Thermo Scientific XPS装置の主な特長

X 線光電子分光装置(XPS)は、化学分析用電子分光法(ESCA)としても知られ、表面感度が非常に高い定量化学分析手法の1つであり、さまざまな材料の問題解決に利用することができます。 XPSは、X線を照射して材料表面から放出される光電子を測定します。 表面付近で生成された電子のみが、検出のための運動エネルギーを過度に損失することなく脱出できます。 つまり、XPSデータは表面の最上層数ナノメートルから収集されるということです。 このような表面選択性と定量的な化学状態同定の組み合わせにより、XPSは幅広い応用分野において非常に有用です。


Avantage表面分析用ソフトウエア

最新のXPS装置においてもっとも重要な構成要素の1つがソフトウエアであり、操作、データ解釈、レポート作成のすべての側面を処理します。 すべてのThermo Scientific XPSシステムは、装置の制御、データ処理、およびレポート作成にThermo Scientific Avantageソフトウエアを使用しています。 専用研究ラボで作業する場合にも、マルチユーザー環境で使用する場合にも、能力レベルを問わずあらゆるアナリストが、Avantageソフトウエアの柔軟性、機能セット、直感的な操作を活用して、サンプルから最大限の情報を引き出すことができます。

  • すべての Thermo Scientific表面分析システム用装置制御:
    • Thermo Scientific K-Alpha XPSシステム
    • Thermo Scientific ESCALAB QXi XPSマイクロプローブ
    • Thermo Scientific Nexsa G2表面分析システム
  • 複数技術の統合など、柔軟性の高い実験設計
  • SEMコリレーションのための分析位置のインポートおよびエクスポート
  • データ解析およびレポートを含む自動データ取得
  • データ解釈のためのThermo Scientificナレッジビュー、参考文献、およびインテリジェントアルゴリズム
  • 高度なデータ整理ツール
  • レポート作成ソフトウエアへのエクスポートを容易に実行

Avantageソフトウエア用ナレッジビュー

表面および界面の複雑な構造を解明することは、特にXPSおよび表面分析の初心者にとって、困難に感じられる場合があります。 Avantageソフトウエア内では、以下のような分析プロセスのあらゆる側面に対し、ナレッジビューが包括的なガイドとして機能します:

  • 試料取り付け
  • 実験設計
  • データ処理
  • 材料別ワークフロー
  • 元素別ガイド

ナレッジビューは表面分析の数十年にわたる経験を基に構築されています。Avantageソフトウエア内でいつでも利用でき、作業に最高レベルの成果をもたらします。


超高真空システム

放出された光電子がガス分子との衝突によってエネルギーを失うことなく表面から検出器まで移動できるようにするため、および分析中の試料表面の清浄度を維持するためには、分析チャンバー内に超高真空(UHV)が必要です。 UHV状態は通常、複数のポンプを組み合わせて使用し、真空チャンバーからガス分子を除去することで得られます。 分析チャンバーを空気に曝すことなく試料を導入できるよう、通常はシステムにロードロック室または予備排気室が取り付けられています。 メンテナンスのために分析チャンバーをベントする必要がある場合、通常は100℃以上の温度に加熱しながら真空排気を行い、到達可能な真空度を制限する要因になる吸着水を除去します。


XPS X線源

最新のラボ用機器では、一般的にX線の光子エネルギーの拡散が狭い単色X線源を使用しているため、スペクトルピークの分解能が向上します。 X線は通常、アルミニウム標的への電子衝撃によって生成されるAl K-α線です。 X線は、目的の光子エネルギーのブラッグ回折に適した格子間隔を持つ石英結晶を使用して単色化されます。 結晶は通常、X線を試料上のポイントに再収束させるような形状になっています。


電子分析器

電子分析器は、レンズシステム、半球型分析器、検出器で構成された複合部品です。 レンズは放出された光電子を収集し、それらを誘導・収束して分析器の入射口に導入します。 半球型分析器はバンドパスフィルターとして機能し、特定の運動エネルギー(パスエネルギー)を持つ光電子を検出器に到達させます。 パスエネルギーを上回るエネルギーを持つ電子は外側の半球に衝突し、それより運動エネルギーが低い電子は内側の半球に衝突します。 検出器は信号をカウントします。 データは、検出器に到達できる運動エネルギーを一定の範囲で変化させてスペクトルを作成することにより、連続的に収集されます。


XPS分析用イオン源

イオン源は、外来性コンタミネーションの洗浄またはデプスプロファイリングのために、試料表面から物質を穏やかに除去するために使用されます。 従来、ほとんどのXPSシステムには単原子イオン源が搭載されており、これらは表面を単一イオンで照射するものでした。 これらのタイプの電子線源は、XPSシステムの標準装備です。 しかし、単原子イオンビームはポリマーやその他の一部の材料に損傷を与える可能性があります。 オプションのThermo Scientific MAGCISイオン源などのガスクラスターイオンビーム(GCIB)を使用できるイオン源では、この問題を回避できます。 GCIBイオン源は、単一イオンの代わりに、1つの荷電粒子しか含まないガス原子の大きなクラスター(通常約2,000個の原子)を使用して表面を衝撃します。 これにより、表面の化学的状態へのダメージが最小限に抑えられ、他の分析方法では不可能な材料の深さ方向分析が可能になります。


XPS分析における電荷中和

絶縁材料分析に不可欠な装置が、低エネルギー電子フラッド銃です。 これは、放出された光電子を補充し、スペクトルの歪みの原因になる表面での正電荷の蓄積を防止することで、絶縁性試料の分析を可能にします。 フラッドガンがなければ、酸化物、ポリマー、その他の非導電性材料の高分解能スペクトルを取得することはできません。


XPS装置での試料の取り扱いと観察

試料ホルダーの大型化により、一度に複数の試料を装置に導入できるようになったことで、試料の自動装填と位置決めがXPSシステムの重要な機能となっています。 この機能により、自動操作とリモート操作の両方が可能になり、ツールの分析能力が向上します。 試料の取り扱い機能に加えて、目的の特徴を特定するために、システム内の試料を光学的に観察できることも重要です。 通常、装置は試料間のナビゲーションにはサンプルホルダー全体の保存された画像を使用し、精密な位置決めにはチャンバー内でのライブ映像を使用します。

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.