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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / SARS-CoV-2のサーベイランス:SARS-CoV-2ゲノムのあらゆる領域に対応した、サンガーシーケンス用ツール

SARS-CoV-2のサーベイランス:SARS-CoV-2ゲノムのあらゆる領域に対応した、サンガーシーケンス用ツール

作成者 LatB Staff 02.04.2022

科学者、医学研究者、医薬品の開発者は、COVID-19のパンデミックと闘うためのツールを得たことで、このウイルスとの闘いにおいて大躍進を遂げました。しかしながら、ワクチンや治療法が開発されたものの、SARS-CoV-2ウイルスは、いまだ世界的な脅威です。これには2つの理由があります。

1つ目は、このウイルスは他のRNAウイルスと比べて変異率は低いものの、複製の際には当然ミスが起こり、それが新しい変異へとつながります。これらの新しい変異は、ウイルスの検出回避、感染力の変化、発症した際の重症度、ワクチンによる免疫回避のような利点をウイルスにもたらします。

2つ目は、ウイルスにとって、世界中に膨大な感染者が存在しているということが、新しい変異の出現や拡散の絶好の機会となっています。

これらは単なる臆測ではありません。2021年初めに瞬く間に世界中に広まった、危惧されるべきB.1.1.7や、B.1.617の変異株をはじめ、新たな変異や異なる感染力を持つ、多くの変異株が出現しています [1]。当社はこのパンデミックへの対策を進めているものの、研究者の方々は引き続き、新たな変異の出現の監視や、警戒が必要な状況にあります。

そこで今回は、サンガーシーケンスを用いたSARS-CoV-2変異検出ツールを、ご紹介します。

▼こんな方におすすめです!
・サンガーシーケンスでSARS-CoV-2の変異解析を検討されている方

▼もくじ

  • シーケンスを用いた、変異株における新たな変異の検出・追跡
    • SARS-CoV-2サーベイランスのためのNGS、CE、RT-qPCRの活用
  • SARS-CoV-2サーベイランスのための、サンガーシーケンスプロトコル
    • SARS-CoV-2シーケンスに適したプライマーの選択
    • SARS-CoV-2ゲノムのあらゆる領域をカバーするプライマー
  • ウェブベースのプライマー選択ツール
    • SARS-CoV-2 Sanger Primer Visualization App
    • SARS-CoV-2 Sanger Primer Pair Lookup
    • 変異株における特定変異検出シーケンスプロトコル開発
    • SARS-CoV-2 変異解析用ツール
  • まとめ
    • ウイルスのサーベイランスのためのサンガーシーケンス
    • 関連ブログ記事

シーケンスを用いた、変異株における新たな変異の検出・追跡

変異株の新しい変異を検出し、その拡散を追跡するには、まん延しているウイルスのゲノムを特定する、シーケンスベースのツールの使用が最も有効な方法です。当社は、Ion Torrent™ NGS、Applied Biosystems™ TaqMan™ RT-qPCR、Applied Biosystems™ Genetic Analyzerキャピラリー電気泳動(CE)のプラットホームで、変異株を同定する方法を開発しました。これらには、それぞれ少しずつ異なる利点があります。

SARS-CoV-2サーベイランスのためのNGS、CE、RT-qPCRの活用

一般的に、NGSでのアプローチは、全ゲノム配列において新たな変異を満遍なく「発見」するのに適しており、CEでのアプローチは、ゲノムの特定領域を「集中的」に解析するのに適しています。加えて、RT-qPCRでのアプローチは、すでに分かっている配列や変異を特異的に「検出」するのに適していると言われています。これら3つのアプローチは相互に強みを持ち、それぞれが、SARS-CoV-2サーベイランスのニーズを満たしています(詳細はepidemiological research portalを参照)。

SARS-CoV-2サーベイランスのための、サンガーシーケンスプロトコル

当社は、SARS-CoV-2ゲノムのどの位置をもシーケンスできる、サンガーシーケンスのプロトコルを開発し、ゴールドスタンダードであるシーケンスの技術を用いて、新たに出現する可能性のある変異を柔軟に確認できるようにしました。

SARS-CoV-2シーケンスに適したプライマーの選択

サンガーシーケンスを実施する際には、正しいプライマーの選択が一つのハードルです。研究者の方々がSARS-CoV-2のシーケンスに適したプライマーをすぐに選択できるよう、まずCDC[2]が設計したすべてのプライマーについて、当社のプロトコルを用い、シーケンスがうまくワークするかどうかをラボでテストしました。その結果、これらのプライマーがWuhan Reference RNA上においてワークすることを確認し、B.1.17株で確認された変異を正しく検出することができました。

SARS-CoV-2ゲノムのあらゆる領域をカバーするプライマー

テストに合格しなかったプライマーもあったものの、その場合は、その領域をカバーするようにプライマーを再設計し、さらに再設計したプライマーがテストに合格するかどうかを改めて確認しました。このように、ゲノムのあらゆる領域をカバーするためのテストを行い、プライマーセットを設計しました。

ウェブベースのプライマー選択ツール

もちろん、多くの場合においてゲノム全体をシーケンスする必要はありません。そこで、特定の領域に特化したプライマーを選択できるよう、ウェブベースのプライマー選択ツールを2つご紹介します。

SARS-CoV-2 Sanger Primer Visualization App

1つ目は、SARS-CoV-2 Sanger Primer Visualization Appです。こちらは、一般に公開されているJBrowseフレームワークを用いて構築されています[3]。このツールでは、SARS-CoV-2の遺伝子の位置、危惧されるような変異株に見られる変異、またテスト合格済みのプライマーとの位置関係を確認することができます。該当の入力欄に検索箇所の位置を入力することでも、該当の領域をカバーするプライマー確認できます。ブラウザーには、現在のVOC(variants of concern)とoutbreak.infoで定義されている、Variants of Consequenceで見つかった変異があらかじめ登録されています。このサイトは隔週でチェックされており、必要に応じてVOCやvariant of consequenceに指定された新しい株がブラウザーに追加されます。

SARS-CoV-2 Sanger Primer Pair Lookup

2つ目は、SARS-CoV-2 Sanger Primer Pair Lookupです。
このツールは、入力欄に情報を入力することで、変異型の系統、遺伝子、アミノ酸変異、ゲノムに位置などに対するプライマーを検索することができ、さらに、当社で選別し、テストに合格したプライマーの配列も表示されます。また、当社のシーケンスプロトコルで使用できるように、プライマーはM13配列付き、なしでも表示が可能です。プライマーまたはプライマーセットを決定されましたら、エクセルファイルに出力し当社のプライマー注文サイトにて、注文時に一括でアップロードすることができます。SARS-CoV-2 Sanger Primer Visualization Appと同様に、必要に応じて新しい変異が追加されます。
※SARS-CoV-2 Sanger Primer Visualization App、SARS-CoV-2 Sanger Primer Pair Lookup の各アプリの使用方法はこちらを参照ください(英語版のみ)。
「Protocol for Sanger sequencing of any region of the SARS-CoV-2 genome」の9~15ページをご参照ください。

変異株における特定変異検出シーケンスプロトコル開発

これらのプライマーを使用するプロトコルは、変異株に見られる特定変異のシーケンスや、スパイク遺伝子全体のシーケンスのプロトコルと同様です。
※具体的なプロトコルは、こちらをご参照ください
簡単に流れを申し上げますと、まずウイルスRNAを含むサンプルからcDNAの合成を行います。次に、このcDNAをテンプレートとし、目的の領域をカバーするM13 tailedプライマーを用いてその領域を増幅させます。この反応には、Applied Biosystems™ BigDye™ Direct Cycle Sequencing Kit内の試薬と、プライマーにM13の配列が付加されたプライマーセットを使用して、PCRを行います。増幅された領域は、BigDye Direct Cycle Sequencing Kitに含まれるM13-forwardプライマーもしくは、M13-reverseプライマーのいずれかで、サイクルシーケンスを行います。次に、Applied Biosystems™ BigDye XTerminator™ Purification Kitを用いて、反応に使用されなかったヌクレオチドを除去し、キャピラリー電気泳動(CE)で配列を読んでいきます。得られた配列は、Applied Biosystems Sequencing Analysis ソフトウエアなどの配列閲覧ソフトで確認することができます。

SARS-CoV-2 変異解析用ツール

シーケンス解析が完了しましたら、その結果を参照配列や既知の変異、または変異株と比較して、確実に同定する必要があります。配列は、BLASTを用いて既知の配列と比較することもできますが、場合によってはよりシンプルで確実なワークフローが必要となります。そこで弊社では、SARS-CoV-2の変異解析にApplied Biosystems Variant ReporterおよびSeqScapeソフトウエアを使用する際の、解析専用ファイルを準備しました。参照配列、VOCで見つかった変異、簡易的なユーザーガイドを含む解析ファイルは、Sanger for SARS-CoV-2 Researchのウェブページからダウンロードし、Variant ReporterおよびSeqScapeで使用可能です。
Variant Reporter SARS-CoV-2解析クイックリファレンスガイド(英語版)
Variant Reporter SARS-CoV-2解析設定ファイル

SeqScape SARS-CoV-2解析クイックリファレンスガイド(英語版)
SeqScape SARS-CoV-2解析設定ファイル
これらのクイックリファレンスガイドは包括的なものではありませんが、解析結果をより理解できるように記載されています。ソフトウエアの全機能を利用するには、各ユーザーガイドを参照してください。

まとめ

ウイルスのサーベイランスのためのサンガーシーケンス

新たに出現したSARS-CoV-2株における変異を検出・確認することは、新しい変異型ウイルスの広がりを抑制するための重要な戦略です。私たちサーモフィッシャーサイエンティフィックは、ウイルスのサーベイランスのニーズに応えるツールを開発・提供することで、これからも研究者の皆さまを支援して参ります。

関連ブログ記事

S遺伝子のシーケンシングがSARS-CoV-2サーベイランスの鍵である理由
SARS-CoV-2 株の継続的モニタリングのための解析手法 ~サンガーシーケンシングによるオミクロン株変異解析~

References
1. Adam, D. (2021) News: What scientists know about new, fast-spreading coronavirus variants.  Nature 594, 19-20. doi: https://doi.org/10.1038/d41586-021-01390-4
2. Paden CR et al. (2020) Rapid, sensitive, full-genome sequencing of severe acute respiratory syndrome coronavirus 2. Emerg Infect Dis. 26(10):2401-2405. https://dx.doi.org/10.3201/eid2610.201800.
3. Buels R et al. (2016) JBrowse: a dynamic web platform for genome visualization and analysis. Genome Biol. 17.1:66.

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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