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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 時短で簡便、高転写!ウェスタンブロッティング転写装置iBlot3の開発秘話

時短で簡便、高転写!ウェスタンブロッティング転写装置iBlot3の開発秘話

Written by LatB Staff | Published: 04.27.2023

ウェスタンブロッティングで使用するタンパク質を転写する装置は、1979年のTowbin1らの研究から始まり、ウェット式、セミドライ式、そしてドライ式と、短時間や簡便さ、高い転写効率を求めて進化を続けてきました。この歴史の流れは、前回のブログにてご紹介しています。

2023年4月に当社が新しく発売したInvitrogen™ iBlot™3 Transfer Systemも、その開発の歴史を受け継いだ機器です。また、研究者の皆さまからの「こんなことができたらいいのに」という声が存分に詰めこまれており、転写時間は最短3分、かつウェット式転写と同等かそれ以上の転写効率が実現したシステムでもあります。

このブログでは、研究者の皆さまの声が形になった新しいiBlot3システムをご紹介します。

▼もくじ

  • 時間と転写効率がトレードオフだった、旧来のウェスタンブロッティング
  • 転写効率を犠牲にすることなく3分で転写完了、iBlot3システム
  • 短時間装置の登場で、ウェスタンブロッティングは格段に楽に
  • まとめ

時間と転写効率がトレードオフだった、旧来のウェスタンブロッティング

ウェット式やセミドライ式しか選べなかった時代は、30分から1時間の転写が必要でした。かつてウェスタンブロッティングは工程の長い作業で、丸一日かかるのが当たり前。何とか短縮できるステップを探したものですが、ウェスタンブロッティングの転写時間を短縮すると、転写効率も落ちてしまうという困った点がありました。

こういった状況は、2000年代前半に市場初めての高速転写装置Invitrogen™ iBlot™システム、さらに2013年頃にInvitrogen™ iBlot™2システムの登場で、劇的に改善されました。転写時間は7分に短縮され、かつ、「転写効率が高い」と言われるウェット式と変わらない転写効率が得られるようになったのです(図2)。

左:iBlot Gel Transfer Device (2013年販売終了) 右:iBlot 2 Gel Transfer Device(2023年5月販売終了)

図1:左:iBlot Gel Transfer Device (2013年販売終了) 右:iBlot 2 Gel Transfer Device(2023年5月販売終了)

iBlot 2システムとウェット式転写装置の転写効率の違い

図2:iBlot 2システムとウェット式転写装置の転写効率の違い

これらの登場により、転写時間と転写効率がトレードオフになる時代は終わりを迎えました。しかし、開発に携わる人々は思考を止めることなく考え続けていたようです。確かに改善されたけれど、7分という転写時間で果たしてユーザーの皆さまは満足されているのだろうか。もしさらに短時間が必要なら、トレードオフにならないように転写効率も何とか維持できないか?そんなシステムがあれば、もっともっと研究者の役に立てるのではないか。

そこで、当社は、2022年に、ウェスタンブロッティングの転写において研究者の皆さまが何を重視しているかアンケートを実施しました。結果は、「転写効率」を重視している人が最も多く、次に「転写時間」「転写装置の使いやすさ」が並びました。

この結果を受けて、開発者たちは、研究者が求めるこれらの要素をすべて詰め込んだ機器を作ってしまおうと考えました。それが形になったのが、iBlot3システムです。

転写効率を犠牲にすることなく3分で転写完了、iBlot3システム

iBlot 3 Gel Transfer Device

図3:iBlot 3 Gel Transfer Device

さて、研究者の皆さまの声から完成したiBlot3システムですが、特長は以下のとおりです。

  • ミニゲル(8cm×8cm)4枚、ミディゲル(8cm×13.4cm)2枚まで一度に転写可能
  • 2つの異なるプログラムを同時に実行できるという、1台でiBot2×2台分の機能
  • 転写時間は最短で3分
  • ターゲットタンパク質の分子量に応じたプリセットプログラムが搭載
  • iBlot2と同等か、それ以上の転写効率
  • 転写中にクーリングできる機能を新たに搭載
  • iBlot2と同様に使用後のクリーニングが簡便

「使いやすさ」という点から考えると、iBlot2システムはすでに使いやすく簡便な装置でした。iBlot3は、そのiBlot2と使い方が大きく変わらず、専用のスタックを載せ、ふたをしてプログラムを実行するだけ。それに加え、iBlot3ではミニゲル4枚まで一気に転写でき、かつ、同時に2つの異なる転写条件を走らせることができるようになりました。使いやすさを維持したまま、汎用性をさらに拡大したのです。

次に「短時間」「転写効率」です。これらは気になる人も多いと思いますので、まずデータからご紹介しましょう。

iBlot 3システムと、セミドライ式、ウェット式の転写効率の違い

図4:iBlot 3システムと、セミドライ式、ウェット式の転写効率の違い

図4は、2種類のタンパク質について、iBlot3システム、セミドライ式、ウェット式で転写効率を比較した結果です。iBlot3システムで6分転写(左)、3分転写(右)のいずれの結果でも、セミドライ式7分やウェット式60分と同等かそれ以上の転写効率が得られているのがわかります。また、このブログにデータは示していませんが、両タンパク質において、iBlot2システムの7分転写よりも、iBlot3システムの6分転写の方が転写効率が高かったこともわかっています。

また、iBlot3システムでは高分子タンパク質の転写ももちろん可能です。図5は、30V、8分というiBlot3にプリセットのプログラムで300 kDa前後のタンパク質を転写した結果です。時間を延長することで良好な転写が得られましたが、延長したと言っても3分が8分になっただけです。十分に短い時間で高分子タンパク質転写ができると言えます。

iBlot 3システムによる高分子タンパク質の転写結果

図5: iBlot 3システムによる高分子タンパク質の転写結果

では、なぜiBlot2システムからさらに時間が短縮されたのに、iBlot3システムでは高い効率で転写ができるのでしょうか?その秘密は、スタックのバッファー組成やシステムにあります。

<iBlot3システムで、短時間転写が実現し、かつ転写効率が改善した主な理由>

  • 電極間の距離を短くし、かつ電界強度が高くなるように設計
  • トランスファースタック内のイオン強度を高く変更
  • 電場のイオン強度が高いと熱が発生しやすくなるが、これを抑えるためのクーリング機能を搭載
  • ふたの圧力調整によりバッファーがスタック内に留まりやすくなるよう改善

 このように、iBlot3システムはいくつかの工夫を組み込んで、「使いやすく」、「短時間」で、そして「高い転写効率」という、研究者の皆さまが重視しているポイントをすべて詰め込んだシステムとして完成しました。

なお、iBlot3で必要な消耗品は、専用のスタックのみ。どなたでも迷うことなく使用ができます。こちらから簡易マニュアルが、こちらから動画がご覧いただけます。デモをご希望の場合はこちらからご依頼ください。

短時間装置の登場で、ウェスタンブロッティングは格段に楽に

当社は、ウェスタンブロッティングの関連製品の名称の頭に「i」を入れたシリーズを販売しています。いずれも、煩雑で時間がかかると歴史的に言われてきたウェスタンブロッティングの工程を、「より手軽に、よりスピーディーに」できるように工夫された製品です。ウェスタンブロッティングの工程

煩わしい抗体抗原反応を研究者の代わりに自動で進めてくれるのが、Invitrogen™ iBind™ Western Systemです。また、Invitrogen™ iBright™ Imaging Systemは、最適な露光時間を先読みして設定できるSmart Exposure機能や自動画像調整機能が搭載されており、化学発光検出や蛍光マルチプレックス検出※ができる装置です。
※機種によって異なります。

iBrightシステムは感覚的に画面操作ができ、解析ソフトウエアも無料で付属しています。その使いやすさから、多くのお客さまにご愛用いただいております。ご購入前のデモも可能ですので、デモをご希望の場合はこちらからお問い合わせください。

研究者の皆さまが頭を悩ませる「ウェスタンブロッティングの煩雑さ」や「長時間の手作業」は、これらの装置が解決させていただきます。

まとめ

iBlot3は、高い転写効率・わずか3分の転写・使いやすさを兼ね備えた次世代機

研究者の皆さまが求める要素、「転写効率」「転写時間」「使いやすさ」、これらすべてを兼ね備えた機器として、iBlot3は開発されました。ウェスタンブロッティングは手作業だと長い時間と手間がかかる手法です。iBlot3のような装置で、ぜひ研究を少しでも楽に進めてみてください。

参考文献:
1. Towbin, H. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA, 76, 4350 (1979)

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