佐藤 荘 氏(大阪大学微生物病研究所自然免疫学研究分野/大阪大学免疫学フロンティア研究センター自然免疫学)
※当記事は第45回日本免疫学会学術集会テクニカルセミナー(2016年12月5日 開催)での発表内容です
「私たちは、2010年にM2型マクロファージとしてJmjd3 遺伝子制御性のアレルギーに関わるマクロファージを、2013年にTrib1 遺伝子制御性で脂肪細胞に常在してメタボリックシンドロームに関わるマクロファージを報告しました。しかし前者のJmjd3 遺伝子をノックアウトしたマウスのメタボリック機能は正常であり、同様に後者のTrib1 遺伝子をノックアウトマウスのアレルギー応答はやはり正常でした。この結果から、2種類のマクロファージは異なる機能を有する別タイプの細胞であり、M2型とひとくくりにできない可能性がでてきました。そこでさらに別の疾患に関わるマクロファージを探索しました」と佐藤氏は研究の発端を語ります。「次のターゲットを未だ有効な薬が存在しない線維症と定め、Jmjd3遺伝子とTrib1遺伝子が関与しないことを確認。その後マウスの肺をブレオマイシンで線維化させる過程で、線維化期に著しく増殖するLy6C-サブグループを詳細に解析しました。このグループを抗体でさらに3つに分け、それぞれの細胞を骨髄から単離して線維化への影響を調べたところ、Ly6C-サブグループの中の1つが病態を悪化させることが分かりました。しかも興味深いことに、この細胞は単球でありながら2核様の核型を有し、しかも細胞質には顆粒球のような顆粒が観察され、前例のない形態を示していました。私たちは、この細胞をSegregated nucleus Atypical Monocyte(SatM)と名付け、さらに解析を進めた結果、SatMは通常の単球とは異なる分化経路を辿り、NF-IL6によって分化制御を受けることが明らかになりました」と続けます。そして最後に「それぞれの病態ごとに存在する多種多様な疾患特異的マクロファージの新規同定、機能解析、制御方法の研究を通して病態の解明につなげていきたいと思っています。製薬企業とも共同研究を進め、低分子化合物や中和抗体でこの機能を制御できれば、副作用のない薬剤の開発につながるはず」と締めくくりました。この研究成果は、2017年1月発行のNature誌※に掲載されています。
佐藤氏は今回の解析で使用したInvitrogen™ Attune™ NxT Acoustic Focusing Cytometerを次のようにコメントします。「前駆細胞の解析など、現在の免疫学研究ではマイナーポピュレーションの細胞解析が欠かせません。必然的にサンプル容量が増え、貴重なサンプルなので一回の実験で多くの蛍光標識抗体を使う必要もあります。今回主に使用したAttune NxT Acoustic Focusing Cytometerは4色レーザーで最大14色まで検出でき、多色解析として十分な性能を有しています。また本体価格だけでなく、廃液量が少ないのでランニングコストも節約できます。そしてなんと言っても、アコースティックフォーカシング技術で1秒間に35,000個の細胞が解析できる点が優れています。100-1000 µL/minという高流速で解析しても精度が落ちず、実験時間を大幅に短縮できます。フィルトレーションをいくらか省いても液詰まりもなく、コンパクトなベンチトップ型なので場所もとらず、研究者に優しいシステムだと思います」。
※‘Identification of an atypical monocyte and committed progenitor involved in fibrosis’ Nature541,7635(2017) T. Satoh et al .
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当記事はサーモフィッシャーサイエンティフィックが発刊するライフサイエンス情報誌「NEXT」2017年3月号からの抜粋です。
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