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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / ウェスタンブロッティング自動化との闘い~毛細管現象が起こした革命とは?

ウェスタンブロッティング自動化との闘い~毛細管現象が起こした革命とは?

Written by LatB Staff | Published: 06.15.2022

ウェスタンブロッティングは、電気泳動と抗原抗体反応を用いて特定のタンパク質を検出できる、幅広く利用されている実験手法です。しかし、一般的にステップ数が多く、時間がかかり、煩雑です。それはこの方法が確立された1970年代後半から、当たり前のように言われ続けてきました。

iBind_blog-image

では、この煩雑さを解決する手段はないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。この煩雑さと時間を解決すべく、今までさまざまな自動化製品が発表されました。それらのいくつかが実を結び、昨今は「短時間でも可能な手法」という認識が定着しつつあります。

前回のブログでは、ウェスタンブロッティング短時間化の一環を担った高速タンパク質転写装置をご紹介しました。このブログでは、手間と時間がかかる「ブロッキングから二次抗体反応終了後の洗浄まで」のステップに焦点を当て、短時間化だけでなくハンズフリーまでも実現したInvitrogen™ iBind™ Western Systemをご紹介します。

自動化への試行錯誤とその道のり~溶液を自動交換する大型機器

ウェスタンブロッティングで、単純作業のわりに手間がかかるのが、「ブロッキングから二次抗体反応終了後の洗浄まで」のステップです。まず、このステップの流れを振り返ってみましょう。図1に、このステップをマニュアル(手動)で実施するときの、一般的な操作の流れを示しました。
westernblotting1

図1:ブロッキングから二次抗体反応終了後の洗浄までの流れ

図1のように、溶液を交換していく作業を何回も繰り返します。特に、一次/二次抗体反応後はしっかりと抗体を洗い流す必要があるため、3回程度の洗浄が必須です。この洗浄作業を含めると、溶液の交換はなんと計9回にものぼります。断続的な操作が必要なため、実験者はなかなかそばを離れることができません。

「面倒だ」と誰もがため息をつきたくなる操作だと言えます。

この煩雑なステップをいっそ誰かに任せたい、誰かじゃなくても、代わりに丸ごと引き受けてくれる機械があればいいのに。それは、ウェスタンブロッティングを行う多くの研究者の夢でした。

そこで、この操作を自動化しようと、2000年代後半に名乗りを上げたのがInvitrogen™ BenchPro™ 4100という装置です(現在は販売終了)。
InvitrogenBenchPro4100

図2:BenchPro™ 4100 (販売終了)

BenchPro™ 4100は、図1に示したブロッキングから二次抗体反応までを自動で実施できる装置です。プリセットされたプロトコルのほか、研究者が今まで手で実施していたプロトコルをカスタムで組むこともできたため、条件の最適化も必要なく、反応中は完全なハンズフリーでした。

つまり、研究者たちが待ち望んだ機器だったのです。しかし、この機器は、液を自動交換するという性質上、電源が必要で、約50㎝四方の大型機器のため、置く場所がどうしても限られました。また、反応前のセットアップや反応終了後の廃液処理など、準備や後片付けで面倒な点もありました。

それでも、手作業だと計9回にもなる溶液交換を代わりに実施してくれるのです。大型になり、準備や後片付けが多少面倒なのは仕方がない…そう思っていた市場に、意外な原理で自動化を実現した小型装置が登場したのは、2013年のことでした。

それが、iBind™ Western Systemです。

「その発想はなかった」、毛細管現象でウェスタンブロッティングを自動化

iBind™ Western Systemは、独自の新技術Sequential lateral flow(SLF)を用いて、ブロッキングから二次抗体反応後の洗浄までのプロセスを自動で行える装置です。反応中は完全なハンズフリーで、準備を終えたら静置しておくだけです。

iBind Western System

図3:iBind™ シリーズ
(左:iBind™ Flex Western System、右:iBind™ Western System)

この装置の登場まで、ブロッキングから二次抗体反応後の洗浄までのプロセスを自動で行うには、BenchPro™ 4100のように溶液を自動交換したり振とうしたりするための電源が必要で、機器も大型でした。しかしiBind™ Western Systemは電源が不要で、小型で軽く、振とうする必要ももちろんなく、さらに廃液の処理も必要ありません。

では、いったいどうやって、この装置は二次抗体反応後の洗浄までを実施しているのでしょうか。

その秘密は、iBind™ Cardsグラスファイバーと、毛細管現象が握っていました。

秘密を解明する前に、iBind™ Western Systemセッティングの流れを紹介しておきましょう(図4)。まずiBind™ Western System本体に、専用のiBind™ Cardsをセットします。次にふたを閉じ、ウェルと呼ばれる溝に溶液を添加した後、2.5時間から一晩静置します。これだけのステップで、ブロッキングから検出の直前までのステップがすべて終了します。

図4:iBind™ Western System使用の流れ
(※ここに示したのは大まかな流れのため、使用時は必ずユーザーマニュアルをご参照ください)

準備は数分で終わり、複雑な操作もしないので、誰でも同じ結果が得られるようにデザインされています。

では、この2.5時間から一晩静置の間、iBind™ Western Systemの中では何が起こっているのでしょうか。
反応中のiBind™ Western Systemを側面からのぞいてみましょう(図5)。
iBind Western System2

図5:iBind™ Western System による自動化の秘密:SLFシステム

iBind™ Western Systemでは、反応前に、4つのウェルへ抗体溶液やiBind™溶液(洗浄とブロッキングの両方の効果を兼ね備えた試薬)を添加します。本体のふたをした後は、まず一次抗体溶液が、iBind™ Cardsのグラスファイバーと機械的圧力により、一定の速度・順番で流れていき、メンブレン上の抗原と反応します。一次抗体溶液が流れ終えると、次にiBind™溶液が同様に一定速度で浸透を始め、洗浄が行われます。iBind™溶液が流れ切った後は、出番を待っていた二次抗体溶液、iBind™溶液が同様に毛細管現象で浸透していきます。ウェルから添加した溶液がすべて流れ終えると、反応終了です。

反応終了の目安はふたをしてから2.5時間後ですが、メンブレンがグラスファイバーや本体と密着しているため、一晩置いてもメンブレンが乾いてしまうことはありません。よって、2.5時間がたった直後に慌ててiBind™ Western Systemへ駆け寄る必要はないため、反応終了後は実験の都合に合わせてゆっくりとメンブレンを回収できます。

後片付けもラクチンです。iBind™ Cardsを廃棄してウェルを洗うだけ、数分で終わります。使用しないときは、小型で軽いので引き出しにしまっておくことも可能です。

この「毛細管現象を利用した自動化」という意外な発想から生まれたiBind™ Western Systemは、今でもどこかのラボで研究者たちを助けています。

ウェスタンブロッティングで手間がかかるステップは、毛細管現象に任せれば楽に行える

単純作業にもかかわらず手間がかかる「ブロッキングから抗体反応終了後の洗浄まで」のステップは、毛細管現象を利用したiBind™ Western Systemに任せれば、手軽に、かつ楽に実施できるようになりました。
ウェスタンブロッティングの短時間化と自動化は日々進化しています。iBind™ Western Systemのほかにも、転写を7分という短時間で実施できるInvitrogen™ iBlot™2 Gel Transfer Deviceなど、多くの便利な機器が今も研究者たちを支えています。

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研究用にのみ使用できます。診断目的およびその手続き上での使用はできません。

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