リアルタイムPCRに使用される逆転写酵素の大部分は、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)またはモロニーマウス白血病ウイルス(M-MLV)由来です。天然のAMV逆転写酵素は一般的にM-MLVよりも熱安定性ですが収量は低くなります。しかし、天然型の酵素を改変することにより、リアルタイムPCRにとって理想的な性質を有する変異体が得られます。理想的な逆転写酵素には以下のような性質が備わっています。
1-Step qRT-PCRを選択するか2-Step qRT-PCRを選択するかは、簡便性、感度およびアッセイデザインにより左右されます。各実験に関して、それぞれの方法の利点および欠点を評価する必要があります。
1-Step反応においては、逆転写の間は逆転写酵素と熱安定性DNAポリメラーゼの両方が存在し、高温のDNAポリメラーゼ活性化段階(いわゆるホットスタート)においてRTが不活性化されます。通常、RTにはDNAポリメラーゼにとって最適ではないバッファーが適しています。このため、1-Step 反応のバッファーは両方の酵素に関して、許容可能ではあるけれど最適とはいえない機能性を供給する、妥協的なソリューションとなっています。この機能性のわずかな低下は、単一チューブ内ですべてのcDNA産物がPCR段階で増幅されるという利点により補われます。
2-Step qRT-PCRにおいては、逆転写は逆転写用に最適化されたバッファー中で行われます。逆転写が完了すると、約10%のcDNAをPCR用に最適化されたバッファー中での各リアルタイムPCR反応に移行できます。
逆転写はqRT-PCR反応において最も変動要因が多い工程です。cDNAの合成反応には遺伝子種、オリゴ(dT)またはランダムプライマーが使用可能で(図)、プライマーの選択がRT効率および一貫性、そしてその結果としてデータの精度に大きな影響を与えます。
ランダムプライマーは多くのcDNAの合成に適しており、リアルタイムPCRにおいて最高の感度を提供することが可能です。ランダムプライマーはまた、細菌性RNAなどの非アデニル化RNAにおいても理想的です。ランダムプライマーはターゲット分子全体にアニールするため、分解した転写産物や二次構造が存在していても遺伝子特異的プライマーやオリゴ(dT)プライマーの場合ほど大きな問題にはなりません。
収量の向上は望ましいことですが、ランダムプライマーではコピー数を過大評価してしまう可能性があることがデータから示されています。ランダムプライマーとオリゴ(dT)プライマーの組み合わせを利用することで、同一のRT反応において両者の長所を組み合わせることにより、データの品質を向上させることが可能な場合もあります。ランダムプライマーは2-StepリアルタイムPCRにおいてのみ使用されます。
オリゴ(dT)プライマーは、そのmRNAへの特異性および同一のcDNAプールから多くの異なるターゲットを解析することが可能であることから、2-Step 反応に多用されています。しかし、オリゴ(dT)プライマーは常に転写物の3′末端から逆転写を開始するため、強固な二次構造が存在すると不完全なcDNA の合成につながる可能性があります。FFPE試料から単離されたRNAなどの、フラグメント化したRNAのオリゴ(dT)プライミングも問題を生じる可能性があります。しかし、リアルタイムPCRプライマーがターゲットの3′末端近傍にデザインされている限り、この位置の下流における早期伸長停止は通常重大な問題とはなりません。
弊社ではいくつかの種類のオリゴ(dT)プライマーをご提供しています。Oligo(dT)20は、チミジン20量体の均一混合物であり、Oligo(dT)12-18は、チミジン12 量体とチミジン18量体の混合物です。アンカー付きオリゴ(dT)プライマーは、3′UTR/poly(A)ジャンクションでアニールすることにより、poly(A)スリップを回避するようにデザインされています。熱安定性の高いRTでは、短いプライマーと比較して高温でより堅固にアニールした状態を保持する、長いプライマーのほうが性能が高くなる可能性もあります。標準化に18SrRNAを使用する場合には、オリゴ(dT)プライマーは推奨しません。
配列特異的プライマーは、最高の特異性を示し、RT用プライマーの中では最も一貫性のあることが示されています。しかし、配列特異的プライマーはオリゴ(dT)プライマーやランダムプライマーのような柔軟性を得ることはできず、ターゲット遺伝子産物のcDNAコピーのみが合成されます。このため配列特異的プライマーは、少量または貴重な試料を取り扱う研究においては一般的に最良の選択肢ではありません。1-Step qRT-PCR反応においてはcDNA合成には常に配列特異的プライマーを使用しますが、2-Step 反応においては他のプライマーを用います。
各プライマーはそれぞれ特徴的な理論的長所と欠点を有しています。さらに各ターゲットは異なるプライマーに対して異なった反応を示す可能性があります。理想的には、初期のアッセイ評価段階において各プライマーを評価し、どのプライマーで最適な感度と精度を得られるかを決定することが必要です。
リアルタイムPCRにおいて、RTステージはPCRステージよりも一貫性が低くなっています。これは、テンプレートRNAに関連した要因の組み合わせによるもので、熱安定性DNAポリメラーゼに関しては通常この組み合わせによる試験は行われていません。これらの要因として以下のものが挙げられます。
このハンドブックでは、リアルタイムPCRの理論や実験デザインの設計など、リアルタイムPCRの基礎知識が掲載されています。リアルタイムPCRを始めたばかりの方やこれから実験を考えている方にうってつけのハンドブックです。PDFファイルのダウンロードをご希望の方は、下記ボタンよりお申し込みください。
異常なS字状の増幅曲線、NTCでの増幅検出、増幅が見られないなど、リアルタイムPCRの実験中に困った際の手助けになる情報を紹介しています。PDFファイルのダウンロードをご希望の方は、下記ボタンよりお申し込みください。
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。