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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 分子生物学実験関連 / 【やってみた】冷蔵庫から出した培地が37℃まで温まる時間を計ってみた

【やってみた】冷蔵庫から出した培地が37℃まで温まる時間を計ってみた

Written by LatB Staff | Published: 08.02.2023

▼もくじ

  • はじめに
  • 材料と方法
  • 結果
  • まとめ
    • ハンズオントレーニングの一覧
    • 細胞培養ハンドブック

はじめに

細胞培養に使用する培地は冷蔵保存されています。培地は冷たいまま使用せず、培養温度(哺乳動物細胞であれば37℃)に温めてから使用することが一般的に行われています。
培地を温めるにはウォーターバスで37℃使用している方が多いと思いますが、温まるまでどれくらい時間がかかるのでしょうか?また、急いでいるときには最低どれくらいの時間をおけばよいのでしょうか。気になったのでやってみました!

材料と方法

37℃に温めたウォーターバスに冷蔵庫から出した培地(DMEM、充填量500 mL)を入れ、時間経過とともに培地の温度を測定しました。
ウォーターバスの水位は、ちょうど培地ボトルの液面と同じ高さになるように調整しました。
温度計はプローブタイプのものを使用し、培地ボトル中で底や壁面に接触しないように測定しました。
使用したウォーターバス:
Fisher Scientific™ Isotemp™ Water Bath model 2340(汎用)
Fisherbrand™ Isotemp™ 4100 H6A Open Heated Acrylic Bath Circulators(循環式)

結果

この実験をする際、簡易的に水のボトルを使おうと考えました。しかし、より正確なデータを取るため本物のDMEM培地を使用しました(図1)。メーカーではないともったいなくてできないですが、培地を安全キャビネット外で開封したり、中に温度計を入れたりしたときは多少の背徳感がありました。

図1. 測定時の様子。DMEM培地にプローブタイプの温度計を差し込んで測定。

図1. 測定時の様子
DMEM培地にプローブタイプの温度計を差し込んで測定

結果として、冷蔵保管していた培地が37℃まで温まるには44分かかりました(図2)。37℃に設定したウォーターバスなので、37℃に近づくにつれて温度上昇が緩やかになります。十分に温度が上がらなくとも、35℃であれば28分、23℃(室温を想定)であれば10分で到達しました。

図2. 汎用ウォーターバスの測定結果 培地温度が37℃に達するまでに44分かかった

図2. 汎用ウォーターバスの測定結果
培地温度が37℃に達するまでに44分かかった

このテストでは未使用の培地を使用したため、培地の液量は500 mLです。培地は使用すると当然ながら減りますので、そうなると培地が温まる時間も短くて済むはずです。そこで次は培地量を200 mLまで減らし、同様にテストしました。その結果、培地が温まるまで25分とかなり短い時間で温まりました。

図3. 汎用ウォーターバスで培地量200 mLのボトルの温度変化を測定した結果。37℃まで達するのに要した時間は25分だった。

図3. 汎用ウォーターバスで培地量200 mLのボトルの温度変化を測定した結果
37℃まで達するのに要した時間は25分だった

ここでまた疑問が生じます。使用したウォーターバスは槽内の水が循環せず、ボトルへの熱伝導効率が低いタイプでした。温水が循環するタイプのウォーターバス(バスサーキュレーター、図4)であれば、もっと早く温まるのでは?と思い、試してみました。
バスサーキュレーターは常に設定温度の水を対象に当てることができるため、水が循環しないウォーターバスより温度変化が早く、温度精度も高いという特徴があります。価格が高い点はデメリットですが、機能面では汎用ウォーターバスのアップグレード版と言えます。
バスサーキュレーターを使用した場合、37℃まで達するのに50分かかりました(図5)。これは循環式ではないウォーターバス(44分)よりも長い時間です。
実は、温度の上がり方はバスサーキュレーターの方が明らかに早かったです。測定条件ではサーキュレーター本体(37℃に設定)の温度センサーから少し離しておいた培地ボトルとわずかに温度差があったと考えられます。温度精度が高い故にその差がなかなか埋まらず、結果として、36℃から37℃まで上がり切るのに長い時間がかかりました。今回はバスサーキュレーターに蒸発・温度変化防止のためのふたをしなかったことも一因かも知れません。
36℃まで達する時間を見ると予想どおりバスサーキュレーターの方が早く、2割強の時間短縮となりました。
ウォーターバス:35分
バスサーキュレーター:27分

図4. 循環式のウォーターバス(バスサーキュレーター)

図4. 循環式のウォーターバス(バスサーキュレーター)

図5. バスサーキュレーターで測定した培地ボトルの温度。汎用ウォーターバスよりも温度上昇が早かった。

図5. バスサーキュレーターで測定した培地ボトルの温度
汎用ウォーターバスよりも温度上昇が早かった

まとめ

これまでの結果をまとめました。

図6. 各測定条件における温度上昇。ウォーターバス、バスサーキュレーターの温度設定は全て37℃。

図6. 各測定条件における温度上昇
ウォーターバス、バスサーキュレーターの温度設定は全て37℃

図7. 各測定条件においてそれぞれの温度に達した時間(分)。

図7. 各測定条件においてそれぞれの温度に達した時間(分)

いかがでしたでしょうか。
汎用ウォーターバスを使用した場合、500 mLの培地量では44分で37℃まで温まりました。培地量が200 mLまで減ると25分でした。
なるべく早く培地を温めたい方は、水が循環するバスサーキュレーターをお使いいただくと、培地を温める時間を短縮できて手早く培養操作を開始できます。

また、培地ボトルは室温で使用していると温度が下がっていきますし、培地の種類によっては温めすぎると成分が劣化するものがあります。そう考えると、多少温度が低くても培養に使用しても影響が少ないケースも多いかも知れません。冷蔵庫から出してすぐに使用するのは厳禁ですが、せめて室温まで上がっていれば許容範囲と考えると、ウォーターバスで培地を温める時間は最短10分(培地量 500 mLの場合)、ということになります。
ただこれは、ウォーターバスの槽内の水が37℃に温まる時間を考慮していません。今回使用した汎用ウォーターバスは槽内の水が室温から設定した37℃に温まるまで約35分、バスサーキュレーターは約7分かかりました。細胞培養に限ったことではありませんが、慌てなくても良いように準備は早めにしっかりやりましょう。

当社では細胞培養をはじめ、フローサイトメトリーや蛍光イメージング、ゲノム編集など、実際に実験(実習)を行いつつ学べるハンズオントレーニングを各種開催しています。
その中で今回のような実験結果もご紹介していますので、これから新しい実験を始められる方、より理解を深めたい方はぜひご参加ください!

ハンズオントレーニングの一覧

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