【簡単解説!】AAV製造で完全カプシド濃縮を最適化する方法

AAV製造における課題の一つは、空カプシドの存在です。陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)は、大規模なAAV製造において完全/空のカプシド比を改善し、必要な純度を達成するための効果的な技術として広く認識されています。Thermo Scientific™ POROS™ Anion Exchange(AEX) Resinは分離性能が高い陰イオン交換樹脂で、AAV完全カプシドの濃縮を最適化できます。このブログでは、Thermo Scientific™ POROS™ 50 HQ Strong Anion Exchange Resinを使用して、AAV9完全カプシドの濃縮プロセスを最適化する方法をご紹介します。

以下を学ぶことができます。

  • AAV9 完全カプシド濃縮における溶出バッファーの塩濃度比較
  • 濃縮と回収率を高めるためのステップ溶出
  • AAV製造における陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)の効果的な活用方法

AAV9完全カプシドの濃縮プロセスについて

AAV9完全カプシドの濃縮は、以下のプロセスで進められます。

  • 初期原料調製:完全カプシドと空カプシドを含む粗抽出物を準備。
  • アフィニティクロマトグラフィー:AAV9粒子を捕捉し、初期の濃縮と不純物除去を実施。
  • 陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX):酢酸ナトリウムなどを使用して、完全カプシドを選択的に溶出。
  • ウイルス粒子の濃縮と濾過:UF/DFで完全カプシドの濃度を高める。
  • 品質管理と検証:精製された完全カプシドの品質を評価し、規制基準に適合することを確認。

これらのステップを通じて、高純度かつ高品質なAAV9完全カプシドの濃縮を実現します。

実施条件と初期の試験結果

今回ご紹介するデータは、AAV9の完全カプシドを2.5倍に濃縮したケーススタディです。ステップ溶出の調整、塩の選択を行っています。

アフィニティクロマトグラフィーで精製されたサンプル(約25%のフルカプシドを含む)を使用し、AEXの最適化を行いました。溶出バッファーの塩濃度のスクリーニングには、50 mM硫酸マグネシウム、200 mM塩化ナトリウム、200 mM酢酸ナトリウムを選定しました。

この検討試験の目標は、50%以上の完全カプシド率と30%以上のステップ回収率でした。POROS 50 HQ Strong Anion Exchange Resinを使用して、5 mLのカラムでテストを実施しました。バッファーAには、Bis-Trisプロパン、Pluronic F-68、および10 mMのMgCl₂を含め、バッファーBにはスクリーニングする塩を加えました。カラムの保持時間は全ての条件で一定にしました。

実施条件

カラムPOROS GoPure HQ, 0.8 × 10 cm, 5 mL
ロード時のコンダクティビティ<2 mS/cm
カラム負荷量9.7E12 vg/mL-resin(9.9E13 cp/mL-resin)
バッファー A20 mM Bis-Tris Propane(BTP)、0.01%(v/v)Pluronic F-68, pH 9.0
バッファー BBuffer A + 10 mM MgCl₂ +スクリーニングする塩(50 mM MgSO4/200 mM NaCl/200 mM NaOAcのいずれか)、pH 9.0
保持時間2分 (ロード時), 1分(他のフェーズ)
グラジエントリニア (0 to 100%B), 40 CV

まず、硫酸マグネシウムを使用したところ、完全カプシド率は37.3%で濃縮が目標に対して不十分でした。一方、塩化ナトリウムは67.7%の完全カプシド率で目標にしている濃縮が達成できたものの、ベクターゲノムの回収率が低く、ステップ回収率は約10%に留まりました。

最終的に、酢酸ナトリウムを使用したところ、塩化ナトリウムと同等の65.9%の完全カプシド率が得られ、さらにベクターゲノムの回収率も約32%と高くなり、両方の目標を満たすことができました。

溶出バッファーの最適化

次に、3ステップのグラジエント溶出で、試験を行いました。リニアグラジエントで得られた結果から、各ステップの導電率を最適化することにより一次溶出画分での濃縮と回収が目標を上回る結果となり、2.5倍以上の完全カプシド濃縮と46%の回収率を達成しました(図1)。

図1. 酢酸ナトリウムのステップ溶出

まとめ

いかがでしたか?今回ご紹介した研究結果から、AAV9カプシド濃縮のためのAEX最適化が、効率的で高品質な製造プロセスにおいて重要であることが明らかになりました。

このケーススタディ以外にもThermo Scientific™ POROS™樹脂を使用することで、良好な濃縮結果が得られている事例があります。AAVセロタイプなどによって、お勧めする樹脂や条件が異なるのでプロセス最適化をご検討の際は、ぜひ、下記フォームより、当社のフィールドアプリケーションサイエンティストへ、お気軽にお問い合せください。

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