バイオ医薬品製造工程におけるシングルユース技術は近年急速に進化しており、製造プロセスの効率化、コスト削減、品質向上を実現するための重要なツールとして注目されています。
今回はバイオ医薬品製造工程の培地調製やバッファー調製時においてステンレススチール製品をお使いの多くのお客さまが直面する製造前後の定置洗浄(CIP)・定置蒸気滅菌(SIP)、洗浄バリデーションにかかる手間や、粘度の高い液体を攪拌させる課題に対して、それらを解消するシングユースソリューションについて説明します。
▼こんな方におすすめです!
・ステンレス製品の製造前後の定置洗浄(CIP)・定置蒸気滅菌(SIP)、洗浄バリデーションにかかる時間を短縮したい
・培地調製やバッファー調製のオペレーションを効率よく運用したい
・少量多品種に対応する製造設備の柔軟性を高めたい
・可動式で攪拌力の高いシングルユースミキサーを探している
・新規設備立ち上げの期間を短縮したい
シングルユース vs ステンレススチール
先ずはじめに、こちらのスライドはバイオ医薬品製造におけるシングルユース製品とステンレススチール製品の比較を表したものです。
近年、バイオ医薬品製造工程においてステンレススチール製からシングルユース(使い捨て)製品の切り替えが進んでいます。これはステンレススチール製と比べ、シングルユース製品は汚染リスクの低減、コスト削減(プロセス関連コストおよびバッチ切り替えの手間を省く人的オペレーションコスト)、設備の柔軟性、設備維持およびメンテナンス、サステナビリティ、規制対応など、ステンレススチール製品に比べて多くのメリットがあるためです。バイオ医薬品製造におけるシングルユース技術の普及は製薬市場およびバイオ医薬品市場に対してより効率的で柔軟な製造プロセスを実現し、高品質で安全な医薬品(バイオ医薬品)を迅速に市場に供給することが可能になるとされています。
バイオ医薬品製造におけるステンレス製ミキサーの課題
バイオ医薬品製造工程においてシングルユース技術が普及している一方で、ステンレススチール製の製品や設備を有しているお客さまもおられるのも事実です。ここでは普段ステンレススチール製ミキサーをお使いのお客さまが培地調製やバッファー調製時において直面する課題について説明させていただきます。
先ず、ステンレススチール製ミキサーは培地調製やバッファー調製前後の定置洗浄(CIP)・定置蒸気滅菌(SIP)、洗浄バリデーションに時間とコストがかかります。これは、次の工程に行く際に洗浄工程が入り、その後、滅菌、そして最終的に洗浄バリデーションをするために時間と手間がかかることが理由です。
ステンレススチール製ミキサーをお使いのお客さまにとってCIPとSIPは製造設備を取り外すことなく洗浄や滅菌を行うことができる一方で、初期コストの高さ、複雑な設計とメンテナンス、エネルギーコスト、環境への負荷、そして完全な洗浄・滅菌が難しい場合があるなどのデメリットも存在しています。
次に、ステンレススチール製ミキサーに限らずシングルユースミキサーの課題でもあるのが、攪拌能力です。特に溶けにくい液体や粘度の高い液体を攪拌する際の攪拌能力はこれまでステンレススチールおよびシングルユースミキサー双方の課題とされています。
既存のステンレス製ミキサーに代わるシングルユースミキサーと導入によるメリット
Thermo Scientific™ HyPerforma™ DS300シングルユースミキサー(S.U.M.)は、開放系から閉鎖系まで1台で培地調製、シロップ剤、バッファー調製までさまざまなアプリケーションに対応するシングルユースミキサーです。
先ずはじめに、シングルユースミキサーはコンテナがシングルユース製品(一度きりの使い切り)のため、ステンレス製品の製造前後のCIP・SIP、洗浄バリデーションにかかる工程を削減できます。
スケールも50 L、100 L、200 L、300 Lを展開しています。このミキサーは上部攪拌形式を採用しておりワーキングボリュームの1/5の液量から攪拌可能という特長を有しています。
※300 Lは1/4の液量から攪拌可能
ステンレス製ミキサーは配管等がつながっているために一度設置をした後はその場所に固定して使用することが前提ですが、こちらのシングルユースミキサーはドッキング形式でコンテナおよびミキサーを可動させて使用できるため、培地調製やバッファー調製などをDS300一台で使用できるのが特長です。
これまで一つのステンレススチール製のラインでは一つのモダリティにしか対応できませんでしたが、少量多品種に対応するために、シングルユースを導入することでさまざまなモダリティにも対応することが可能です。
また、一般的なステンレス製のミキサーは下部攪拌方式を採用していますが、粘度が高く混ざりにくい液体に対しては不向きです。こちらのシングルユースミキサーは上部攪拌方式を採用しており溶けにくい培地などにも対応が可能となっています。
まとめ
今回、バイオ医薬品製造におけるステンレス製ミキサーの課題と、その課題を解決するシングルユースミキサーについて紹介させていただきました。
シングルユースミキサーを導入するメリットとしては以下のことが挙げられます。
- ステンレス製品を使用する際の製造前後のCIPおよびSIPが不要でバッチの移行期間を短縮
- 可動式のため機器を固定せず使用可能なため、製造設備の柔軟性を高めることができる
- 新規設備立ち上げの期間を短縮できる
- 少量多品種にも対応可能
- 上部攪拌方式を採用しているため粘度が高く混ざりにくい液体の攪拌にも対応可能
シングルユースミキサーを導入することでCIPやSIPの手間や設備の柔軟性が低い、さまざまモダリティに対応できないことなどさまざまなステンレススチール製品の課題を解決することが可能です。
今回ご紹介しましたHyPerformaシングルユースミキサー(S.U.M.)DS 300は当社三田オフィス内に併設してあります再生医療クリエイティブ・エクスペリエンス・ラボ(Thermo Fisher Scientific Creative Experience Lab for regenerative medicine: T-CEL)にも実機を展示しています。
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