【やってみた】洗浄染色用システム利用時の試薬を置き間違えて遺伝子発現解析用アレイのデータを取得してみた―1

このブログではマイクロアレイシステムGCS3000 7G Systemを最近使用し始めたけれども、まだ数回しか使っておらず使い慣れていない方向けに、システム操作でよくあるトラブル事例や対処方法をご紹介します!

GCS 3000 7G Systemについて

Applied Biosystems™ GeneChip™ Scanner 3000 7G Systemは、ハイブリダイゼーションから洗浄、染色、スキャンに必要な機器が統合されたカートリッジアレイ専用のシステムです。システムは、ハイブリダイゼーション装置「Applied Biosystems™ GeneChipTM Hybridization Oven 645」、自動洗浄・染色装置「Applied Biosystems™ GeneChipTM Fluidics Station 450」、そしてスキャナー「Applied Biosystems™ GeneChipTM Scanner 3000 7G」の3種類の装置で構成されています。

これらシステムの中で操作間違いによるトラブルを起こす可能性が高い装置が「GeneChip Fluidics Station 450」です。今回は洗浄試薬をセットする位置を置き間違えた場合に起きる「Missing Fluid Error(Fluid not detected)」についてご紹介いたします。

Missing Fluid Errorとは

Missing Fluid ErrorはFluidics Stationのライン内を通る液体の伝導度(塩濃度)をセンサーが測定し、期待値以上の値になった場合に発生します。コンピューター画面には下図のように、どのFluidics StationのどのPosition(モジュール番号)でエラーが発生したかメッセージが表示されます。

そして、エラーが発生したFluidics Stationのモジュールの液晶画面には“エラーメッセージの内容(Missing Fluid Error)”、“読み取った値と期待値”、“エラーの発生したStage”が順番に表示されます。
※これらのメッセージは非常に重要になるため、エラー発生時は必ず書き留めておいてください。

Missing Fluid Error発生時のモジュール液晶画面:

Wash Buffer A と Wash Buffer Bのボトルを置き間違えた場合

Missing Fluid Error発生時の液晶画面:
→プロトコル開始時はまずWash Buffer Aで洗浄が行われるため、
Wash Buffer A と Wash Buffer Bのボトルを置き間違えた場合は
開始後すぐにMissing Fluid Errorが発生します。
電気伝導度の測定値はWash Buffer B を検知しており、500~600台の数値を示します。

対処方法:
各モジュールにセットしているアレイをWash Blockから取り出し、アレイ内をWash Buffer Aに置換、遮光条件下で保管します。4℃遮光条件下では3時間保管可能です。
また、染色試薬およびArray Holding Bufferのチューブはモジュールから一旦取り外して遮光条件下で保管します。
Wash Buffer AとWash Buffer Bのボトルを正しい位置にセットしてから、PRIME450プロトコルを実施し、ライン内を正しいBufferに置換します。そのあとに再度各アレイに適した洗浄染色プロコルを実行します。エラーが発生した工程から再開する際は、再開する工程がエラーの起きたStageであることを確認し、Resumeボタンを押して再開します。

<洗浄染色終了後のスキャン結果>

<同一サンプルで正常に洗浄染色が終了したときのスキャン結果>

◇SST-RMAによるNormalization後の両アレイ結果のシグナル相関係数(Pearson’s Correlation):0.993

Wash Buffer A、Bのボトルのセットを忘れて、DI Waterのボトルをセットしたままの状態で洗浄染色を実行した場合


Missing Fluid Error発生時のモジュール液晶画面:

→プロトコル開始時はまずWash Buffer Aで洗浄が行われるため、
Wash Buffer A と DI waterのボトルを置き間違えた場合は
開始後すぐにMissing Fluid Errorが発生します。
電気伝導度の測定値はDI waterを検知しており、900台の数値を示します。

原因:洗浄染色の最初の工程はWash Buffer Aを用いた洗浄が行われますが、Wash Buffer A のボトル位置にDI waterのボトルをセットしたため、Wash Buffer Aのライン内をDI waterが流れ、Missing Fluid Errorが発生します。

対処方法:
各モジュールにセットしているアレイをWash Blockから取り出し、アレイ内をWash Buffer Aに置換、遮光条件下で保管します。4℃遮光条件下では3時間保管可能です。
また、染色試薬およびArray Holding Bufferのチューブはモジュールから一旦取り外して遮光条件下で保管します。
Wash Buffer AとDI Waterのボトルを正しい位置にセットしてから、PRIME450プロトコルを実施し、ライン内を正しいBufferに置換します。そのあとに再度各アレイに適した洗浄染色プロコルを実行します。エラーが発生した工程から再開する際は、再開する工程がエラーの起きたStageであることを確認し、Resumeボタンを押して再開します。

<洗浄染色終了後のスキャン結果>

→Missing Fluid Errorが発生するまでにDI Waterがわずかにアレイ内に入ったことで、プローブが剥がれてしまい蛍光強度がやや低くなったと考えられます。

<同一サンプルで正常に洗浄染色が終了したときのスキャン結果>

◇SST-RMAによるNormalization後の両アレイ結果のシグナル相関係数(Pearson’s Correlation):0.984

Wash Buffer BとDI Waterのボトルを置き間違えた場合


Missing Fluid Error発生時のモジュール液晶画面:

→プロトコルを開始すると、Wash Buffer Aで洗浄後はWash Buffer Bでの洗浄が行われます。Wash Buffer BとDI Waterのボトルを置き間違えた場合はWash Buffer Bでの洗浄時にMissing Fluid Errorが発生します。
電気伝導度の測定値はDI Waterを検知しており、900台の数値を示します。

原因:洗浄染色のWash Buffer Aでの洗浄後は、Wash Buffer Bでの洗浄が行われるが、Wash Buffer B のボトル位置にDI waterのボトルをセットしたため、Wash Buffer Bのライン内をDI waterが流れて、Missing Fluid Errorが発生した。

対処方法:
各モジュールにセットしているアレイをWash Blockから取り出し、アレイ内をWash Buffer Aに置換、遮光条件下で保管します。4℃遮光条件下では3時間保管可能です。
また、染色試薬およびArray Holding Bufferのチューブはモジュールから一旦取り外して遮光条件下で保管します。
Wash Buffer BとDI Waterのボトルを正しい位置にセットしてから、PRIME450プロトコルを実施し、ライン内を正しいBufferに置換します。そのあとに再度各アレイに適した洗浄染色プロコルを実行します。エラーが発生した工程から再開する際は、再開する工程がエラーの起きたStageであることを確認し、Resumeボタンを押して再開します。

<洗浄染色終了後のスキャン結果>

→Missing Fluid Errorが発生するまでに数回DI Waterでの洗浄が行われてしまったためプローブが剥がれてしまい、全体的に蛍光強度が低くなっています。
このような場合にはハイブリダイゼーション工程からのやり直しを推奨します。

<同一サンプルで正常に洗浄染色が終了したときのスキャン結果>

◇SST-RMAによるNormalization後の両アレイ結果のシグナル相関係数(Pearson’s Correlation):0.652

各ボトルをセットしている位置は正しいのにMissing Fluid Errorが発生する。

電気伝導度の測定値が900台近位で、ボトルの位置が正しくセットされている場合には、ライン内の空気を検知している可能性が考えられます。

原因:
洗浄染色実施前のPRIME 450実施時にライン内にある空気を除去できていなかった、ボトル内のBuffer量が不足し空気を吸い込んでしまった、あるいはボトル内のBuffer吸い込み口のラインが反り返りボトル内のBuffer液面より高い位置に出てしまったことで空気を吸い込んでしまった等が原因として考えられます。

対処方法:
各モジュールにセットしているアレイをWash Blockから取り出し、アレイ内をWash Buffer Aに置換、遮光条件下で保管します。4℃遮光条件下では3時間保管可能です。
また、染色試薬およびArray Holding Bufferのチューブはモジュールから一旦取り外して遮光条件下で保管します。
再度PRIME450プロトコルを実施し、ライン内に含まれる気泡を除去します。そのあとに再度各アレイに適した洗浄染色プロコルを実行します。エラーの発生したプロトコルの位置から再開する場合は、エラーが起きたStageを確認し、プロトコルのStepをRestart Stepに変更して再開します。
※PRIME 450 実施後、プロトコルを再開しても同様のエラーが発生する場合はシステム自体にトラブルが起きている可能性が高いと考えられます。弊社テクニカルサポートもしくはフィールドエンジニアまでご連絡ください。

まとめ

・洗浄試薬の置き間違いによってはアレイの結果を得られないことがあるため、Fluidics Stationでの洗浄染色前にはセットしている試薬のボトルの位置をしっかりと確認する。

トラブルが起きないことが一番良いですが、もしシステム操作でトラブルが発生した際に不安な点がございましたらお気軽にテクニカルサポートまでお問い合わせください。

 

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