持続可能で安全なサンプルの凍結保存-ラボの省エネ対策への取り組み

気候変動(地球温暖化)は世界的な大きな課題であり、今では世界中の人々が人類全体の相互責任と地球に対する責任を新たに認識するようになってきました。

世界経済に影響を及ぼしたロックダウンという非常事態は、私たちのこれまでの行動を見直すまたとない機会を与えてくれました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによるさまざまな活動や物流の制限は経済に大きなダメージを与えましたが、その反面でCO2排出量とエネルギー使用量が劇的に減ることによる空気の質の改善を目の当たりにした都市もありました。COVID-19パンデミックは私たちが環境問題やエネルギーの使い方を改めて考える大きなきっかけになったのでしょうか。

そこで今回は、サンプルの凍結保存における省エネ対策について考えたいと思います。

▼こんな方におすすめです!
・サンプル保存施設の管理・運営を検討している方、興味のある方
・保存サンプルの利活用を検討している方、興味のある方
・効率的かつ高品質なサンプルの保存を検討している方、興味のある方

このブログ記事は、こちらのブログ記事(英語)を参考に作成しています。

持続可能なサンプルの凍結保存

ラボの中で多くの電力を消費する機器のひとつに冷凍庫(フリーザー)があります。中でも超低温フリーザー(~-86 ℃)は特に消費電力が大きく、サンプルの凍結保存をするときに超低温フリーザーのエネルギー(電力)を抑えながら効率的に運用することは施設のランニングコストを下げ、持続可能なサンプルの凍結保存を実現するために有効な手段のひとつになります。また、これはラボの環境配慮への取り組みにもつながります。

フリーザーの節電ポイント

フリーザーの消費電力を下げるために、今できることから節電対策を始めてみませんか?フリーザーの節電対策に関する代表的なポイントを以下に挙げました。少しの工夫でも節電を意識しながら運用することで、大きな効果につながるかもしれません。

  • 涼しい場所、熱がこもらない場所(こもらないよう)に設置する
  • 装置の故障を防ぐために予防保全を行う(定期点検、普段からドアのシーリング状態を確認するなどの日常点検、霜取り作業のルール策定など)
  • ドアの開閉頻度・開放時間を減らす
  • 常に庫内の整理整頓を行う(隙間なく詰め込む)
  • 新しいフリーザーに変える

フリーザーはラボに欠かせない機器なので、フリーザー内を効率よく冷却するために工夫し節電対策を行う価値は高いと思います。また、これらの節電対策はランニングコストを下げることはもちろん、直接的あるいは間接的なCO2排出量を低減するため、地球に優しい取り組みのひとつにもなります。

2Dコード付きチューブと省エネ対策

2Dコード付きチューブ(以下、2Dチューブ)は、サンプルとデータの管理を属人化せず、かつサンプルの匿名性を高めた状態でサンプルの保存と管理・運用を安全に行うために有用なサンプル保存容器です。この2Dチューブを使ったサンプル保存は、フリーザー内の整理整頓や保存サンプルの入出庫作業の効率化にも大きく貢献します。

フリーザー内のサンプルの整理整頓や入出庫作業の時間短縮は、フリーザーのエネルギーを上手に利用し消費電力を抑えるための節電対策のひとつになります。また2Dコードによる情報の一元管理でチューブ1本1本を確実にトラッキングできるため、フリーザー内が正体不明のサンプルで溢れてしまうということもなくなるでしょう。

当社ではさまざまなサイズ・仕様の2Dチューブを提供しており、お客さまの目的に応じたチューブをお選びいただけます。

環境に優しい超低温フリーザー

地球温暖化対策の推進に関する法律の施行による環境配慮への取り組みから、フリーザーなど冷凍装置の稼働では電力消費量のみならず、CO2排出量も考慮する必要があります。当社のThermo Scientific™ TSXシリーズのノンフロン超低温フリーザーは、V-drive制御により従来製品と比べ消費電力を約50%削減し、ランニングコストを抑えCO2排出量削減にも貢献します。

当社のTSXシリーズ ノンフロン超低温フリーザーThermo Scientific™ Matrix™/Nunc™ 2Dコード付きチューブを組み合わせることで、凍結保存設備の省エネ対策に大きな効果をもたらすことができます。

サンプルの利活用と価値の最大化について

持続可能なサンプル保存の別の観点として、サンプルの利活用についても考えてみましょう。

サンプルは研究や診断補助の検査に使用することを目的として収集されることが多いと思います。患者固有の貴重なサンプルを多く収集しても実際に利活用されなければ、サンプルの収集・保存に関するリソースが無駄になってしまいます。また、将来の医学・医療の発展のためにサンプルを提供してくださった提供者の方々の好意を無にすることにもなりかねません。

2023年6月9日「ゲノム医療法」が参議院で可決され、成立しました1)。今後はより一層、患者固有の遺伝情報に基づいた次世代の診断方法や治療法、医薬品開発に向けて、保存サンプルの利活用に大きな期待が寄せられることでしょう。

サンプル保存施設において、サンプルの品質を維持しつつ設備のランニングコストを抑える工夫をすることは、長期にわたり施設の運営を持続させるために大切な取り組みのひとつになると思います。

まとめ

フリーザーの省エネ対策は、持続可能なサンプル保存施設の運営という大きな目標からみれば小さな効果しかないかもしれませんが、収集したサンプルを未来に活かすため、当社は製品のご提案をもってサンプルのより安全でより効率的な運用のお手伝いをいたします。

豊富な製品群、幅広い販売ネットワークを持つ当社では、お客さまのサンプル保管プロジェクトの立ち上げや拡張、改良などを総合的にサポートします。経験豊富なスタッフが、消耗品から低温保存システム、サンプル管理ソフトまで含めた幅広い提案を行います。
シンプルなサンプル管理から大規模プロジェクトまで、まずはご相談ください。

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関連リンク
1) 衆議院. “良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案要綱”. 衆議院ホームページ. 2023. https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/youkou/g21105018.htm, (参照2023-06-29)

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