Tegallyらによる新しい論文(査読前、1)によると、アフリカのSARS-CoV-2ゲノムサーベイランスネットワークが急速に拡大し、2020年以降10万件以上の全ゲノム配列を登録、懸念される2つの主要な亜種であるAlpha株とOmicron株を特定したことが報告されています。
アフリカ全土の400人以上の研究者によって執筆されたこの大規模な研究論文では、その地域におけるシーケンス処理能力がターンアラウンドタイム(TAT)に与える影響に関する情報が多数含まれており、ゲノムギャップ分析を用いて次世代シーケンス(NGS)プラットフォーム間でのSARS-CoV-2シーケンス処理性能の違いに関する初の実データが公開されています。
地域独自のサーベイランスがターンアラウンドタイムを短縮する
変異を迅速に検出することで素早い公衆衛生対応を講じることが可能になるため、ゲノムサーベイランスではTATが特に重要です。短いTATを実現するための潜在的な障壁の1つは、その地域におけるシーケンス能力の限界です。
この研究において、2年間のうちにアフリカのサーベイランスネットワークは地域に密着したシーケンシングセンターを有する55カ国のうち39カ国にまで拡大したことが明らかになりました。一部のセンターが地域サーベイランスのハブとして機能したことで、近隣諸国のシーケンシング能力が大幅に増強されました。アフリカ現地、近隣、アフリカ以外のサーベイランス拠点間で補完した結果、最終的にシーケンシングセンターを有するアフリカ諸国の実に95%に相当する52カ国が今回報告された10万件のウイルスゲノム解析データに関わっていました。
さらに、シーケンシング拠点の所在地がTATに与える影響について著者が調べたところ、地方のシーケンシングセンターは周辺地域やアフリカ以外の拠点よりもTATが大幅に短く、タイムリーにデータを取得していたことから、地方のゲノムサーベイランスネットワークへの投資が効果的であることが分かりました。
Ion Torrent NGSは、SARS-CoV-2ゲノムシーケンスにおいて、よりギャップが少ないことを示した
SARS-CoV-2のサーベイランスにおけるもう一つの課題は、進化し続けるウイルスに対応し、高品質なシーケンスデータを取得することです。
SARS-CoV-2全ゲノムシーケンスでは、RNAからDNAへの逆転写と配列特異的なプライマーによる増幅が行われます。しかし、SARS-CoV-2は進化を続けており、ゲノム配列に変異が生じ、プライマーとウイルス標的配列の間にミスマッチが生じる可能性があります。
例えば、海外の医学研究支援団体のプライマーセットは何度も更新を余儀なくされ、現在のバージョンは4.1です。これに対して、Ion AmpliSeq™ プライマーセットは、当初はNGSカスタムパネルとして販売されていましたが、現在は必要な試薬をすべて含む完全なSARS-CoV-2ゲノムシーケンスアッセイとして販売されており、新たな変異を確実にカバーするための変異耐性プライマーを備えたインテリジェントなデザインが特長です。
NGSプラットフォーム間でのゲノムあたりのN数中央値を直接比較した結果、Ion Torrent™ NGSのカバー率が有意に高いことが明らかになりました。
SARS-CoV-2全ゲノムシーケンス10万件を対象とした今回の調査において、Ion Torrent NGS シーケンスのギャップ数は、Sangerシーケンスと同等でしたが、他社の蛍光読み取りタイプやロングリードタイプのNGSプラットフォーム(ゲノムあたり平均1250個以上のN)よりも明らかにギャップが少なく、SARS-CoV-2全ゲノムシーケンスのバリアントカバレッジではプライマーデザインとシーケンス技術が重要な役割を果たすことが明らかになりました。
まとめ
SARS-CoV-2 が進化を続ける中、サーベイランス手法を駆使して新たな変異株を検出し、対応していく必要があります。
SARS-CoV-2 ゲノム10万件におよぶ大規模な解析により、Ion Torrent NGS によるSARS-CoV-2全ゲノムシーケンスが、他社NGS プラットフォームよりもゲノムあたりの平均ギャップが少ないことを示しています。
Ion AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Insight Research Assay はウイルス配列の変異に対してロバスト性を備えていることが明らかであり、鼻咽頭スワブ、唾液、廃水、検屍したFFPE 組織など多様なサンプルタイプで幅広いゲノム研究アプリケーションに使用することができます。
1.Houriiyah Tegally, James E. San, Matthew Cotten, et al. (2022). The evolving SARS-CoV-2 epidemic in Africa: Insights from rapidly expanding genomic surveillance. medRxiv 2022.04.17.22273906;
doi: https://doi.org/10.1101/2022.04.17.22273906
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