RNAの調整・精製は、次世代シーケンシング、リアルタイムPCRによる発現定量(RT-qPCR)、ノーザンブロット分析やcRNA合成など、さまざまな実験に必要となる基本的な技術です。
しかしながらRNAの調製のステップは、回収されるRNAのプロファイリングの維持や、RNAの純度、収量など、以後の分析結果に大きな影響を及ぼすことが知られています。
たとえば、サンプルの採集や前処理、保存条件は、回収されるRNAの質や収量に大きく影響を与え、さらには以後のアプリケーションの解析精度に関わってきます。そのためスタートサンプルの準備にも、十分な配慮が必要となります。
本トピックでは、実験室でのRNA調製/精製において、10の注意点について紹介します(今回は1~5の5つの注意点についてです)。
内在性RNaseの不活性化は、組織摘出後または細胞回収後、ただちに行う必要があります。これは、RNAが分解されるのを防ぐためです。
以下のいずれかの方法でRNAの分解を防ぎましょう:
サンプルを液体窒素で凍結した後は、–80℃で保存する必要があります。さらに保存中は凍結状態をキープし、絶対に融解させてはいけません。RNA精製のステップにおいても融解を防ぐ必要があります。カオトロピック塩(グアニジン塩)ベースの溶解溶液中でも、ホモジュナイズ処理前に溶液中で組織の融解が進んだ場合、たとえ短時間であったとしても、RNAの分解や収量減の原因となります。
そのため凍結組織は、凍結状態のままオトロピック塩(グアニジン塩)ベースの溶解溶液に添加し、直ちに短時間でホモジュナイズを行うか、もしくは、予め凍結組織を液体窒素中で粉砕させてから、溶解溶液に添加する必要があります。
RNAの抽出において、細胞や組織サンプルを完全にホモジュナイズすることは、RNAの分解と収量減の両方を防ぐための基本的なステップです。ホモジナイズの方法については、下記の様に細胞または組織の種類に応じて処理方法を選択します(下記参照)。
ほとんどの培養細胞は、細胞溶解液中でボルテックス処理するだけでホモジュナイズされます。
機械的な破壊方法が必要となります。
また細菌の場合、細胞壁を溶解するため酵素処理を行う場合もあります。
ホモジナイゼーション処理後およびRNA精製の前に、下記の様に追加処理が必要なサンプルもあります。
追加のクロロホルム抽出で、ライセート中の脂質を除去することにより、RNAの収量が改善されます。
植物は、ポリフェノール類や多糖類成分などの2次代謝産物を多く含むため、RNAの質や収量の低下が生じます。この場合、植物由来の2次代謝産物成分を効率的に除去する Plant RNA Isolation Aidを組み合わせることで改善が期待できます。
市販のRNA精製システムにはさまざまなタイプのものがあります。これらの中から用途にあった製品を選択します。以下に主な4つの製品カテゴリーをまとめています。
RNAは分解されやすく、取り扱いには十分な配慮が必要です。
また以後のアプリケーションに応じて、必要となるRNAの質や収量などを把握し、適切な精製システムを選択する必要があります。基本的なことですが、再確認をお願いします。また「RNA精製で注意すべきテクニック-その2-」も合わせてご確認ください。
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