現在も進化し続けるSARS-CoV-2の変異株を同定するため、迅速で効率的なNGSによる全ゲノムシーケンスが求められています。そこで今回は、ハンズオン時間10分、解析までが1日で完了する全自動NGSシステム「Ion Torrent™ Genexus™システム」の導入事例についてご紹介します。
▼こんな方におすすめです!
・新型コロナウイルス研究に興味のある方
・感染症研究者
・微生物学研究者
オール・イン・ワンNGSシステムによる変異株の同定
SARS-CoV-2ウイルスが次々と変異していく中で、ウイルス研究の技術も躍進を遂げています。これまでの研究で、複数のSARS-CoV-2の株が異なる組織で共存できることや、ウイルスが感染中にモノクローナル抗体に対する耐性を進化させることが明らかになりました。また、「デルタクロン株」のように、複数の変異型のゲノムセグメントが組み合わさった新たな組換え体も発見されています。一方、全世界での感染者数は現在も数百万人おり、変異株同定のために全ゲノムシーケンスのような強力なツールを導入することがこれまで以上に重要になっています。
微生物学系ラボでは、SARS-CoV-2の変異株同定の際にPCRに代わって全ゲノムシーケンスを利用することが増えました。全ゲノムシーケンスを行うことで新規の変異を検出できるため、新たな変異株が出現した際にプライマーを再デザインし、それを検証する必要がなくなるからです。
最近の報告[1]でJennifer Dien Bard博士は、ロサンゼルス小児病院(CHLA)の微生物学研究室でオミクロン株が出現した際に、変異株の同定をどのように行ったかについて述べています。彼女たちは、qPCRでCt < 30のウイルス力価を持つすべてのSARS-CoV-2陽性サンプルに対して、全自動NGSシステム「Genexusシステム」で全ゲノムシーケンスを実施しました。これらのサンプルは週2回、合計14シーケンスで解析が行われました。彼女たちのハンズオン時間は1回当たりわずか10分であり、最初のqPCRから30時間以内にオミクロン株の検出を報告しました。SARS-CoV-2研究に最適化された NGS アッセイと自動ライブラリー調製、そして配列決定から変異の自動リスト化や変異株同定までを行う統合的なデータ解析により、最小限のトレーニングだけでこのワークフローによる変異解析を実施できます。短い作業時間、柔軟なスループット、迅速なシーケンスという特長を併せ持つGenexusシステムは 、CHLA で繰り返し実施されるSARS-CoV-2ゲノムシーケンスに適しており、実用的な結果を1日で取得することを可能にしました。
オール・イン・ワンNGSであるGenexusシステムは、病原体の特定や疫学的調査、抗菌薬耐性プロファイリング、変異体サーベイランスといった微生物・感染症研究のための全ゲノムシーケンスの導入を容易にし、たった1日という短い期間での解析を可能とします。
まとめ
・ウイルスの変異株の出現に対応するため、NGSによる全ゲノムシーケンスの導入がこれまで以上に重要視されています。
・10分間のハンズオンタイムで翌日に解析まで完了するGenexusシステムは、SARS-CoV-2の変異株検出に適したツールです。
SARS-CoV-2研究や全自動NGSシステムに興味のある方は、
Genexusシステム、Ion AmpliSeq™ SARS-CoV-2 Insight Research Assayをぜひ一度、ご検討ください。
参考文献
1. Fissel, J. A., Mestas, J., Chen, P. Y., Flores-Vazquez, J., Truong, T. T., Bootwalla, M., Maglinte, D. T., Gai, X., & Dien Bard, J. (2022). Implementation of a Streamlined SARS-CoV-2 Whole-Genome Sequencing Assay for Expeditious Surveillance during the Emergence of the Omicron Variant. Journal of clinical microbiology, 60(4), e0256921. https://doi.org/10.1128/jcm.02569-21
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