高純度水素ガス中の不純物を測定!

近年、水素は多くの工業用化学プロセスで使用が拡大しています。例えば、燃料電池自動車の燃料や、半導体の薄膜蒸着のキャリアガス、また加熱用の燃料など、ますます利用が拡大しています。同様に水素の品質も重要です。今回は、水素ガスの不純物モニタリングについてご紹介します。

高純度への挑戦

半導体や自動車のような水素アプリケーションの厳しい純度要求に応えるために、測定器はより低いppbレベルの検出限界を持つ必要があります。また、多くのガスを同時に測定し、迅速かつ費用対効果の高いソリューションを提供する必要があります。

燃料電池用水素の国際規格であるISO 14687で規定されている数多くの不純物成分の分析には、通常、分光法やガスクロマトグラフィー(GC)など複数の分析装置が必要です。GCは感度要件を満たしますが、メンテナンスコストが高く、サンプルの分離が必要なため、分析時間が長くなることがよくあります。一方で市販されているほとんどのFT-IR装置は、液体窒素で冷却された検出器を必要とし、このような難しいアプリケーションに必要な検出限界を達成することはできませんでした。

この要求を満たす製品がThermo Scientific™ MAX-iR™ FTIRガスアナライザーです。
MAX-iR FTIRガスアナライザーは液体窒素を必要とすることなく、全赤外スペクトル範囲をモニターできます。この製品は給油所などでの現場測定にも利用可能で、不純物を1 ppbレベルまで検出することが可能です。また、メンテナンスと液体窒素を必要としないため、24時間 365日稼働できます。

Thermo Scientific MAX-iR FTIRガスアナライザー

図1. Thermo Scientific MAX-iR FTIRガスアナライザー

測定

MAX-iR FTIRガスアナライザーの検出限界を評価するために、連続した12個のブランクサンプルの分析を実施しました。ブランクサンプルとしてリサーチグレード(99.9999 %)の水素または窒素を使用しました。装置の検出下限値(DL)は、12回繰り返したサンプルの標準偏差の3倍と定義しました。評価に使用したMAX-iRアナライザーにはDTGS検出器を利用しました。

この実験により得られた、各ガス成分の検出下限値を表1に示します。
表1に示したガス種に加え、例えばジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、塩化ビニル、ジクロロメタンなど、他のハロゲン種の分析にも使用できます。
さらに、MAX-iR FTIRアナライザーにはFT-IRまたは光学強化型FT-IRの光学的性能を大幅に強化するThermo Scientific™ StarBoost™光学強化テクノロジーを搭載できます。この機能をもちいたStarBoost構成はDTGS検出器よりもスペクトル範囲が狭くなりますが、CO、CO2、CH4などの不純物に対する感度が大幅に向上し、pptレベルの感度を提供します。StarBoost構成の検証結果を表2に示します。

表1:検出下限値の評価テーブル
ガス 最大許容限界
ISO 14687 (ppm)
MAX-iR DTGS
DL (ppm)
アンモニア 0.1 0.020
二酸化炭素 2 0.010
一酸化炭素 0.2 0.020
ホルムアルデヒド 0.2 0.030
ギ酸 0.2 0.010
塩化水素 50* 0.020
フッ化水素 50* 0.010
水分 5 0.100
全炭化水素 (C1-C5) 2 0.200
非メタン系炭化水素 (C2-C5) 2 0.200
メタン 100 0.010
エタン 0.020
エチレン 0.050
プロパン 0.040
ブタン 0.080
ペンタン 0.050
* ハロゲン化合物の総量規制は50 ppmです。
表2:StarBoost構成による検出下限値の評価テーブル
誤差 直線性 標準偏差 EPA 821-
R-16-006
% of
Expected
R2 RSD MDLs
(ppb)
二酸化炭素 1.25% 0.9999 0.70% 0.7
一酸化炭素 2.91% 0.9999 2.43% 0.6
メタン 2.15% 0.9998 0.88% 1.1

まとめ

MAX-iR FTIRアナライザーは、柔軟で高感度な分析ツールで、バルク高純度水素中の多くの微量不純物の同時測定が可能です。燃料電池用水素(純度99.97 %)の品質管理には、ISO 14687で規定された多くの不純物を迅速かつ高精度に分析、モニタリングできるDTGS検出器仕様が適しています。

関連情報
製品情報 MAX-iR FTIRガスアナライザー

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アプリケーションノート
水素ガス中の不純物測定

 

研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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