マイクロアレイの解析、または網羅的な遺伝子発現解析というと「大変そう」「バイオインフォマティクスに詳しくないからわからない」と思われる方が多いかもしれません。
しかしサーモフィッシャーサイエンティフィックのマイクロアレイの解析ソフトは、バイオインフォマティクスの専門知識を持っていない分子生物学の研究者でも簡単に使えるようデザインされたソフトウェアです。
このソフトウェアは最大600万ものプローブの情報をすべて統計的に処理され、ビジュアル的にとても見やすく、わかりやすく、かつ高速でさまざまな機能を搭載しています。この分子生物学研究者向けに開発されたソフトウェアは、Transcriptome Analysis Console(TAC)という名前で、どなたでも無料でダウンロードして自由にお使いいただけます。
そしてなんとこのTAC、無料のうえにできることが非常に多く、マイクロアレイの解析を行っているお客様にも非常に好評です。マイクロアレイの受託解析を利用されている方で、「TACが使えるからサーモにした」という方もいらっしゃるほどです。
この記事では、この使いやすくわかりやすい無料のTACソフトウェアでできることや解析の流れをご紹介します。
▼もくじ
こんなソフトウェアが欲しかった!マイクロアレイ用解析ソフトウェアTACでできること
TACは、ユーザーのみなさまに直感的に使えるよう開発された高速ソフトウェアです。このソフトウェアの4つの大きな特徴をまずはご紹介しましょう。
無料ソフトウェアTACの4つの特徴
・充実:スキャッタープロット、ボルケーノプロット、パスウェイ解析、ヒートマップの図などが表示できます。ソフトウェアで得られた図がそのまま論文にも使われています。
たとえばスキャッタープロットは、2群間の遺伝子発現量の変化をプロットしており、赤いプロットは群1で発現量が上昇している遺伝子、緑のプロットは群2で発現量が減少している遺伝子を表しています。グレーで表示されているのはデフォルトのフィルター条件(発現量比2倍以上、p値0.05未満)から外れている遺伝子で、このように有意差があった可能性の高い遺伝子を一目で確認できます。もちろん赤いプロットの遺伝子、緑のプロットの遺伝子それぞれをリストで入手することもできます。
また、パスウェイ解析ではインターネット上のWikipathwayの図上に遺伝子発現量の変化を色分けして表示することができますし、ヒートマップでは発現パターンの似た遺伝子をグルーピング化ができます。このように、TACは発現量に変化が生じた遺伝子を目視でわかりやすく確認できるようデザインされています。
・早い:Clariom Sであれば、数十秒(2群・N=2の場合は15~30秒程度)で正規化を終えるだけでなく、スキャッタープロットなどのデータを表示してくれます。解析に時間がかかる、また自分でグラフを作成しなくてはならないなどのストレスが一切ありません。注:解析に要する時間はパソコンのスペックにより左右することがあります。
・わかりやすい:遺伝子リストと図が連動しており、直感的に使えるデザインです。
上の図のように、右側のスキャッタープロットで選んだプロット(遺伝子)が、左側の表で青くハイライトされています。このように、図から遺伝子を選ぶこともできますし、下の図のように、遺伝子リストの列ごとにフィルターをかけて、お客様のお好みの条件で遺伝子を絞り込んでいくこともできます。
無償:有料プラグインは一切なく、どなたでも自由に解析可能です。
無料だからこそ、このTACソフトウェアは日本だけで現在も1日に何十人ものお客様にダウンロードされ続けています。
では、次にこのTACを用いた解析の流れについてご紹介しましょう。
実際にデータを用いて解析を始めてみよう!驚くほどの使いやすさと見やすさ
遺伝子発現解析のスタンダード製品になりつつあるClariomシリーズをはじめとするサーモフィッシャーサイエンティフィックのマイクロアレイは、TAC解析の練習用のサンプルデータが各製品ページに用意されています。
マイクロアレイのデータをお持ちの方は、サンプルデータをダウンロードせずにマイクロアレイデータをTACに読み込ませて解析をしてみましょう。解析の流れは同じです。
なお、Clariom Dなどを用いて選択的スプライシングの解析をされたい方向けのブログもご活用ください。選択的スプライシング画面の見方や解析の流れが書いてあります。
受託解析でもCELファイルがあればご自身で解析可能!
上述のように、マイクロアレイの解析には無料ソフトウェアTACを用いれば非常に簡単に行えることがわかりました。しかしマイクロアレイを行うには高額なシステムが必要です。ではもしお客様のご施設にシステムが入っていない場合、諦めるしかないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
システムをお持ちでない方向けに、弊社と契約しているサービスプロバイダが何社かあり、これらの会社に受託を依頼することで、マイクロアレイのデータを入手することができます。
ではサービスプロバイダを利用した時、TACは使えないのでしょうか?
いいえ、そんなこともありません。
受託会社からデータが納品される場合、TACで解析できるCELファイルが納品されることが多いです(受託会社にお問合せください)。CELファイルがあればTACで解析が可能ですのでご安心ください。
下記ブログもあわせてどうぞ!
マイクロアレイの受託解析を利用する際に知っておきたいポイント
また、マイクロアレイの受託解析をこれからお考えの方向けに、弊社のマイクロアレイ解析をお気軽にお試し頂ける有償サービスもあります。弊社有償サービスをご利用後、TACを用いた解析を行われる場合は、ソフトウェアを用いた解析の方法について、専門スタッフが詳しくご説明いたします。
このように各種サービスがございますので、お客様のご都合にあわせてお選びください。
まとめ
・無料ソフトウェアTACは、バイオインフォマティクスの専門知識を持っていない分子生物学の研究者でも簡単に使える。
・充実・早い・わかりやすい・無料といった4つの特徴があり、現在でも多くのお客様に使用されているソフトウェアである。
・受託会社にマイクロアレイのデータ取得を頼んだ場合でも、弊社の有償サービスを利用した場合でも、CELファイルがあれば自分で解析ができる。
[無料ダウンロード]マイクロアレイ用解析ソフトウェアTAC
TACを使えばマイクロアレイの解析は簡単です!ぜひお試しください。
マイクロアレイの手引き
DNAマイクロアレイは登場してからすでに20年が経ち、同じように網羅的な発現解析が出来る次世代シーケンサーの普及もあって、熟成した技術と言えます。しかしマイクロアレイは次世代シーケンサーに比べてコスト的なメリットがあり、また解析の容易さなどから、まだまだ強力な網羅的な遺伝子発現解析が出来る技術として、近年見直されて来ている技術でもあります。
この手引きはそのマイクロアレイの原理や基礎、ワークフローなどについて学べるページです。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。