高難度材料分析を可能にするIliad (S)TEMの特長

Thermo Scientific Iliad (S)TEMは、様々な機能が一体化していることから、これまで難しかった先端材料における科学的な理解を可能にする微細構造解析が可能になります。例えば精緻なドーズ量コントロールや高度な分光機能は、低電子線耐性試料の微細構造評価に最適です。


優れたEELS性能を実現する高度光学系の統合

EELS光学系では、顕微鏡と分光器の両方において、試料から検出器まで、幅広い電子エネルギーを同時に伝達し、色収差や収差を発生させずに検出するという課題があります。これは、特に顕微鏡と分光計が別々である場合、各装置および各装置間での調整が必要となり、容易な作業ではありません。

LaMnO3/LaFeO3界面の原子分解能EELS元素マップ。

顕微鏡と分光器の光学系を密接に統合し、顕微鏡の色収差の影響を除いてスペクトルの焦点を分光器検出面に一致させることによってのみ実現できます。このような状況を私たちはカメラ長やdispersion、エネルギーオフセットを変更しても達成できるシステムを開発し、さらに改良された分光プリズムや10個の多極子によって、より優れたEELSスペクトルを取得できるようなシステムを作り上げました。当社のEELS分光器およびエネルギーフィルターは、改良された光学系と高い安定性の相乗効果によりTEM光学系との一体化に成功し、より優れたEELSデータ収集を可能にしました。

Tbは緑色で、Scは赤色で示されている、TbScO3の原子分解能EELS元素マップ。


NanoPulser静電ビームブランカー

ビームブランカーは、電子線量を最適化するために電子顕微鏡で使用されます。電子ビームを効果的に高周波数でブロックまたはブランキングすることにより、電子ビームのオン・オフを繰り返します。TEMでは通常、ミリ秒単位の応答時間しか持たず、静電偏向器ほど再現性が高くない磁場偏向器が使用されます。静電ビームブランカーであるNanopulserは、試料に照射される電子線量を正確に時間制御することができ、ドーズ量量最適化研究などの幅広い用途に対応します。 

(左)従来のSTEM設定(ブランキングなし)と、(右)ブランキングありのビームを使用した試料上での電子ビームスキャン模式図。ビームブランカーがオンの時、ビームの50%はブランキングされ、フライバック(次のラインに移る際のビーム)は完全にブランキングされます。


Veloxソフトウェア

透過型電子顕微鏡用の最先端のThermo Scientific Veloxソフトウェアは、実験を包括的にコントロールできます。このソフトウェアはTEMおよびSTEMの光学系および検出器へのアクセスを容易にし、再現性と生産性を向上させ、TEMおよびSTEMの定量的な微細構造評価をサポートします。

 

Veloxソフトウェアは、統合された人間工学に基づくユーザーインターフェースと使いやすさで定評があり、高品質のイメージングや組成分析などを一元管理することができます。またSmartCam(蛍光板と同等のカメラ)もVelox上使用でき、実験のセットアップも効率的に行えます。さらに、視覚的に装置の状況を把握し直接操作することができる検出器レイアウトインターフェースを備えており、複数の検出器を用いた実験であっても、混乱することはありません。Veloxソフトウェア上で、DPC/iDPCといった特殊な観察手法も実行できるうえに、in-situ観察などでの動画取得においてもスムーズに対応することができます。

EELSおよびEDS分析もVeloxソフトウェア上で完結

Veloxソフトウェアは、Thermo Scientific EDS検出器での電子エネルギー損失分光法とエネルギー分散型X線分光法用のパッケージを装備しています。この堅牢なマッピングエンジンは透過型電子顕微鏡用に最適化された複数の技術を統合し、クラス最高レベルのスペクトル画像を高スループットで取得します。また、このソフトウェアは、EELSおよびEDSデータの取得中のライブフィードバックと高速な後処理も提供します。

 

Veloxソフトウェアはこのような化学分析だけではなく、S/TEM観察における装置制御や品質向上、汎用性を一元的に管理できる強力なソフトウェアで、微細構造評価を効率的に行うことができます。

高エネルギー分解能電子線源

The Iliad (S)TEMは、高エネルギー分解能X-FEG/Monoまたは超高エネルギー分解能X-FEG/UltiMono電子線源の構成オプションも選択可能です。どちらの線源も、EELS実験に必要な最適なエネルギー分解能を自動的に調整します。30~300 kVで動作し、STEM-EDSマッピング、EELS、および超高分解能STEMなどの多様な実験に対応します。

冷陰極電界放出電子銃

Iliad (S)TEMでは、高輝度かつ高エネルギー分解能を有する冷陰極電界放出電子銃(X-CFEG)をオプションとして選択できます。30~300 kVで動作し、高いプローブ電流で高分解能STEMイメージングを実現します。X-CFEGでは、プローブ電流とエネルギー分解能を柔軟に調整することができ、さまざまな実験に利用できます。チップのフラッシングは使用する日毎に1回必要で、空間分解能やチップの寿命には影響しません。X-CFEGは、輝度の高い平行ビームを用いたTEMイメージングにも最適です。

STEMイメージングの性能

X-FEG/MonoまたはX-FEG/UltiMonoエネルギー源を搭載したliad (S)TEMは、市販で利用できるものの中で最高レベルのSTEM分解能仕様を実現しています。向上した機械的安定性、5次プローブ収差補正、および高分解能ワイドギャップポールピースを備えており、30 pAまたは100 pAのプローブ電流(X-CFEGを使用)により、300 kVで50 pm、60 kVで96 pm、30 kVで125 pmの分解能を実現します。

Panther STEM検出システム

Iliad (S)TEMでのSTEMイメージングは、Panther STEM検出システムにより大きく改善されています。このシステムは、16セグメントの2つの新しい半導体検出器を備えており、高度なイメージング機能と単電子感度を実現しています。最適化されたシグナルチェーンと低線量イメージングにより、低電子線耐性材料のイメージングが可能になる上、は、検出器セグメントの組み合わせや複数のシグナルの同期による拡張性の高いイメージングを可能にし、革新的なSTEM観察を実現します。

4D STEMカメラ

Iliad (S)TEMは、4D STEMデータを取得するための電子顕微鏡ピクセルアレイ検出器(EMPAD)または高速化されたThermo Scientific Cetaカメラを選択可能です。

 

EMPADは、広いダイナミックレンジ、高いS/N比、および高速データ取得を可能にするため、4D STEMアプリケーションに最適です。Cetaカメラでは、より高分解能の回折パターンの取得が可能となり、歪測定やCBED測定に適しています。詳細はEMPADデータシートを御参照ください。

Lorentz顕微鏡法

Iliad (S)TEMは、無磁場モードでの磁気構造研究に活用できます。試料室全体にわたって磁場をほぼゼロにすることが可能で、TEMモードおよびSTEMモードのどちらでも観察可能です。無磁場状態におけるDPCやタイコグラフィーなどの高分解能観察を行うことができます。また、磁場を印加しながらの観察も行えるため、実際の動作条件下での状態を観察することもできます。

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.