マイクロアレイを使用した遺伝子発現解析は現在もっともポピュラーな方法で、発現比較研究やバイオマーカー探索に広く使用されてきた実績があります。近年も、選択的スプライシングやIncRNA解析を中心にアレイは広く使用されており、マイクロアレイは遺伝子発現解析の中心プレーヤーであるといえます。
今回のブログでは、GeneChip™ 3′ IVT Pico Kit のサンプル調製に関する手引きをご紹介します。GeneChip™ 3′ IVT Pico Kit は、わずか10細胞を用いて3′ IVTアレイにおけるゲノムワイドの発現を正確かつ精密に解析するための高感度な標的サンプル調製法です。この簡易プロトコルを参考に、若い研究者さま方にも改めて、GeneChip WT アレイのサンプル調製に関するあれこれを広く知っていただければと思います。
対象製品:Applied Biosystems™ GeneChip™’ 3′ IVT Pico Kit
対象製品番号:902789(12反応分)、902790(30反応分)
公式ユーザーガイドと併せてご覧ください。
※GeneChip™ 3′ IVT Pico Kitにはマイクロアレイは付属しません。GeneChip™ 3′ IVT Pico Kitとマイクロアレイのセット品、もしくはGeneChip™ 3′ IVT Pico Kitに対応するマイクロアレイをご購入ください。マイクロアレイと試薬の選択についてはExpression Microarray Reagent Guideをご参照ください。
・100%エタノール
・Applied Biosystems™ GeneChip™ Hybridizatoin, Wash, and Stain kit (製品番号 900720(30反応分))
IMPORTANT:
Total RNA容量は5 μL以下にする必要があります(poly-A RNA controlsを使用する場合は3 μL以下)。
TIP:PCRのサイクル数に関して
Total RNAサンプルの品質が低く、このキットを用いてcRNAの収量が十分に得られなかった場合、Table Cのサイクリングガイドラインのサイクル数を1~2回増やすとcRNAの収量が改善することがあります。
TIP:試薬調製に関して
・キットの凍結融解は3回以下で使用してください。
・酵素類は穏やかにボルテックスにかけて混合してください。バッファー類は沈殿物がなくなるまで、ボルテックスにかけてよく混合してください。
・マスターミックスやサンプルは穏やかにボルテックスにかけて、よく混合した後に素早くスピンダウンして、溶液を集めてください。
・マスターミックスはピペッティングによるロスに備えるために10%程度過剰に調製してください。
・反応後はサンプルチューブを簡潔にスピンダウンし、次のステップに進む前には氷上に置いてください。
・酵素をマスターミックスに加えるのは反応を行う直前に行うようにしてください。
1. 使用するTotal RNA量に応じて、Poly-A RNA Controlsを希釈してください。
TIP:希釈する時は正確性や一貫性を維持するために2 μL未満の容量でのピペッティング操作は避けてください。
2. 希釈したPoly-A RNA ControlsとTotal RNAサンプルを混ぜます。合わせて5 μLになるように調製してください。
1. 氷上でマスターミックスを調製します。
2. 氷上で反応に使用するチューブへマスターミックス5 μLを分注し、Table 2で作成したTotal RNA/Poly-A Control Mixtureを加えます。
3. First-Strand cDNA Synthesis program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて25℃で5分、42℃で60分、4℃で2分以上の反応を行います。
4. 反応終了後は速やかにCleanupの工程へ進みます。
5. 氷上で各cDNAサンプル10 μLにWT Pico Clean up Reagent 2 μLを加えます。ピペッティング操作で2回注意深く混ぜた後、泡が立たないように混ぜ、スピンダウンを行います。
6. Cleanup program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて37℃で30分、80℃で10分、4℃で2分以上の反応を行います。
1. 氷上でマスターミックスを調製します。
NOTE:マスターミックスを調製している間にサーマルサイクラーのブロック温度を15℃にあらかじめ冷却しておきます。また、サーマルサイクラーのふたについては、加熱を止めるか、ふたの温度制御ができないサーマルサイクラーの場合はふたを開けたままで反応してください。
2. 氷上で反応に使用するFirst Strand cDNAサンプル12 μLにマスターミックス8 μLを加えます(Total volume 20 μL)。
3. 3’ Adaptor cDNA Synthesis program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて15℃で15分、35℃で15分、70℃で10分、4℃で2分以上の反応を行います。
1. 氷上でマスターミックスを調製します。
2. 氷上で各3’ Adaptor cDNAサンプル20 μLにマスターミックス30 μLを加えます(Total volume 50 μL)。
3. Pre-IVT Amplification program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて95℃で2分、6 or 9 or 12 cycles数にて94℃で30秒と70℃で5分の反応を行い、最後は4℃で2分以上置きます。サンプルタイプとTotal RNAインプット量に基づくPCRサイクルのガイドラインについては、Table Cを参照してください。
4. 反応終了後は速やかにIn Vitro Transcription反応に進みます。
1. マスターミックス調製時、Double-Strand cDNAサンプルは室温に5分以上置きます。
2. 室温でマスターミックスを調製します。
NOTE:IVT Bufferを10分以上室温に置いてから、マスターミックスを調製してください。
3. 室温で各Double-Strand cDNAサンプル50 μLにマスターミックス30 μLを加えます(Total volume 80 μL)。
4. In Vitro Transcription cRNA program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて40℃で14時間の反応を行います。
5. 反応終了後はcRNA精製に進むか、速やかに冷凍保存します。
TIP:In Vitro Transcriptionの14時間の反応は、16時間まで延長が可能です。
TIP:STOPPING POINT~cRNAサンプルは-20℃で一晩保存できます。
cRNA精製を始める前に:
・少なくとも10分間はNuclease-free Waterを65℃にあらかじめ加温しておきます。
・精製ビーズは使用前によく混合しておきます。適当量を分割して室温で保持します。各反応サンプルに対して
140 μL+10%過剰量が必要になります。
・80%エタノール洗浄液は必ず用時調製します。各反応サンプル対して600 μL+10%過剰量が必要になります。
NOTE:すべての工程を室温で行います。
精製ビーズへのcRNA結合
精製ビーズの洗浄
cRNAの溶離
TIP:STOPPING POINT~精製されたcRNAサンプルは-20℃で一晩保存できます。長期保存する場合は、-80℃で保存します。
Thermo Scientific™ NanoDrop™ Spectrophotometerなどの測定機器で260 nmの吸光度測定を行って、cRNAサンプル濃度を測定します。次の工程に進むためには、20 μg以上(833 ng/μL以上)のcRNAが必要です。
1. 氷上でNuclease-free Waterを使ってcRNA 20 μgを24 μL容量に調整します。
2. 氷上でマスターミックスを調製します。
3. 氷上で各cRNAサンプル24 μLにマスターミックス16 μLを加えます(Total volume 40 μL)。
4. 2nd-Cycle ss-cDNA Synthesis program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて25℃で10分、42℃で50分、70℃で10分、4℃で2分以上の反応を行います。
5. 速やかにRNA Hydrolysisに進みます。
1. 氷上で各2nd-Cycle ds-cDNAサンプル40 μLにPico Hydrolysis Buffer 7 μLを加えます。
2. よく混合した後、スピンダウンします。
3. RNA Hydrolysis program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて65℃で20分、4℃で2分以上の反応を行います。
4. Hydrolyzed 2nd-Cycle ds-cDNAサンプルを氷上に置きます。
5. 氷上で各Hydrolyzed 2nd-Cycle ds-cDNAサンプル47 μLにPico Neutralization Buffer 10 μLを加えます(Total volume 57 μL)。
6. よく混合した後、2nd-Cycle ds-cDNA精製に進むか、速やかに冷凍保存します。
TIP:STOPPING POINT~Hydrolyzed 2nd-Cycles ds-cDNAサンプルは-20℃で一晩保存できます。
ds-cDNA精製を始める前に:
・Nuclease-free Waterをあらかじめ65℃で少なくとも10分間加温しておきます。
・精製ビーズは使用前によく混合しておきます。適当量を分割して室温で保持します。各反応サンプルに対して100 μL+10%過剰量が必要になります。
・80%エタノール洗浄液は必ず用時調製します。各反応サンプル対して600 μL+10%過剰量が必要になります。
NOTE:すべての工程を室温で行います。
精製ビーズへのds-cDNA結合
精製ビーズの洗浄
ds-cDNAの溶離
TIP:STOPPING POINT~精製されたds-cDNAサンプルは-20℃で一晩保存できます。
Thermo Scientific™ NanoDrop™ Spectrophotometerなどの測定機器で260 nmの吸光度測定を行って、ds-cDNAサンプル濃度を測定します。次の工程に進むためには、Arrayのタイプごとに下記の量(濃度)のds-cDNAが必要です(Table 8参照)。
・3′ IVT Array:6.6 μg以上(254 ng/ μL以上)
・Applied BiosystemsTM ClariomTM S 400-Format:5.5 μg以上(250 ng/ μL以上)
1. Arrayのタイプに合わせ、氷上でNuclease-free Waterを使ってds-cDNAサンプルを各容量に調整します。
2. Arrayのタイプに合わせ、氷上でマスターミックスを調製します。
3. 各ds-cDNAサンプルに、Arrayのタイプに合わせた量のマスターミックスを加えます。
4. Fragmentation and Labeling program(Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて37℃で60分、93℃で2分の、4℃で2分以上の反応を行い、反応終了後はサンプルを氷上に置きます。
5. 氷上にサンプルを置いてHybridizationに進むか、速やかに冷凍保存します。
TIP:STOPPING POINT~Fragmented and labeled ss-cDNAサンプルは-20℃で一晩保存できます。長期保存する場合は、精製されたds-cDNAで保存することを推奨します。
NOTE:
・試薬が使用前には完全に融解していることを確認してください。DMSOは2~8℃で保存すると固まるので、使用後は室温で保存した方が使いやすいです。
・ここの工程では別途購入していただいたGeneChip Hybridization, Wash and Stain Kitを使用します。
1. 20×Hybridization ControlsをHybridization Control program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて65℃で5分加熱します。
TIP:キットご購入後、最初に65℃で5分加熱した後は1.5 mLチューブに150 μLずつ小分けにして保存しておくことをお勧めします。凍結融解を3回以内に抑えるためです。
2. 室温でHybridization Master Mixを調製します。使用するアレイによって量が異なるため、Table 10Aに従って調製してください。
3. (3′ IVT Array使用時のみ)Arrayのフォーマットに対応した量のPre-Hybridization Mixを Arrayに注入し(Table 10B参照)、Hybridization Ovenで45℃、60 rpmで10~30分のPre-Hybridizationを行います。
4. 室温で、使用するArrayのフォーマットに対応した量のビオチン標識されたds-cDNAサンプルが入ったチューブにHybridization Master Mixを添加して、Hybridization Cocktailを調製します。
TIP:STOPPING POINT~Hybridization Cocktailは-20℃で1カ月程度、-80℃で1年程度保存できます。
5.穏やかにボルテックスにかけて、よく混合します。
6.Hybridization CocktailをHybridization Cocktail program (Table B参照)に従って、サーマルサイクラーにて、99℃(チューブの場合)または95℃(プレートの場合)で5分、45℃で5分加熱します。
7. 加熱後、短時間のスピンダウンを行います。
8. (3′ IVT Arrayを使用時のみ)Pre-Hybridizationを行ったArrayをHybridization Ovenから取り出し、ArrayからPre-Hybridization Mixを抜き取ります。
9.各フォーマットに対応した量をArrayに注入します。注入後は注入口のSeptaにタフスポットを貼ります。
10. Hybridization Ovenで45℃、60 rpmで16時間のHybridizationを行います。
・サンプル情報登録方法やApplide Biosystems™ GeneChip Fluidics Station、Scannerの操作方法については、GeneChip™ Command Console (GCCまたはAGCC) クイックスタートガイドで確認してください。
・ここでは洗浄と染色作業で使用する試薬類の分注作業などを記載します。
1. Fluidics Stationの電源を入れ、Wash A、Wash B、超純水の入ったボトルをセットして、GCC Fluidics Control※を起動し、Primeを開始します。
※AGCC Fluidics Controlとも呼びます。
2. Hybridizationを行っているArrayの枚数に合わせて、Stain Cocktail 1、Stain Cocktail 2、Array Holding Bufferをそれぞれ分注したvialを準備します。
・Stain Cocktail 1 600 μL (遮光チューブ)
・Stain Cocktail 2 600 μL (透明チューブ)
・Array Holding Buffer 800 μL (透明チューブ)
TIP:Stain Cocktail 1用に遮光チューブのご用意が難しい場合は、透明チューブに入れ、使用直前まで遮光の環境下に置いておいてください。
3. Hybridizationが終了したArrayをHybridization Ovenから取り出してタフスポットをはがし、Hybridization Cocktailを回収します(データが確実に取れたことを確認できるまでは-20℃で保存)。
4. GCC Fluidics ControlでWash and Stainを開始します。
ArrayのFormatによって使用するプロトコルが異なります。
また、このタイミングでScannerの電源を入れておきます。
5. Fluidics Stationの液晶画面にEJECT & INSPECT CARTRIDGEが表示されたらArrayを取り出し、ガラス面に気泡がないことを確認し、Septaにタフスポットを貼ります。もし、気泡が認められたら、マイクロピペットを使ってArray Holding Bufferを気泡が入らないように入れ直してからタフスポットを貼ります。
6.GCC Scan Control※を起動し、ArrayのScanを開始します。
※AGCC Scan Controlとも呼びます。
7. Fluidics Stationを続けて使用する予定がなければ、Wash A、Wash Bのボトルを超純水の入ったボトルに交換し、GCC Fluidics ControlでShut Downを行います。Shut Down終了後、GCC Fluidics Controlを閉じ、Fluidics Stationの電源を切ります。
8. ArrayのScanが終了したらGCC Scan Controlを閉じ、Scannerの電源を切ります。
プロトコルに関するご不明点や気になる点はテクニカルサポートまでお問い合わせください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。