腫瘍サンプルにおけるがん関連遺伝子解析では、5~10%程度の低頻度の遺伝子変異を正確に検出・確認する必要があります。さらに検出された変異の検証として異なる手法での確認も求められます。そのため、限られた量のサンプルを次世代シーケンサで確認後、サンガーシーケンスでの確認が必要となることも想定されます。
ここでは、Ion AmpliSeq™ パネルを用いて次世代シーケンサで解析した低頻度変異の存在をサンガーシーケンシングで確認した例を紹介いたします。
※Ion AmpliSeq™ パネルのPCRプライマー配列が公開されている場合のみ可能です。
▼こんな方におすすめです!
・次世代シーケンサの結果を別法で検証したい方
・次世代シーケンサを使用されている方
・キャピラリーシーケンサを使用されている方
実験内容
FFPE組織切片からDNAを抽出し、Ion AmpliSeq™ ライブラリー調製の第一ステップで調製した増幅産物20 µLのうち、1 µLをサンガーシーケンス用に分取し、希釈しました。
次にTP53遺伝子の24カ所のエクソン領域をシーケンスするために、
Applied Biosystems™ BigDye™ Direct Cycle Sequencing Kitで利用するM13配列を付加した特異的なプライマーで各々再増幅しました。特異的なプライマーの配列情報は、www.ampliseq.comから入手しました。
その後、BigDye DirectCycle Sequencing KitとApplied Biosystems™ 3500ジェネティックアナライザを用いてシーケンシングを行いました。
M13配列を再増幅プライマーに付加することで、シーケンス解析用のフラグメントは全て同じM13プライマー(フォワードとリバース)で簡便に調製できます。
結果
次世代シーケンサでTP53遺伝子に4カ所の変異を検出し、そのうち3カ所は低頻度変異で、1カ所は高頻度変異でした(表1)。
TP53_10.1.470 (TP53_02) chr17:7578645 C > T |
TP53_11.1324631 (TP53_08) chr17:7579472 G > C |
TP53_8.884088 (TP53_23) chr17:7578115 T > C |
TP53_10.215568 (TP53_5) chr17:7578406 C > T |
|
FFPE 5 | 21.8% | 20.2% | 17.9% | 60.6% |
確認のために実施したサンガーシーケンスでも同じ変異が検出され、同等の頻度を示しました(図1)。

図1. サンガーシーケンスで検出した低頻度変異
キットやツールを活用することで簡単に確認できます
Ion AmpliSeq™ マルチプレックスPCRプライマーのフォワードとリバースにM13配列を付加することで、サンガーシーケンスの鋳型DNA調製用プライマーペアへ容易に変換でき、限られた量のゲノムDNA(PCR反応あたり0.5 ~ 1 ng)から安定したPCR増幅とサンガーシーケンシングができました。
次世代シーケンサの結果を確認するための迅速で経済的な方法を必要としている場合、PCRとサンガーシーケンシングの併用により高い感度で安定したデータが得られることが確認されました。
また、キャピラリーシーケンサでレアな変異を検出するための解析ソフトウエア、Applied Biosystems™ Minor Variant Finderソフトウエアも有用です。従来25%程度以上の変異でなければ、キャピラリーシーケンサの波形データから変異を視覚的に検出することは困難でしたが、このソフトウエアを使うと、キャピラリーシーケンサで5~10%程度のわずかな変異を検出できます。
まとめ
- Ion AmpliSeq™ テクノロジーを用いてサンガーシーケンシングを効率的に行える
- BigDye Direct Cycle Sequencing Kitを用いることで複数箇所の反応が簡単に行える
- Minor Variant Reporterソフトウエアを用いるとサンガーシーケンシングで低頻度変異の確認が可能に!
詳細はアプリケーションノートを参照ください。
Ion Torrent次世代シーケンサ テクニカルハンドブック
サンガーシーケンスの基礎 ハンドブック
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。