近年、がんや希少疾患の治療に向けて再生・細胞医療が注目を集めています。しかし、低分子医薬品とは異なり、現在の細胞製造では人作業が主流となっており、いくつかの課題が浮き彫りになっています。具体的には、製造費用と品質管理にかかるコストの増加、人材確保の難しさ、操作の煩雑さによる作業者間の差異、開放系作業によるコンタミネーションリスクが挙げられ、その結果品質を確保した細胞製造を困難にさせています。これらの課題を解決するためには、自動化や機械化による安定的な製造手法の確立が求められています。
このブログでは、現在ニーズが高まっている、閉鎖系自動化システムに関して3回に分けてご紹介します。第1回は閉鎖系自動化装置の概要についてお話します。
▼おすすめの読者
- 閉鎖系自動細胞処理装置を探している方
- 開放系の手作業を閉鎖系、自動化したいと考えている方
- 多品種少量の製造に対応できる設備を探している方
- 細胞医療、遺伝子治療の研究者プロセス開発担当者
▼もくじ
1.「細胞製造プロセスの自動化」「閉鎖系」とは?
再生・細胞医療で使用される細胞製剤の製造は現在も手作業で行われていることが多く、作業者や企業の経験知や熟練度に依存しがちです。そのため、均質な細胞の調製が難しく、製造技術が属人化している課題があります。さらに、自家細胞療法では患者自身の細胞が原料となるため、患者検体の差による変動要因も加わります。細胞製造従事者の確保や教育にも時間を要します。
品質が安定した細胞を安価に多品種かつ少量から大量のスケールに対応して製造するためには、現在作業者に依存している製造プロセスを自動化することが重要です。既に、細胞培養や細胞の洗浄、濃縮、分離を自動化する自動化装置が各社から販売されています。
細胞製造では「細胞医療」や「再生医療」の市場では、製剤が細胞になるため、その製造において細胞の洗浄、濃縮、分離というステップは欠かせません。従来は安全キャビネット内での開放系作業が必要であり、コンタミネーションリスクやヒューマンエラーの可能性が伴っていました。このような作業環境の整備には設備投資も不可欠です。そのため、シングルユースの閉鎖系キットを用いた細胞製造や細胞処理のニーズが高まっています。
これまで手作業で行っていた工程を自動化し、開放系作業を閉鎖的キット内で行うことで、さまざまな課題解決が可能になります。このように製造におけるリスクを可能な限り低下させ、かつ安定した細胞製造のプロセスにおいて、”自動化”と”閉鎖系”というワードが重要となってきます。
2.自動装置の導入はハードルが高い?あまり普及していないのはなぜ?
研究開発の早い段階から投資を行い、自動化等のプロセスの検討を始めることが望ましいとされています。しかし、実際には研究開発で細胞製造のプロトコルが決まった後に自動化を検討するケースが一般的です。その理由には、再生・細胞治療製品のシーズの出発点は研究室での実験が主流であること、研究開発段階で製造プロセスに予算を充てにくいこと、ラボスケールで製造プロセスを構築できる理想的なソリューションがなかったことが挙げられます。
細胞製造の製造工程の変更許容度は、商用製造に近づくほど難しくなります。そのため、現在行われている製造プロセス検討のタイミングでは、製造工程の変更のハードルが高く、場合によっては研究開発から振り出しに戻る恐れがあります。

先行して閉鎖系かつ自動系を可能にした完全一体型、オールインワン型の装置もありますが、既存の決まったプロトコルのみでの使用、使用者の細胞製造の品質や目的に合わせてプロトコルをカスタマイズしにくいこと、目的ごとにプロトコルの追加購入が必要であること、同時期の製造量を増やすためにはスペースの拡大と複数台の整備投資が必要になるといった課題があります。そのため決まった製造工程での使用や普及にとどまっているのが現状です。
この課題に対するソリューションの一つとして、次項では当社のシステムをご紹介いたします。

3.細胞製造の自動化を可能にするCTS Rotea Counterflow Centrifugation Systemとは?
今回ご紹介するGibco™ CTS™ Rotea™ Counterflow Centrifugation System(以下CTS Roteaシステム)は、閉鎖系で細胞を自動処理するシステムです。細胞の洗浄、濃縮、分離を閉鎖系で自動的に行います。「細胞医療」や「再生医療」の市場では、製剤が細胞になるため、その製造において細胞の洗浄、濃縮、分離というステップは欠かせません。
CTS Roteaシステムの特長
- プロトコルを自由に設計
- 優れた細胞回収率と生存率
- 高い細胞濃縮率
- 商用製造を見据えたレギュラトリーサポート

まず、CTS Roteaシステムを稼働させるプロトコルは、使用者の細胞製造の品質や目的に合わせて自由にカスタマイズが可能です。製造現場では、目的に合わせて異なるプロトコルを使用することが求められますが、本システムでは追加プロトコルに費用はかかりません。
次に細胞の洗浄についてです。細胞への負担を最小限にすることから、T細胞の洗浄は高い生存率と回収率であることが確認されています。また、iPS細胞のスフェロイドの洗浄、血液検体の場合、溶血液と組み合わせた赤血球除去、溶媒置換などさまざまな実績があります。次の第2回で詳しくご紹介予定です。
細胞の濃縮においては、既存の同類装置では珍しく、CTS Roteaシステムでは5 mLまで濃縮することができます。エレクトロポレーションのバッファー置換など、小スケールで前処理する必要がある場合にメリットがあります。
最後に、商用製造を見据えて21 CFR Part11に準拠したGibco™ CTS™ Rotea™ SAE(Security, audit, and e-signature) Softwareの販売や、レギュラトリーサポートファイルも準備しております。
まとめ
細胞医療の産業化には、効率的で柔軟な製造プロセスが欠かせません。当社は、CTS Rotea システムをはじめとする先端技術を駆使した製造装置を開発し、細胞医療製品の開発を加速するための取り組みを続けています。第2回では、CTS Rotea システムでできることをご紹介します。今後も、細胞医療製品の製造プロセスに関する最新情報や実例をこちらのブログでご紹介していきますので、ぜひご期待ください。
CTS Rotea システム 製品ページ
詳細はこちらCTS Roteaシステム アプリケーションノート
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