澤新一郎 氏 (北海道大学遺伝子病制御研究所感染病態分野 准教授)
※当記事は第46回日本免疫学会学術集会 テクニカルセミナー (2017年12月13日 開催)の発表内容です
リンパ節は、周辺組織から運び込まれた抗原をリンパ球に提示したり、効果的な免疫応答を誘導したり、記憶免疫を成立させたりするために重要な「免疫の場」となります。成熟したリンパ節はB細胞やT細胞が富む領域があり、その形成や維持には領域ごとに特殊な間葉系(ストローマ)細胞が関与しています。マウスにおけるリンパ節の形成は、胎生15日に体中を循環する血液系細胞の一種であるLymphoid Tissue inducer (LTi)細胞が、リンパ節の基になる領域(リンパ組織原基)においてLymphoid Tissue organizer (LTo)細胞と呼ばれるストローマ細胞と「出会う」ことで開始されます。またリンパ節の発生には、2類のケモカインであるRANKL*1とLTα1β2*2が必要となります。私たちはRANKLとその受容体であるRANKを細胞特異的に欠損するマウスの解析から、リンパ節の発生にはLTi細胞におけるRANKとLTo細胞におけるRANKLが必要であること、さらにLTi細胞にRANKLからの刺激が入ることでリンパ節形成のための最終分化へ進むことを突き止めました。
*1 RANKL: Receptor Activator of NF-B Ligand
*2 LTα1β2炎症性サイトカインの一つであるリンフォトキシン
RANKLはTNFリガンドファミリーに属する膜結合型サイトカインであり、LTi細胞とLTo細胞の両方に発現しています。またリンパ節のみならず、骨や胸腺の発生においても重要な働きを担っています。そこで多様な機能を有するRANKLのリンパ節形成における働きを受容体RANKとの関係から調べることにしました。まずRANKレポーターマウスを観察した結果、リンパ管にRANKが発現することを確認しました。そこでリンパ管特異的にRANKを欠損するマウスを作製したところ、部分的にリンパ節形成が阻害され、LTi細胞の生存維持に必要なケモカインや血管新生因子の量が減少することが分かりました。以上のことは、LTo細胞上のRANKLは、LTi細胞だけでなくリンパ管に発現するRNAKも働きかけ、LTi細胞が応答するケモカインや血管新生因子を分泌させることで、血液中のLTi細胞をリンパ節原基へ呼び寄せ、蓄積させることに関与することを示しています。
最後にリンパ節発生において重要な役割を担うRANKL陽性LTo細胞と、成熟したリンパ節に存在する領域特異的なストローマ細胞の関係性を調べました。最初に組織染色でDNAリコンビナーゼCreをRANKLプロモーターの下流で発現するRANKL-Creマウスのリンパ節を観察すると、多くのストローマ細胞でRANKLが発現した履歴を確認できました。さらに詳細に調べるために、4色の蛍光タンパク質遺伝子を組み込んだConfettiマウスを活用しました。このマウスをRANKL-Creマウスとかけ合せると1回の相同組換えで1種類の蛍光タンパク質だけがランダムに発現します。この発色の様子で目的遺伝子の発現履歴やその状況を推察できます。そこでConfettiマウスとCre-RANKLマウスをかけあわせ、リンパ節のストローマ細胞をフローサイトメーターで解析しました。この解析では、4色の蛍光タンパク質以外にも血球系やストローマ細胞のマーカー等合計9色を識別する必要があります。しかもストローマ細胞の割合は非常に小さいため、高流速で精度よく解析でき最大4レーザーで14色検出可能なAttune NxT Acoustic Focusing Cytometerが役立ちました。その結果、約0.1%のストローマ細胞を効率的に検出でき、その細胞群ではほぼ1色の蛍光タンパク質だけが発色していることがわかりました。このことはリンパ節の多くのストローマ細胞は、発生初期に一過性にRNAKLを発現した履歴を有し、その起源となる細胞の数が非常に少ないことを示しています。もちろん発現効率や組み替え効率の正確な評価の必要性や、いくつかの仮説は排除できません。それでもリンパ節発生に関わったRANKL陽性LTo細胞がリンパ節の領域特異性を担う特殊なストローマ細胞となるという可能性がでてきました。今後さらに検証を進め、小さなリンパ節のダイナミックな発生機序をさらに詳細に解明していく予定です。
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