昨今、さまざまな分野で機械学習(Machine Learning)によるデータ解析の活用が広がっていますが、LIMS(ラボ情報管理システム)においても、機械学習の技術が組み込まれ始めています。今回は、Thermo Scientific™ SampleManager™ LIMSソフトウエアが提要する、機械学習を用いたデータ解析ソリューションの中でも「プロファイリング機能」と、お客さまによるその活用事例についてご紹介します。
▼もくじ
機械学習(Machine Learning)とは?
機械学習(Machine Learning、ML)とは、経験からの学習により自動で改善するコンピューターアルゴリズムで、人工知能の一種です。Thermo Scientific™ SampleManager™ LIMSソフトウエアのData Analytics Solution(データ分析ソリューション)は、LIMSの中に蓄積されたラボの試験結果や機器情報などさまざまな情報を機械学習の技術で解析し、結果や傾向を予測することで、不必要な試験の数を削減するなど、分析業務の更なる効率化に有用です。
SampleManager LIMSソフトウエアのプロファイリング機能
SampleManager LIMSソフトウエアのデータ分析ソリューションのひとつでもある、「プロファイリング機能」は、LIMSに蓄積された試験の結果データとMLの技術を利用して、試験の結果を予測し、それにより分析ラボの生産性効率を向上させることができます。分析試験を実施せずとも結果が予測できることで、冗長なテストの実施を排除し、試験の回数やサンプル数を削減したり、試薬や消耗品の使用数を削減させるなど、生産性の向上にもメリットがあります。つまり、試験の結果を予測する「プロファイリング機能」を活用することで、製造ラインにおける非合格品の発生を早期に検知し、さらなる追加試験やリソースを追加することを防ぐことができるのです。

プロファイリング機能の活用事例:ワイン生産工場における品質管理
「プロファイリング機能」のワイナリーの品質管理ラボにおける活用例をご紹介します。ワイン生産工場では、生産されたワインに対して、pH値、アルコール度数、密度、残留糖分などさまざまな品質テストを実施しています。あるワイン生産工場の品質管理部門は、このようなさまざまな基準に対して、コストと時間をかけて品質試験を実施し、生産されたワインを「高品質品」「低品質品」に分類しています。「高品質」という結果の出たワインはパッケージ化されて販売されますが、「低品質」という結果の出たワインは再処理され、再度試験による品質試験を行います。また、その2回目の品質試験で不合格となったワインは、別のチャネルで低価格で販売されることになります。

試験の基準に合格せず、再処理の対象となるワインのロットを早期に特定することで、試験にかかるコストを削減できます。そのためワインの品質管理ラボは、テストの結果を事前に予測したいと考えていました。SampleManager LIMSソフトウエアの「プロファイリング機能」は、ワインに対して行われたpH値、アルコール度数、密度、残留糖分といった過去の試験結果の、複雑な相関関係を分析することで、結果の早期の予測を行えます。
生産ラインの最適化:早期の不合格品の発見
ラボはSampleManager LIMSソフトウエアのプロファイリング機能を活用して試験の結果を早期に予測し、またそれに応じて分析試験のプロセスを柔軟に再定義することもできます。以下の図の例は、機械学習によるアルゴリズムの分析結果によりつくられた新しい試験のプロセスを表しており、これにより、最終結果が合格となる品質のサンプルを早期に発見することができます。そして、不合格の可能性が高い場合には、途中でさらなる試験を中断し、そのワインは直ちに再処理に戻すことで、すべての試験を行うための時間を短縮できるようになりました。

例えばすべての試験をそれぞれ実施後、pH等いくつかの試験結果は、数値が低い一方で、アルコール等別の試験は、値が良いとします。単一の試験の結果だけで、品質テストの最終結果の予測は難しく、そこには感度や特異度など、他の結果値も掛け合わせて結果を予測する必要があります。

以下の例では、解析の結果、さまざまなテストを3つのステージにグルーピングすることで、早期の予測に有効な情報を得られると判断しました。「プロファイリング機能」からこれらの分析結果を得ることができ、ラボはその後、テストを3つのステージというフローに変更しました。
ステージ1:アルコール・密度・塩分物の試験。これによりワインの品質を予測し、合格すればステージ2に進み、そうでなければ「不合格」とします。
ステージ2:揮発性酸度、残留糖分、硫酸塩、総二酸化硫黄、クエン酸をステージ1で実施したテストに加えます。合格すればステージ3に進み、そうでなければ「不合格」とします。
ステージ3:残りのテストを実施し、ワインの品質を予測します。合格すれば「品質テスト」を実施し続け、そうでなければ早期に「不合格」と判断します。

プロファイリング機能により、生産性の向上と不要な試験を削減
SampleManager LIMSソフトウエア Data Analytics Solution(データ解析ソリューション)のプロファイリング機能は、さまざまな活用のポテンシャルを秘めています。ご紹介したようなワインの品質試験では、生産ラインのさまざまなステージで、プロファイリング機能を用いた品質試験を実施することで、早期に品質の結果を予測し、それにより追加試験やそれにかかわるリソースの削減を行うことができるのです。
SampleManager LIMSソフトウエアの、Data Analytics Solution(データ分析ソリューション)に関する詳細は、以下をご参照ください。
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