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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / SARS-CoV-2 株の継続的モニタリングのための解析手法 ~サンガーシーケンシングによるオミクロン株変異解析~

SARS-CoV-2 株の継続的モニタリングのための解析手法 ~サンガーシーケンシングによるオミクロン株変異解析~

作成者 LatB Staff 02.09.2022

▼もくじ

  • S遺伝子ドロップアウトおよびS遺伝子シーケンス
  • 定期的なサーベイランスシーケンスで新たな変異を検出
  • オミクロン– SARS-CoV-2の懸念される変異株
    • SARS-CoV-2 株の継続的な検査およびモニタリング
    • オミクロン変異株のゲノムシーケンシング
  • 変異を検出するための検証済みのシーケンス手法とツール
  • ウイルスシーケンスのサーベイランス戦略の必要性
    • 関連ブログ記事

S遺伝子ドロップアウトおよびS遺伝子シーケンス

世界的な COVID-19の大流行により、人々の生活や国々の経済は混乱し続けています。しかし、パンデミックの発生以来、ウイルスの伝染や病原性に関する非常に多くの科学的知見が得られており、ウイルスの検出や監視の戦略を迅速に立てことができるようになっています。他のRNAウイルスと同様に、SARS-CoV-2 は変異率が高いことが確認されています。SARS-CoV-2変異のダイナミクスを調査した複数の研究により、Spike遺伝子とOrf1ab領域が突然変異を頻繁に起こしやすいことが明らかになりました[1, 2]。このような変異は、ウイルスの感染力、抗ウイルス薬やワクチンへの感受性に影響を与える可能性があります。

定期的なサーベイランスシーケンスで新たな変異を検出

最近、南アフリカ共和国のゲノミクスサーベイランスラボラトリーネットワークによる定期的なサーベイランスシーケンスにより、B.1.1.529と初めて命名されたウイルスの新系統が検出されました[3] 。この新しい変異株に起因する感染症は、南アフリカ共和国のハウテン州で驚くほど高い割合で見られ、その後、ボツワナ、英国、ドイツ、ベルギー、チェコ共和国、イスラエル、オランダ、日本、オーストラリア、香港、米国など、10以上の国・地域で発見されました[4]。B.1.1.529は、宿主細胞に結合し、現在利用可能ないくつかのワクチンの主な標的であるウイルスの領域のspikeタンパク質に30を超えるアミノ酸変異を含んでいます。 この変異株はまた、免疫を回避する可能性を伴う感染力の増強に関連したデルタ株およびアルファ株と、いくつかの変異が共通しています。
関連情報:SARS-CoV-2 Epidemiological Surveillance

オミクロン– SARS-CoV-2の懸念される変異株

Spike遺伝子への多数の変異と、急速な広がりにより、WHO は194の加盟国に対し、この新しい変異株は「免疫を回避する可能性があり、場合によっては感染率を高める可能性がある」と警告し、その結果「この変異株が世界レベルでさらに拡散する可能性が高い。」と述べています。その後、WHOは2021年11月26日にそのステータスを「懸念される変異(VOC; Variant of Concern)」に引き上げ、「オミクロン」という名前を付けました[5] 。

SARS-CoV-2 株の継続的な検査およびモニタリング

オミクロン株の発生をより深く理解し、制御するには、疫学的調査を通じてウイルスの進化を継続的に監視することが重要です。サーモフィッシャーサイエンティフィックは、SARS-CoV-2 検出アッセイの世界的リーダーです。当社アッセイはSARS-CoV-2ゲノムの3つの異なる領域(N、S、orf1ab)を解析するために開発されたもので、変異に対応できる機能が組み込まれています。プローブの1つが機能しなくても、他の2つのプローブがウイルスの存在を示します。

オミクロン変異株のゲノムシーケンシング

興味深いことに、この機能は、検出された株の主要な指標として使用されています。1年前、B.1.1.7変異に見られる特定の変異の1つがS遺伝子からのシグナルの結合を妨害していることが分かりました。Nおよびorf1abシグナルと組み合わされたこのS遺伝子のドロップアウトは、B.1.1.7株の初期の指標として使用されていました[6]。オミクロン株のシーケンシンスを調べたところ、同じようにS遺伝子のドロップアウトを引き起こす変異が見つかりました。サーモフィッシャーサイエンティフィックの最高業務責任者である Mark Stevenson はインタビューで「このアッセイはCOVID-19を適切に検出するだけでなく、オミクロン変異株の代用マーカーとして使用することもできます」と述べています。

変異を検出するための検証済みのシーケンス手法とツール

多くの場合、ゲノム変異の状況をより深く理解する必要があります。さらに、PCR 検査で S遺伝子ドロップアウトなどの異常な結果が出る理由を理解する必要があります。このような場合、研究者は信頼性の高いキャピラリー電気泳動によるサンガーシーケンシングを利用することが多くあります。サンガーシーケンスは、高精度、ロングリード機能、シンプルなデータ解析を兼ね備えた、比較的簡便なワークフローです。サーモフィッシャーサイエンティフィックは、サンガーシーケンシスで、SARS-CoV-2ゲノムの任意の領域をシーケンシングするためのツールを発表しました。ウェットラボで検証済みのサンガーシーケンスプライマーを選択、また注文も可能なWebベースの2つのツールを開発しました。そのうちの1つは、ゲノムを視覚的に表示し、変異株の特徴的な変異位置と、それらの変異をカバーするプライマーの情報を示すものです。
もう一つは、研究者が変異やヌクレオチドの位置を入力して適切なプライマーペアを選択できる検索テーブルです。

SeqScapeまたはVariant Reporterを使用して、簡便にウイルス変異解析が可能なファイルも開発し、簡単にダウンロードできるようサイトに掲載しています。
関連情報: Sanger Sequencing Solutions for SARS-CoV-2 Research

これらのツールにより、研究者は新しいオミクロン株を含む、あらゆる SARS-CoV-2変異に必要なシーケンシングプライマーを迅速に選択ことができます。さらに、ビジュアルブラウザーと検索テーブルを更新することでインターフェースを簡素化し、オミクロン株に特徴的な変異に対する、全体のプライマーセットを一度に注文できるようにしました。

ウイルスシーケンスのサーベイランス戦略の必要性

SARS-CoV-2は今後も変異し、進化し続けるでしょう。新しい変異株の出現によって、より早期にウイルスがまん延し、ワクチン接種の効果が妨げられる可能性があります。迅速かつ継続的にウイルス配列を監視する戦略が重要になります。B.1.1.529の変異株が、ワクチン接種や非医薬品介入(NPI)の効果を低下させるかどうかはまだわかっていません。しかし、SARS-CoV-2ウイルスに対抗するための最善策は、ウイルスゲノムの新しい配列変化について感染者を監視することにより、新しい変異株を迅速に同定することです。
当社の新型コロナウイルスSARS-CoV-2(感染症名:COVID-19)の変異株解析のための遺伝子解析ソリューションの詳細を見る

関連ブログ記事

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S遺伝子のシーケンシングがSARS-CoV-2サーベイランスの鍵である理由

Resource
新しい変異株を含むSARS-COV-2 ゲノムをサンガーシーケンシングプライマーを使って解析するためのプロトコル
プロトコルのダウンロード

SARS-CoV-2 ゲノムとプライマー情報 | SARS-CoV-2 ゲノムとプライマーの検索
Variant Reporterを使ったVariant解析 | Variant Reporterファイル (zip)
SeqScapeを使ったVariant解析 | SeqScapeファイル (zip)

Reference
1.van Dorp, L., et al., Emergence of genomic diversity and recurrent mutations in SARS-CoV-2. Infect Genet Evol, 2020. 83: p. 104351.
2.Xiaofei, Y., L. Li, and Y. Kai, Research Square, 2021.
3.Omicron Variant Report. Alaa Abdel Latif, Julia L. Mullen, Manar Alkuzweny, Ginger Tsueng, Marco Cano, Emily Haag, Jerry Zhou, Mark Zeller, Emory Hufbauer, Nate Matteson, Chunlei Wu, Kristian G. Andersen, Andrew I. Su, Karthik Gangavarapu, Laura D. Hughes, and the Center for Viral Systems Biology. outbreak.info. Accessed 29 November 2021.
4.Callaway, E., Heavily mutated Omicron variant puts scientists on alert. Nature, 2021. doi
5.https://www.who.int/news/item/28-11-2021-update-on-omicron
6.Kidd, M., et al., S-Variant SARS-CoV-2 Lineage B1.1.7 Is Associated With Significantly Higher Viral Load in Samples Tested by TaqPath Polymerase Chain Reaction. J Infect Dis, 2021. 223(10): p. 1666-1670.

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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