八木祐介氏(エディットフォース株式会社研究開発部門部長)
PPRタンパク質は、35個のアミノ酸からなるhelix-loop-helix構造(PPRモチーフ)が十数回繰り返し、このモチーフの1つが特定のRNA1塩基に対応して結合します。2012年、九州大学農学研究院植物分子機能学准教授の中村崇裕氏(現在はエディットフォース社長を兼任)と当時ポスドクだった八木氏は、PPRモチーフ内の3カ所のアミノ酸が1つの塩基を認識する対応ルールを明らかにしました。「このルールを基に、標的となるRNA配列に結合するPPRタンパク質を作成し、そこに機能分子を付加しておけばゲノム編集の様にRNAを自在に操作できるはず」と八木氏は開発の方向性を語ります。
「PPRタンパク質とRNAの配列特異的な結合能の解析はゲルシフトアッセイで行っています。蛍光ラベルした合成RNAとPPRタンパク質の複合体をネイティブゲルで電気泳動後、iBright™ FL1000 Imaging Systemの蛍光チャンネルで測定します。以前はビオチンラベルしたRNAを使ってウェスタンブロッティング後に化学発光試薬で検出していましたが、iBright FLシステムだと泳動後のゲルを直接測定でき、測定を簡便化できました。またこのシステムでは複数の蛍光色を使えるので、異なるRNA配列への結合能を一度に評価できる場合もあります。感度も以前の方法と変わりなく、数nM程度の結合活性も検出できています」と八木氏は語ります。「システム自身の操作性も良く、タッチパネルで露光時間を簡単に調節できたり、Smart Exposure機能で最適な露光時間をバーチャルに確認できるのも便利です。またゲルの位置を自動回転式ステージで物理的に調整できるので、置き替えの手間も省けます」と話します。
植物ではミトコンドリアゲノムから転写されたRNAにPPRタンパク質が結合すると、RNAのシトシンが脱アミノ化されてウラシルに変わるRNA編集が観察されています。八木氏らが提案する「RNA操作」は、一塩基置換だけでなく、様々な機能分子との融合によりRNAを自在に編集することです。「これまでRNAの機能制御はRNAiやアンチセンスなどの核酸が使われ、機能抑制やFISH法などと用途が限られていました。PPRタンパク質なら、様々な機能分子と融合させることができます。例えばGFPを繋げてmRNAやノンコーディングRNAの細胞内の局在や機能解析など、これまでにないツールとして使えそうです。さらに標的RNAの切断やスプライシング制御、塩基置換、発現亢進など可能性が広がります。DNAを操作するゲノム編集が注目されていますが、RNA操作も可能になれば、基礎研究はもとより、医療や産業に役立つ画期的なツールとなると思っています」と八木氏は今後の展開を語ります。
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