどこかでつまずくと、数週間から月単位の貴重な時間を浪費してしまうこともあります。また、後半のクローニング・プラスミド調製のステップでは大腸菌を使います。普段ラボで大腸菌を扱われていない場合は、立ち上げだけで数カ月かかってしまうこともありそうです。そもそも、組織・細胞など目的遺伝子のPCRの鋳型となる材料が手に入らない場合などお手上げです。

本ブログでは、これらの問題を全て解決できる、とっておきの方法をご案内します。
以下に一つでも当てはまる場合は特におすすめです。

  • クローニングは初めて・久しぶり
  • クローニングは手間なのでしたくない
  • 材料(RNA、DNA)が手に入らない
  • ラボで大腸菌を扱えない・扱いたくない
  • どのベクターを選べばいいかわからない

人工遺伝子合成サービスを利用した発現ベクターの作成方法

とても手間がかかる発現ベクター作成も、InvitrogenTM GeneArtTM 人工遺伝子合成サービスを利用すれば簡単です。

作業工程はたったの6ステップです。

  1. 合成したい配列(遺伝子など)を入力
  2. (オプション)最適化 ―★推奨
  3. ベクターを選択
  4. (オプション)プラスミド精製スケールを選択
  5. オーダー
  6. 到着を待つ

この6つのステップについて以下に簡単に説明します。

1. 合成したい配列(遺伝子など)を入力

オーダーサイトにログインし、発現させたい遺伝子配列を入力します。公共データベース(RefSeqなどのコーディングシーケンス)の情報をそのままコピー&ペーストするだけでも大丈夫です。コザック配列、融合タグ配列なども自由に付けられます。

図2. オーダーサイトの配列入力画面

2. (オプション)最適化 ―★推奨

最適化したい生物種をリストから選び、最適化したい領域(読み枠、ORF)を指定するだけです。追加料金はかかりません。発現量アップだけでなく合成難易度も下げられ、価格の低下、納期短縮も期待できますので是非ご検討ください。最適化が不要な場合、塩基配列を変えたくない場合はこのステップをスキップしてください。

図3. オーダーサイトの最適化画面(Optimizeタブ)

最適化とは、主に発現させる生物種のコドン使用頻度に合わせてアミノ酸配列を変えずに塩基配列を変える手法です。mRNAの二次構造形成などその他複数のファクターも考慮しており、発現レベルのアップが期待できます。詳しくはこちらのリンクをご覧ください。なお、例えばヒトの遺伝子をヒト由来の培養細胞で発現させる場合においてもおすすめです。発現レベルが上がった例も多いですし(参考論文)、人工遺伝子合成の難易度も下げられるため合成成功率が上がり、価格が安くなることもあります。現在44種の生物種がリストアップされています(総合マニュアルの13ページ参照)。もしリストにない生物に対して最適化されたい場合はテクニカルサポートにご相談ください。価格は割高になりますが、コドン使用頻度情報があれば通常対応可能です。

3. ベクターを選択

ベクターリストから発現用ベクターを選択できます。ベクターを選ぶだけの場合と、ベクターのどこに合成配列を挿入するかを指定できる場合があります。

図4. オーダーサイトのベクター選択画面(Reviewタブ)

図4. オーダーサイトのベクター選択画面(Reviewタブ)

発現ベクターを選択後、以下のようなベクターマップをご確認いただけます。

図5. Review画面で確認できるベクターマップの例

図5. Review画面で確認できるベクターマップの例

現在合計72種の発現ベクターが登録済みで(総合マニュアルの14ページ参照)、その中から自由に使いたいものを選択できます。

  • 哺乳類発現用:15種
  • 抗体発現用ベクター(ヒト由来細胞、CHO細胞発現用):28種
  • 酵母発現用:4種
  • 昆虫細胞発現用:5種
  • 大腸菌発現用:16種
  • 無細胞発現用:4種

その他、お手元にお持ちのベクターもご利用いただけます。詳しくは総合マニュアルの16、17ページをご覧ください。さらに、未登録の当社のベクターもご利用いただけます(Invitrogen™ TOPO™ ベクターなど、一部ご利用いただけない場合もあります)。ご希望の場合はテクニカルサポートにご相談ください。なお、たくさんあり過ぎてどのベクターにするか迷われた場合も、テクニカルサポートにご相談ください。

4. プラスミド精製スケールを選択

お届けするプラスミド量を増やすことができます。ご指定がなければ分子生物学グレード(PCRや制限酵素カットには使えますが、トランスフェクションには向きません)のものを5 µgお届けします。ご希望であればトランスフェクショングレードのプラスミドを大量精製してお届けできます。そのままトランスフェクションに使えますので、ラボで大腸菌を扱えない場合、扱いたくない場合は特におすすめです。分子生物学グレードのプラスミド5 µgをご希望の場合は、このステップをスキップしてください。

図6. オーダーサイトの追加精製サービスご依頼サイト(Orderタブ)

図6. オーダーサイトの追加精製サービスご依頼サイト(Orderタブ)

5. オーダー

オーダー前に価格・予測合成期間(営業日)を確認できます。

図7. カート内(一例)

図7. カート内(一例)

6. 到着を待つ

Orderタブ、カート内で予測合成期間(営業日)をご確認いただけます。毎回配列によっては100%予測通りにいかないこともありますので目安としてご理解ください。到着をお待ちいただく期間ですが、例えば予測合成期間が10 Business Daysの場合は、合成期間が週末を入れて2週間程度、輸送に1週間程度で、3週間程度となります。お待ちいただいている間は他の作業を行えますので効率的です。

以上たったの6ステップで完了です。

なお、詳しいオーダーマニュアル、および簡単にまとめたオーダーガイド、よく使われるベクターについてまとめたものなど(以下)を準備しています。

  • GeneArt Instant Designer補足マニュアル:アミノ酸配列を用いてオーダーする場合
  • GeneArt Instant Designer補足マニュアル:pcDNA™ 3.4-TOPO™ベクターを利用する場合
  • GeneArt Instant Designer補足マニュアル:pcDNA™ 3.1+ベクターを利用する場合

気になる価格(希望小売価格)は?

価格は合成代金(28円/bp~、長さ・合成難易度などによって価格は変わります)とクローニング代金(発現ベクターの場合は6,500円、13,000円の2パターンです。ベクターの種類・配列の合成難易度で決まります)で算出されます。

詳しくは価格表をご覧ください(左リンクのGeneArt Instant Designer参考価格)。

例えば720 bpの遺伝子(合成難易度が高くないもの)をpcDNA 3.4-TOPOベクターに入れた場合の価格は以下です。
28 × 720 + 6500 = 26,660円(税抜)

追加精製サービス(Midiprep、予測収量100 µg程度)を付けた場合は、以下の価格になります。
28 × 720 + 19700 = 39,860円(税抜)

そもそも作り方は?

化学合成した一本鎖DNAオリゴをPCRで繋げて作ります。プライマーダイマーをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。

図8. 人工遺伝子合成のストラテジー(イメージ)

図8. 人工遺伝子合成のストラテジー(イメージ)

できた二本鎖DNA断片をベクターにライゲーション→クローニング→プラスミド精製→配列確認したものをお届けします。一方、途中でできる二本鎖DNA断片そのままをお届けするサービスが、InvitrogenTM GeneArtTM Strings DNA Fragments合成サービスです。クローニングの材料、PCRの鋳型などに便利です。

こんなこともできます!

  • 変異体作製:抗体の結合活性変化や酵素の機能改変を目的とした変異体作製が可能です。
  • 入手困難な配列の合成:病気の原因になる変異遺伝子やウイルス配列など入手が困難なものも多いと思います。それらも配列が分かれば合成可能です。ただし、合成予定配列についてバイオテロなどへの悪用を防ぐためにチェックを行っています。該当すると思われた場合オーダー後にこちらから連絡させていただくことがありますがご了承ください(いくつかの書類にご署名いただいたり、諸経費が発生し価格が高くなったり、お受けできない可能性もあります)。
  • 融合タグ配列:目的遺伝子の上流、下流に融合タグ配列を付けるのも自由です。
  • ポジティブコントロール:蛍光タンパク質遺伝子などを挿入したベクターを作れます。
  • ネガティブコントロール:空ベクターを一緒にお付けできませんが、100 bp以上の適当な配列を同じ発現用ベクターに挿入したものでしたら作ることができます。

おわりに

長年クローニングに関わってきましたが、近年クローニングフリー、大腸菌フリーのラボが増えているようです。組み換え実験を行えないラボもありますし、大腸菌を使うと嫌がられるケースもあるようです。寂しく感じることもありますがこれも時代の流れでしょうか。

そんな状況ですので、発現ベクターが急に必要になった場合は、無理せずに人工遺伝子合成サービスをぜひご検討ください。

なお、大腸菌ワークと同様に慣れないとWebからのオーダーも面倒で気が重いものです。そんな時はお気軽に当社テクニカルサポートチームにご相談ください。一度試したらとても簡単なことが分かっていただけるはずです!

▼テクニカルサポート
電話番号:03-4520-5288 Eメール:jptech@thermofisher.com

関連ブログ:プラスミドベクターについて知りたい場合(第4回まであります)

その他無料のお役立ち資料

ベクターマップの読み方ガイド 無料ダウンロード

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Protein Expressionハンドブック 無料ダウンロード

タンパク発現の実験を検討している方や、詳細情報を確認したい方にうってつけのハンドブックです。

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