柳原 格 氏 (地方独立行政法人大阪府立病院機構・大阪母子医療センター研究所・免疫部門部長)
デジタルPCRを導入したきっかけは何だったのでしょうか。「JSTの先端計測というプロジェクトの中で、ごく微量の核酸を定量するという課題(京都大学、保川清班長)があり、いくつかのグループと共同で、病原体由来の核酸をより高感度に定量する方法を開発しています。そのために、ある細菌毒素遺伝子の定量をモデル系として、合成RNAを使って発現量をモニターします。どこまで微量の核酸を定量できるのか、また特定の酵素を添加することで感度が向上することがわかってきました。要求される精度はターゲット核酸3分子、10分子といったスケールなので、従来のリアルタイムPCRでは限界を感じていました。そこでQuantStudio 3D デジタルPCRシステムを使って、定量系の評価を行うことに。リアルタイムPCRよりも高感度でしかも精度よく定量できる点を信頼しています。この例に限らず、標的が分かっている場合には非常に鋭敏に、また比較的安価に再現性高く定量できる点が良いですね」。
周産期医療の観点から流早産を重要視し、病原因子を同定してきた柳原氏。センター内で統計を取ると流早産胎盤の4割からマイコプラズマ科ウレアプラズマ属細菌が同定されたと報告しています。ウレアプラズマはその外膜リポタンパクが絨毛膜羊膜炎を惹起し胎児炎症反応症候群の原因となりますが、直径100~300 nmと小さいため鏡検では見逃してしまいます。この研究を主導してきた柳原氏は、ウレアプラズマの検出法を探る初期段階からリアルタイムPCRを用いてきました。「一般的に妊娠期間中はセミアログラフトである胎児に対応するため、ヒト細胞に侵入性のある細菌等に対して免疫応答が低下しています。ウレアプラズマは普段は強い病原性を持った細菌ではありませんが、妊娠中は子宮内に炎症を引き起こす場合があります。リアルタイムPCRでも検出可能ですが、定量系の開発にはデジタルPCRを併用して評価します」。
柳原氏はさらに、宿主の感染応答解析にもデジタルPCRを活用しています。「宿主側の反応を、マイクロRNA(miRNA)を切り口に解析しています。応答機序の解析から感染の制御へつなげたいからです。ヒト培養細胞にウレアプラズマを感染させてスクリーニングし、変動したmiRNAを中心に解析中です。細胞中のmiRNAはごく微量なので、この変動解析はQuantStudio 3D デジタルPCRシステムだからこそできると思います。ここまで高感度だとコンタミを心配しなければいけなくなりますね」と笑う柳原氏。「残存ウイルス核酸や腫瘍由来の核酸を検出するような幅広い研究にも有用かと思います。ターゲットが大量にあればほかの解析法でも十分ですが、微量核酸をこれだけ高感度に、しかも手軽に検出できるのでいろいろな実験に便利に使っています」。健やかな次世代を願い、柳原氏は研究を続けます。
コンパクトサイズで使いやすいデジタルPCRシステムです。20,000個のデータポイントで、0.1%程度のレアな変異を検出。
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