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Accelerating ScienceLearning at the Bench / 細胞培養・イメージング / 知っておきたいRNAi実験のコツTop10

知っておきたいRNAi実験のコツTop10

Written by LATB Staff | Published: 03.12.2020

今回は、RNAi実験を効率よく進めるためのコツを10点紹介します。

▼こんな方におすすめ

  • RNAi実験をこれから始める人
  • RNAi実験を始めてみたけど、細かい点が気になる方

▼もくじ [非表示]

  • 1. siRNA耐性型遺伝子の発現によるRNAi効果のレスキュー
  • 2. ネガティブコントロールの使用
  • 3. 同一ターゲットに対する複数のsiRNAの使用
  • 4. すべてのオフターゲット遺伝子に対して2つ以上のミスマッチを持つsiRNA配列を使用
  • 5. 目的のsiRNAの力価測定
  • 6. 非常に効果的なsiRNA配列の選択
  • 7. 複数のsiRNAミックスを使用する場合、個々のsiRNAで結果を確認
  • 8. 抗ウイルス反応のモニタリング
  • 9. 遺伝子発現変化の網羅的調査
  • 10. mRNAとタンパク質レベル双方のモニタリング
  • 【無料ダウンロード】RNAiハンドブック
  • References

1. siRNA耐性型遺伝子の発現によるRNAi効果のレスキュー

siRNA実験の重要なコントロールの一つに、siRNA抵抗性遺伝子の発現によるRNAi効果のレスキューがあります[8]。このようなsiRNA抵抗性遺伝子として、ターゲット遺伝子の変異型が用いられます。

このような遺伝子を入手する簡単な方法は、GeneArt遺伝子合成オンラインポータルサイトで最適化された遺伝子を注文することです。

アミノ酸配列を変えずに、塩基配列を変えて発現に関して最適化されます。

最適化された配列は、通常、野生型配列とは十分に異なっており、RNAiレスキューコントロールとして機能します。この最適化された変異遺伝子をsiRNAとコトランスフェクションした後、表現型のレスキュー効果を評価します(下図参照)。

一例として、MCF-7細胞における細胞周期の調節因子CDC2について、FACS分析によりG2期での停止の程度を明らかにしました[12]。

(Figure) siRNA耐性型遺伝子の発現によるRNAi効果のレスキュー

Rescue of siRNA-mediated knockdown of an endogenous gene with an optimized gene variant.

未処理のMCF-7細胞(野生型)、またはCDC2 siRNAのみ(ノックダウン)もしくはCDC2 siRNA + 最適化されたcdc2遺伝子(レスキュー)または非サイレンシングsiRNA + 最適化されたcdc2構築物(ネガティブコントロール)を用いてトランスフェクションした細胞を72時間後にヨウ化プロピジウムで染色し、FACS分析を行うことによって細胞周期分布を明らかにしました。

ノックダウン表現型を有する細胞と比較したネガティブコントロール細胞の割合(%)は、16.2%/ 14.9%から36.3%に約20%シフトしました。

レスキューされた細胞と比較したネガティブコントロール細胞は、16.2%/ 14.9%から23.4%に約8%シフトし、最適化されたcdc2産物がノックダウン状態から約60%の細胞をレスキューしたことが示されました。

内在性CDC2ノックダウンが、内在性cdc2のみを検出するプライマーを用いたリアルタイムPCRによって確認されたのに対し、最適化された外来性CDC2の発現は、外来性cdc2のみを検出するプライマーを用いたリアルタイムPCRによって確認されました(データ未掲載)。

Fathら[12]から引用。

2. ネガティブコントロールの使用

ネガティブコントロールとして、使用するsiRNAの配列を入れ替えたスクランブルsiRNA配列を使用できます(Stealth RNAiに関してはwebで設計可能です)。

また、Stealth、Silencer Select共に、設計済ネガティブコントロールも使用できます。

3. 同一ターゲットに対する複数のsiRNAの使用

siRNA実験から得られるデータの信頼性を高める最良の方法の一つは、単一の標的遺伝子に対して2つ以上のsiRNAを単独で使用することです。

同じ遺伝子に対して同等の遺伝子サイレンシング効果を持つ異なるsiRNAは、類似した遺伝子発現プロファイル、表現型の変化を引き起こす必要があります。

単独のsiRNAによって起こる変化は、オフターゲット効果に起因する可能性があります。

4. すべてのオフターゲット遺伝子に対して2つ以上のミスマッチを持つsiRNA配列を使用

siRNA特異性のルールは、まだ十分には定義されていません。

siRNAの中央の一塩基変異で、活性が無くなったという報告もあります[1,2]。これに対して、わずか14~15個の連続した相補的配列を含む非標的遺伝子の発現をsiRNAが抑制したという報告もあります[3]。

このため、現段階では、候補となる非標的遺伝子との間に少なくとも2つ以上のミスマッチを持つsiRNA配列を選ぶのが適切だと考えています。

設計済みSilencer Selectの設計にはCenix Bioscienceが開発したアルゴリズムが使用されており、厳格な特異性チェックが行われています。

 

5. 目的のsiRNAの力価測定

非特異的なサイレンシング効果は、高濃度のsiRNA(100 nM程度が目安)を使用した場合にみられる傾向があります[3-5]。

この非特異的効果は、siRNA濃度を下げると軽減されます(30 nM未満)。

したがって、特異性を確保するためには、siRNAの力価を測定し、最も低い有効濃度で使用することが最良です。

6. 非常に効果的なsiRNA配列の選択

非常に効果的なsiRNAを使用すれば、より低いsiRNA濃度で効果を発揮するため、オフターゲット効果の可能性を最小にできます。

Silencer Select設計に使用しているアルゴリズム(Cenix Bioscience開発)は、非常に効果の高いsiRNA配列を予測可能です。

 

7. 複数のsiRNAミックスを使用する場合、個々のsiRNAで結果を確認

siRNAミックス(長鎖dsRNAをRNase III/ Dicerで消化したsiRNAカクテルなど)が、サイレンシング実験に使用されることがあります[6,7]。

このようなsiRNAミックスは、スクリーニングを目的とする場合に有効ですが、理論的にはオフターゲット効果を増加させる可能性が高いです。

そのため、siRNAミックスを用いて実施されたRNAi実験の結果は、個々のsiRNAを使用して結果を検証する必要があります。

8. 抗ウイルス反応のモニタリング

最近のエビデンスによれば、抗ウイルス応答増加が非特異的siRNA効果の有効な指標になり得ることが示されています。

抗ウイルス応答をモニタリングする最も包括的な方法は、ゲノムワイドアレイを用いる方法です。

しかし、この方法は高価であるか、多くの場合に実用的ではありません。

そのため、インターフェロン応答をモニタリングするためのいくつかの簡単なアッセイが開発されています。

これらアッセイとしては、2’5’オリゴアデニルシンテターゼの上方制御の解析、STAT1 mRNAの解析、およびRNase Lの活性化の解析などがあります[9]。

 

9. 遺伝子発現変化の網羅的調査

siRNAの特異性は、遺伝子発現パターンの網羅的な変化を調べることによって(DNAマイクロアレイ等を使用)明らかにすることができます。

DNAマイクロアレイを用いた検証では、特定の遺伝子を標的とする複数のsiRNAが、共通の発現プロファイルにおける「遺伝子特異的」変化を引き起こします。

その一方で、オフターゲット効果は、「遺伝子特異的変化」ではなく、「siRNA特異的変化」として観察されます[3,4,9,10]。

 

10. mRNAとタンパク質レベル双方のモニタリング

siRNA実験では、いくつかの理由により、mRNAレベルおよびタンパク質レベルの双方をモニタリングすることが重要な場合があります。

例えば、mRNAが減少するがタンパク質が減少しない場合は、タンパク質が分解されにくいことが示唆されます。

一方、mRNAの減少が見られないのにタンパク質レベルが減少する場合は、microRNAのように翻訳レベルでの抑制効果をsiRNAが示している可能性があります[11]。

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References

  1. Elbashir SM, Martinez J, Patkaniowska A, Lendeckel W, Tuschl T (2001) Functional anatomy of siRNAs for mediating efficient RNAi in  Drosophila melanogaster  embryo lysate. EMBO 20(23):6877–88.
  2. Miller VM, Xia H, Marrs GL, Gouvion CM, Lee G, Davidson BL, Paulson HL (2003) Allele-specific silencing of dominant disease genes. Proc Natl Acad Sci USA 100(12):7195–200.
  3. Semizarov D, Frost L, Sarthy A, Kroeger P, Halbert DN, Fesik SW (2003) Specificity of short interfering RNA determined through gene expression signatures. Proc Natl Acad Sci USA100(11):6347–52.
  4. Jackson AL, Bartz SR, Schelter J, Kobayashi SV, Burchard J, Mao M, Li B, Cavet G, Linsley PS (2003) Expression profiling reveals off-target gene regulation by RNAi. Nature Biotechnol21(6):635–7.
  5. Persengiev SP, Zhu X, Green MR (2004) Nonspecific, concentration-dependent stimulation and repression of mammalian gene expression by small interfering RNAs (siRNAs). RNA10:12–18.
  6. Yang D, Buchholz F, Huang Z, Goga A, Chen C-Y, Brodsky FM, Bishop MJ (2002) Short RNA duplexes produced by hydrolysis with Escherichia coliRNase III mediate effective RNA interference in mammalian cells. Proc Natl Acad Sci USA 99:9942–7.
  7. Calegari F, Haubensak W, Yang D, Huttner WB, Buchholz F (2002) Tissue-specific RNA interference in post-implantation mouse embryos with endoribonuclease-prepared short interfering RNA. Proc Natl Acad Sci USA99:14236–40.
  8. Editorial (2003) Whither RNAi? Nature Cell Biology5:263–4.
  9. Chi J-T, Chang HY, Wang NN, Chang DS, Dunphy N, Brown PO (2003) Genomewide view of gene silencing by small interfering RNAs. Proc Natl Acad Sci USA<100: 6343–6.
  10. Dillin A (2003) The specifics of small interfering RNA specificity. Proc Natl Acad Sci USA100(11): 6289–91.
  11. Doench JG, Peterson CP, Sharp PA (2003) siRNAs can function as miRNAs. Genes Dev17: 438–42.
  12. Fath et al. (2011) Multiparameter RNA and Codon Optimization: A Standardized Tool to Assess and Enhance Autologous Mammalian Gene Expression. PLOS One 6:3.

For Research Use Only. Not intended for human or animal therapeutic or diagnostic use.
The trademarks mentioned herein are the property of Thermo Fisher Scientific Inc. and/or its affiliate(s) or their respective owners.
研究用にのみ使用できます。診断用には使用いただけません。

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